海上自衛隊(海自)によるインド洋での給油・給水活動を継続する補給支援特別措置法改正案と、民主党の対案が議題となった衆院テロ防止・イラク支援特別委員会の審議を通じて、民主党案のいい加減さと、民主党内での外交安全保障政策に関する見解の不一致が露呈しました。
実現不可能な対案提出
 民主党案は、アフガニスタン本土での人道復興支援活動が柱。しかし、活動が行われるのは、アフガン政府と武装集団の間に「抗争停止合意」が成立した地域に限定しています。
 公明党の石井啓一氏は合意の実現可能性について、「民主党案の有効期間である1年以内に合意が生まれる可能性はあるのか」と質問したが、民主党から明確な答えはなく、石井氏は「明確な見通しのない政策は実行性は薄く、説得力もない」と厳しく指摘。公明党の佐藤茂樹氏も「現実的ではなく、実施不可能な法案」と断じました。
 その上、民主党の法案提出者が「抗争停止合意にあたる地域は今ない」と自ら実現可能性がないことを認めるお粗末さで、対案が否決されて「同党内には、むしろ安堵の声すら漂った」(「毎日新聞」10月22日付)と酷評されました。
憲法解釈で党内不一致
 小沢代表は、雑誌「世界」(2007年11月号)に載せた論文などで、インド洋での補給活動が「憲法違反」との見解を度々示している。ところが、民主党は、補給支援特措法の前身であり、補給活動の根拠法であったテロ対策特措法(旧法)に基づき、自衛隊を派遣する国会承認に賛成した経緯があります。
 いつから民主党は補給活動に対して違憲の見解を示すようになったのか。この点に関して佐藤氏が、「特措法(新法)は憲法違反と考えるのか」とただしたのに対し、民主党提出者は「旧法と同様の趣旨の枠組みであれば変わりない」と述べ、新法自体は憲法違反に当たらないとの認識を表明しました。小沢代表の論文についても「党として出したものではない」と説明し、憲法解釈に関する党内の不一致が浮き彫りになりました。
コロコロ変わる民主党の安保政策
 小沢代表は同論文で、アフガン本土で活動する国際治安支援部隊(ISAF)について、政権を取れば「参加を実現したい」と明記しています。これについて公明党の遠藤乙彦氏が、民主党内で一致した見解かを確認したところ、民主党の提出者は「NATO(北大西洋条約機構)に加盟していない日本が(ISAFでNATOの)指揮命令を受けることは問題がある」などと参加に否定的な考えを示しました。
 さらに、17日の委員会で民主党委員が、ソマリア沖の海賊対策のために海自の派遣を求めたことを踏まえ、自民党委員が20日の委員会で民主党に政策協議を打診。ところが、民主党の直嶋正行政調会長は「総選挙後、正統な政府ができた上で議論すべきだ」と一転してブレーキをかけました。
 発言者によってコロコロ見解が変わる民主党に対し、マスコミも「国の根幹である安保政策の党内論議が生煮えであることを示している」(「産経新聞」10月22日付)と酷評しています。