申し上げます。日本は、強くあらねばなりません。強い日本とは、難局に臨んで動じず、むしろこれを好機として、一層の飛躍を成し遂げる国であります。
日本は、明るくなければなりません。幕末、我が国を訪れた外国人という外国人が、驚嘆とともに書きつけた記録の数々を通じて、わたしども日本人とは、決して豊かでないにもかかわらず、実によく笑い、微笑(ほほえ)む国民だったことを知っています。この性質は、今に脈々受け継がれているはずであります。蘇らせなくてはなりません。
日本国と日本国民の行く末に、平和と安全を。人々の暮らしに、落ち着きと希望を。そして子どもたちの未来に、夢を。わたしは、これらをもたらし、盤石のものとすることに本務があると深く肝に銘じ、内閣総理大臣の職務に、一身をなげうって邁進する所存であります。
わたしは、悲観しません。わたしは、日本と日本人の底力に、一点の疑問も抱いたことがありません。時代は、内外の政治と経済において、その変化に奔流の勢いを呈するが如くであります。しかし、わたしは、変化を乗り切って大きく脱皮する日本人の力を、どこまでも信じて疑いません。そしてわたしは、決して逃げません。
わたしは、自由民主党と公明党の連立政権の基盤に立ち、責任と実行力ある政治を行うことを、国民の皆様にお誓いします。
型破り所信表明演説でした。麻生首相は演説で、「申し上げます。日本は、強くあらねばなりません」と切り出し、「日本は、明るくなければなりません」と続けました。自らに信条である「明るさ」「楽観主義」を前面に打ち出し、最優先の課題と総選挙を強く意識した「小沢民主党への宣戦布告」とも言える言葉を連発しました。
演説で麻生首相は、「喫緊の課題についてのみ主張を述べる。その上で民主党との議論に臨む」と強調しました。そして、(1)国会での合意形成のルールを作る用意はあるか、(2)20年度補正予算案に反対なら、財源を明示して独自の案を示せ、(3)消費者庁創設のための話し合いに応じるか、(4)日米同盟と国連のどちらを優先するか、(5)海上自衛隊によるインド洋での補給支援活動から撤退してもいいのか、との5項目の質問を民主党に投げかけました。
この演説には様々な評価があるでしょうが、従来の総花的な演説より、今なすべき国会の議論の方向性を明示した内容で、個人的には高く評価できると思います。
民主党は代表質問で、これらの首相の問いかけを無視するのか、それに答えた上で一段深い論戦を挑むのか、非常に興味深い展開となってきました。
解散時期が色々と論議されていますが、補正予算を成立させ、米国の金融不安、汚染米問題、中山大臣の放言問題など、国民の理解を得た上で解散総選挙に臨むべきだと主張いたします。