農家にお金をばらまくだけで、農業の将来像が全く見えない
参考写真 井手よしひろ県議は、日立市内で開催された県政報告会で民主党の農業政策に触れ、その展望無き場当たり的な「戸別所得補償」制度を厳しく批判しました。
 民主党は、農業政策の柱として、すべての販売農家を対象に販売価格が生産費を下回った場合、差額を税金で穴埋めする「戸別所得補償制度」を提唱しています。民主党はこの制度を一度法案化し、国会に提出しています。しかし、制度の骨格について何一つ具体的に説明できず、すでに廃案となっています。
 中でも大きな問題になったのは、単に農家にお金をばらまくというだけで、日本農業の将来像がまったく見えない、ということです。農家の高齢化や後継者難が深刻化し、耕し手のいない耕作放棄地は約39万ヘクタールに達しています。高齢化・人口減少による農村集落の衰退も始まっています。
 こうした中で、農地をどのように保全・集積し、担い手をどのように確保・育成していくのか。民主党の農業政策は根本的な問題に何も答えていません。現状を固定化してしまうだけです。
 エコ農業を行う、後継者を育成する、農地を集約化・拡大化するなどといった農業の構造的な課題に、何らかのインセンティブとなるような政策が絶対に必要です。民主党の政策は、むしろ日本農業にとって大きなマイナスとなってしまいます。
国が主要農作物の生産を統制!? 農家の意欲、主体性が奪われる
 昨年(2007年)の参院選で配られた民主党の農業チラシには「戸別所得補償」の導入と合わせて、米の生産調整の廃止が明記されていました。生産調整を廃止すると、当然米の生産は拡大し、それに反比例して米価が暴落します。すると、販売価格と生産費とのギャップが大きくなり、生産量も増えれば、穴埋めのための所得補償財源が際限なく増大する恐れがあります。
 こうした所得補償と生産調整廃止のこの矛盾を指摘されると、民主党は主要農作物の種類ごとに「生産数量の目標を設定する」と方向転換しました。最終的に国が決める生産目標に従った販売農家を対象に交付金を出すと言い出しました。
 しかし、米・麦・大豆、牛肉、乳製品など多岐にわたる農産物の生産数量を、はたして国がコントロールすることはできるのでしょうか?
 仮にこうした農業統制が実現すると、農家は作りたいものを自由に作ることができなくなり、地域農業の主体性が大きく損なわれてしまいます。民主党の農業政策は、国家による農業統制に通じます。
「1兆円」の財源、その積算根拠も不明。 農業土木費を大幅に削るのか
 民主党は、戸別所得補償に必要な財源を「約1兆円」としていますが、その積算根拠をいまだに説明できません。そもそも、農産物の販売価格が大きく下落すると財源も膨らむ仕組みのため、「果たして1兆円で済むのか」という疑念がぬぐえません。
 仮に予算を1兆円としても、そのお金をどこから持ってくるのか、財源があいまいです。昨年(2007年)1月、衆院本会議の代表質問で同党の小沢一郎代表は、財源について「個別農産物補助金4000億円、農業土木費7000億円などを見直す」と述べましたが、農業土木費を大幅に削減すると、農業に不可欠な用水路などの維持管理が難しくなります。また、深刻な問題となっている耕作放棄地の再生事業などはどのように捻出するのでしょうか?
 さらに今臨時国会の代表質問で小沢代表は、国の総予算212兆円の全面的な組み換えなどによって捻出すると述べ、ますます財源が抽象的で不明瞭になりました。
(写真は、県政報告会で民主党の農業政策の問題点を指摘する井手よしひろ県議)