リーマン・ブラザース破綻の影響、日立の大型商業施設閉店へ
参考写真 営業不振が囁かれていた日立市神峰町の商業テナントビル「さくらシティ日立」が、閉店を余儀なくされました。
 9月26日付けで、さくらシティ日立の土地建物を実質的に所有・運営するニューシティー・コーポレーションの関連会社は、運営費の協力を得ていたリーマン・ブラザース・コマーシャル・モーゲージ(株)の自己破産申請により、資金の協力を得ることが出来なくなり、水道光熱費の支払いが出来なくなったことを各テナントのオーナーに内容証明郵便で通告してきました。
 これによると、「誠に遺憾ながら、それら(水道光熱費)の次回支払期限(9月末)経過後おそらく2週間程度のうちに、さくらシティ日立への電気・ガス・水道等の供給が止まり、同所における貴社(各テナント)の営業には多大な影響が出ることが必至です。そこで、転貸人は、貴社との賃貸借契約の早期解約(合意解約)に応ずることと致しますので、さくらシティー日立からの早期ご退去も含め、早急にご検討いただきたくお願い申し上げる次第です」とあり、10月中旬にも店舗の営業が出来なくなることを伝えています。 内容証明が到着したのが27日(土曜日)であったために、週末は主だった動きはありませんでしたが、週明けには一部新聞報道も予測され、退店準備に入るテナントも出ると予想されます。
 サブプライムローン問題に端を発するアメリカの経済危機が、地域の商業施設に直接影響を与えたことに、驚きを禁じ得ません。
 突然に営業停止によって、テナントの従業員の身分や売上げ(預かり金)の返却問題が一挙に浮上しています。
 日立市役所やハローワーク、日立市商工会議所など公的機関の総力を挙げて、テナントのオーナー、従業員の支援体制に万全を尽くすよう、井手よしひろ県議は27日より各方面との調整を行っています。
リーマン・ブラザース・コマーシャル・モーゲージ株式会社
 リーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージ株式会社(旧ニュー・センチュリー・ファイナンス株式会社)は、リーマン・ブラザーズ・ホールディングズ・インクを中核の持ち株会社とするリーマン・ブラザーズグループによる100%出資会社で、不動産担保融資を専門とする金融会社です。2001年の設立以来、特に賃貸アパート・マンションや大型のオフィスビル等の商業不動産向けのノンリコースローン(責任財産限定型)など、不動産担保の中でも新しい形態のローン商品を積極的に取り扱っており、貸し付けたローン債権を定期的に証券化することでお客様に対して恒常的かつ安定的に融資商品を提供し続けることを企図しております。(以上リーマン・ブラザース・グループのホームページより)
 帝国データバンクによると、米リーマン・ブラザーズの経営破たんやリーマン・ブラザーズ証券などの民事再生法の適用申請を受け、同証券の系列会社であるサンライズファイナンス(東京都港区)とリーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージ(同)は、9月16日、東京地裁に民事再生法の適用を申請しました。
 コマーシャル・モーゲージ社の負債額は3844億5800万円(5月末)。同社は、不動産担保融資の専門業者で、アパート、マンションなどを対象に最長30年のノンリコースローンを提供するほか、オフィスビル、商業施設、ホテルなどの収益物件向けのローンを手がけていた。貸し付け債権は、証券化して機関投資家などに転売し、2007年11月期には年収入高約212億5600万円を計上していました。
 サブプライムローン問題に端を発した米国の金融不安が増幅するなかで、米国リーマン・ブラザーズが約1760億円の損失を出すなど経営悪化が顕著となり、グループ会社も動向が注目されていたが、9月15日に米国本社が連邦破産法11条の適用申請を発表し、16日には日本法人であるリーマン・ブラザーズ証券など2社が民事再生法の適用を申請したことで、自力での事業継続が困難となっていました。


さくらシティ日立 食品スーパー閉店
朝日新聞(2008/10/3)
 米証券大手リーマン・ブラザーズの破綻で、資金繰りに窮した貸主がテナントに退去を勧告した日立市神峰町1丁目の複合商業施設「さくらシティ日立」で地下に入居している食品スーパー・カスミさくらシティ日立店が2日午後6時で営業を休止し、事実上閉店した。
 同店はさくらシティがオープンした06年11月以来、営業してきたが、「ビル所有者の事情から、2日夕の営業休止を1日に決めた」(カスミ本社)という。2日午後には冷凍食品コーナーからすべての商品が運び出され、普段と違う売り場に戸惑いながら買い物をする人の姿が目立った。
 さくらシティは日立市中心部にあり、徒歩で買い物に訪れる年配の客が多い。近くに住む70代の女性は「週に2、3回は利用する。ここが閉店したら、どこへ買い物に行けばいいのか」と話していた。
 営業中のテナントも大半は今週いっぱいで営業を終了する。貸主側からのテナントへの説明は6日に予定されている。日立市や日立商工会議所ではアルバイトやパートを含め、400人近いという雇用への悪影響を懸念している。


「さくらシティ日立」閉鎖へ
常陽新聞(2008/9/30)
リーマン破綻が影響
 日立市神峰町の複合商業施設「さくらシティ日立」が閉鎖の危機に直面していることが29日分かった。客足が伸びない中で、破綻した米証券リーマン・ブラザーズ・グループから施設運営費の協力を得ていたことが大きく影響した。テナントへの説明会が10月6日に予定されており、15日前後にも全面閉鎖する可能性が出てきた。地元では閉鎖を心配する声や百貨店として再生の要望も出てきている。
 さくらシティ日立は2006年11月、同所にあった百貨店「ボンベルタ伊勢甚日立店」跡に、感度の高い都市型ライフスタイルを求めるニューファミリー層を中心ターゲットに、洗練された生活提案型の新しいタイプの商業施設を目指してオープンした。北関東では初めて、吉本興業の若手お笑い芸人のライブステージも開設された。
 地上5階・地下1階の建物に食料品、ファッション、雑貨、飲食店など約60店のテナントでスタートしたが、2年の間に撤退するテナントが相次ぎ、現在は約30店となっている。開店当初は年間約110〜120億円の売り上げを目指していた。
 転貸人の「ニューシティ・エムエル・スリー有限会社」(東京都港区)の代理人から各テナントに送られてきた9月26日付の文書では、転貸人が貸付人「リーマン・ブラザーズ・コマーシャル・モーゲージ」からの協力が得られなくなったとし、電気・ガス・水道などの光熱費の支払いができなくなると通知している。
 さらに賃貸借契約の早期解約に応じるとし、早期退去の検討を求めている。転貸人と実質的な所有者「ニューシティ・リアルエステイト・トレンディング12有限会社」が清算手続きに入る予定でいるとし、敷金の返還や退去費用の負担も困難な状況とも記している。
 同日の店内では、通常通りの営業を行っている店舗がある一方で、閉店のために慌しく段ボールなどに商品を片付ける店舗もあった。買物に来た主婦(61)は「以前(伊勢甚)は贈答品などでも利用していた。日立の顔だったのに本当に閉店するなら寂しい」、別の主婦(75)は「バスで買物に来るのは郊外型ではなく中心街の店。もっと高齢者が買える品揃えをしてほしかった」と残念そうに話していた。
 日立商工会議所の山本忠安会頭は「会議所としても応援策を検討していたので(閉鎖が)事実なら残念。百貨店などとしての営業環境は良い場所だと思っている。有効に活用されることを望むし、会議所としても対応を考えていきたい」と話していた。
 さくらシティ日立は旧伊勢甚日立店が05年5月に閉店し、ニューシティコーポレーション(本社・東京都港区)が06年2月に取得。建物をそのまま利用し、外装工事や空調設備工事などを行った。オープン時に店舗が埋まらなかったことやテナント間の運営統一が図られていないことなどを心配する声もあったという。


リーマンが運営費協力「さくらシティ」 テナント撤退の動き
読売新聞(2008/9/29)
電気など止まる可能性<日立>
 米証券大手リーマン・ブラザーズ社の経営破綻(はたん)が県内にも波及、リーマングループから施設運営費の協力を得ていた日立市神峰町の複合商業施設「さくらシティ日立」への電気、ガス、水道などの供給が、10月半ばにも止まる可能性があり、テナントには撤退の動きが出始めている。
 さくらシティ日立は2006年11月にオープン。スーパーや服飾、雑貨、飲食、娯楽関係の約30社が店を出している。施設所有社は「ニューシティ・リアルエステイト・トレーディング12有限会社」(東京・港区)で、「ニューシティ・エムエル・スリー有限会社」(同)が転貸人。
 転貸人の代理人の弁護士が、テナント各社に施設の状況を知らせた9月26日付の文書で、水道・光熱費の支払いができなくなることを説明し、「賃貸借契約の早期解除に応じるので、早期退去も含めた検討」をお願いした。
 文書では、ニューシティの2社も、今後、清算手続きに入る予定とし、テナントへの「敷金の返済は困難で、退去に必要な経費も負担できない」と通知。契約関係を含め、施設の今後については別途、説明の機会を検討している。施設の管理運営を委託している会社にも、9月末での契約終了を通知した。
 27日に知ったというファッション関係のテナントでは、「30日に退去する。2週間で電気などが止まると言われたが、どうなるか分からない。こうなる前触れもなかった。従業員は失業かも」と、ブランド品を慌ただしく片づけた。「29日閉店」を張り出したテナントでも「前日知らせを受けたばかりで、詳しい事情は分からない」としながら、段ボールを店の中に積み上げていた。
 施設内のクリーニング店「日立白洋舎」(日立市)は、「預かったものを、お客さんに返すまでが仕事なので、2週間というのは本当に短い。お客さんに迷惑をかけないことを最優先に考えていく」と、突然の知らせに戸惑いを隠さない。
 また、オープン時に入居した飲食店経営者は、「内装などに1000万円以上をかけ、毎月、賃料と光熱費を合わせて約70万円を払ってきた。賃料は高いのに入館者数すら教えてくれず、この店も9月いっぱいで退去を考えていた」と冷静に受け止める反面、運営に対する不満をあらわにした。
 「さくらシティ日立」は、JR日立駅前の通り沿いにあり、05年5月まで、県北唯一のデパートの旧ボンベルタ伊勢甚日立店が38年間に渡って営業していた。同店の撤退後に、市民らが百貨店誘致を望む署名活動などを展開。約60店のテナントの計画だったが、撤退が相次ぎ、現在は約半分のテナント数となっている。