9月3日:傍聴規則の改正が報告される
 9月3日の県議会議会運営委員会で、桜井富夫議長より県議会傍聴規則の改正が報告されました。桜井議長は、インターネットに不適切な写真が載ったことを契機に、セキュリティー強化のため議会傍聴規則の改正を行うとし、その具体的内容や他都道府県議会の対応状況などを事務局に説明させました。
茨城県議会傍聴規則の改正の概要

写真撮影等について
 写真撮影、録音は原則禁止ですが、報道関係者又は公益的見地から必要と認められる方であって、撮影等の目的が議会広報に資する場合には許可を受けて認められます。
写真機等の持込禁止について
 写真機、ビデオカメラ、録音機等は傍聴席に持ち込めません(撮影等の許可を受けた方は除かれます)。
身分証明書等の提示について
 傍聴を希望される方の住所、氏名を確認するため、必要に応じ、身分証明書等の提示を求める場合がありますのでご協力願います。

 井手県議は、この傍聴規則の改正に2つの問題があると主張しました。一つは、傍聴券を必要としない傍聴者を県政記者クラブに加盟するマスコミの記者に限ったことです。従来の規則では、「第4条 会議を傍聴しようとする者は、傍聴券の交付を受けなくてはならない。ただし、報道関係者であって、あらかじめ議長の承認を受けた者はこの限りでない」となっていました。改正傍聴規則では、現状全てが県政記者クラブ加盟各社の記者であるとして、「報道官関係者(県政記者クラブ加盟各社に限る。以下同じ。)」との括弧書きをあえて加えました。マスコミ内にも記者クラブ制度の是非に対して議論がある中で、この改正には疑問が残ります。
 もう一点が、「写真、ビデオ等の撮影及び録音等の禁止」の規定です。今までは、「第12条 傍聴人は、傍聴席において写真、ビデオ等を撮影し、又は録音等をしてはならない。ただし、議長の許可を得た場合は、この限りではない」となっていました。撮影の申請さえすれば、原則許可されてきたわけです。しかし、今回の改正では「第12条 傍聴人は、傍聴席において写真、ビデオ等を撮影し、又は録音等をしてはならない。ただし、報道関係者又は公益的見地から必要と認められる者であって、議長の許可を得た者については、この限りではない」と改正されました。カメラ、ビデオ、録音機の持ち込みに対して、議長が「公益性」判断をどのようにするのか、大変大きな問題が残りました。
9月4日:インターネット版朝日新聞に「ブログに逆切れ? 茨城県議会が傍聴の規制強化」との記事掲載
 この議会運営委員会での傍聴規則の改正が、翌日(9月4日)の朝日新聞と時事通信系のマスコミで報道されました。今回の傍聴規則改正の引き金は、茨城空港を題材に扱ったブログに、常任委員会での無届けで撮影された写真が掲載されたことでした。しかし、このブログには、県議会の本会議で居眠りをしている特定の議員の写真が大きく扱われていたことから、議会規則の改正はその写真掲載への対抗措置であるといった報道が広まりました。最初にこの問題を詳細に取り上げた朝日新聞茨城版の記事では、「議会傍聴、規制を強化 ブログで批判契機」との見出しを打って報道されました。この記事への反応は、全国的には余り大きくなかったようですが、朝日新聞のインターネット版(asahi.com)が、「ブログに逆切れ? 茨城県議会が傍聴の規制強化」との見出しを打ったことで、事態は急変しました。様々なブログで、このニュースは大きく扱われ、2チャンネルでは数日で1000件を超える書き込みがありました。
参考写真

参考写真

9月8日:身分証提示は例外的な措置、「まず未来永劫にない」と議長が発言
 ブログやインターネットでの報道や書き込みが加熱する中で、9月8日の議会運営委員会では、桜井議長が、「6月に開かれた県議会総務企画委員会で、委員長の撮影許可を受けないまま撮影された写真などがインターネットの個人ブログに掲載され、それをキッカケに安全面での規制強化を検討開始した」「今回の傍聴規則の改定は、公開の原則は堅持しなければならないが、セキュリティーとのバランスを考えた結果である」「通常は身分証の提示を求めることは、まず未来永劫にないであろう」などと語りました。桜井議長は、身分証の提示は、明らかに偽名での入場や挙動不審者への例外的な措置であることを強調したものです。
 この説明などを受け、8日から改正された新たな傍聴規則の下でも、身分証の提示を求められた事例は一度も起こっていません。
9月9日:テレビ番組で居眠りをする県議の姿が全国に放映
参考写真 また、このニュースはテレビでもとり上げられました。5日には大阪の毎日放送が生番組で取り上げました。8日は、在京のテレビ局3社(TBS、フジテレビ、テレビ朝日)が、県議会に取材に訪れました。翌日(9月9日)の朝のワイドショー番組では、TBSの「朝ズバッ!」とテレビ朝日の「スーパーモーニング」で大きく取り上げられました。「懲りずに居眠りを続ける県議たち」との見出しのテレビ画像は、茨城県議会の負の部分が全国に報道されました。県議の一人として恥ずかしい限りです。
9月16日:ブログ、インターネットでの情報発信の公益性を正式に認め、カメラ・ビデオ・録音機の持ち込みを許可
 こうしたマスコミ報道の過熱の中で、井手県議は「ブログやインターネットで、マスコミ以外の方が情報発信することも『公益性がある』と認めて、写真、ビデオ、録音機などの持ち込みを『ブログ、インターネットへの掲載』を許可するべきだ」と強く主張してきました。
 桜井議長も、8日には一部インターネットニュースへの取材に対して、ブログ、インターネットの公益性を認める発言を行っており、井手県議は12日の議会運営委員会で、改めて「ブログやインターネットで掲載することを目的にした撮影、録画、録音を認めるのか」と、規則の運用を確認しました。それに対して、議会事務局は「ブログやインターネットも、議会広報の一環として公益性がある」との桜井議長の見解(取意)をもとに、判断すると正式に回答しました。
 週明けの16日の常任委員会では、茨城空港に関するブログを掲載しているGさんが、県議会を訪れ委員会の傍聴。その際、「ブログのため」という理由を記した録音機の持ち込みを申請し、許可されました。実際に運用でも、茨城県議会では「ブログやインターネットでの情報発信にも公益性がある」ことが認められました。
 県議会では4年に一度、「県議会事例集」というものをまとめています。条例や規則などで規定されていなくても、議会の運営上重要なことを「具体的事例」としてとりまとめ、それ以降の議会運営に役立てる目的です。次の事例集の改訂は、来年(平成21年)3月であることから、井手県議は、身分証明書の提示やカメラ、ビデオ、録音機などの持ち込みも、明確に事例集に中で位置づけるよう申し入れを行いました。
 茨城県議会にとっては、一連の議論の中で、ブログ・インターネットの公益性が認められてことは、画期的なことであると総括しています。居眠り問題は議会での発言をより活発化することに、本質的な解決な方途があると思います。よりエキサイティングな議論が行われ、寝ていることがもったいない、といった議会環境を作ることが必要です。
 居眠り問題では大きな話題となった報道やインターネット上の議論ですが、規制それ自体の是非やブログ・インターネットの公益性の議論、議会の活性化などについては、あまり盛り上がらなかったことが残念です。私のブログ閲覧者も、居眠り問題では一日1000件以上のアクセスがありましたが、その後の議論には、10分の1のアクセスもありませんでした。