民主党は子ども1人当たり月額2万6000円の「子ども手当」を中学校卒業まで支給すると訴えています。しかし、他の政策と同様に財源はあいまいそのもの。その上、扶養控除廃止で対象児童生徒がいない家庭には、大幅増税に。公明新聞(2008/11/20付け)の記事をもとに、民主党の子ども手当を検証します。
扶養控除廃止というが、必要財源(5.6兆円)の1/3にも満たず
 子ども1人当たり月額2万6000円を中学卒業まで支給する民主党の子ども手当の費用は、同党が今年(2008年)4月、国会に提出した「子ども手当法案」によれば、全額国庫負担で年間「約5.6兆円の見込み」です。
 しかし、財源は全く明らかでなく、昨年(2007年)末に民主党がまとめた税制改革大綱の中の「2008年度税制改正への対応」に、わずか「所得税の『配偶者控除(配偶者特別控除の残存部分を含む)』『扶養控除(一般)』から『子ども手当』へ転換」とあるだけです。
 捻出できる財源は、配偶者控除の廃止で0.7兆円程度、配偶者特別控除の廃止で200億円程度、扶養控除(一般)の廃止で0.9兆円程度(2008年度予算ベース)で、合計しても1.62兆円程度にすぎません。残る4兆円程度の財源は何の説明もないのです。
 財源不足は民主党が主張するように、一般・特別会計の年間純支出212兆円を組み替えて捻出する20.5兆円の中から充当するつもりかもしれないが、その主張自体に現実性がない。年間純支出の「8割以上は国債償還、社会保障給付などで、削減は困難だ」(読売「社説」 2008年10月2日付)などと、マスコミ各紙が20.5兆円捻出の可能性に疑問を投げ掛けていいます。
 どう予算を組み替えるのか。つまり、どの予算を削り、何を増税するのか。すべて国民生活に直結する話だ。その明細が示されない限り、民主党の子ども手当はまさに“絵に描いたもち”にすぎません。
 さて、実際に民主党の子ども手当が実施されるとどうなるか。中学生までの対象児童のいない世帯は大増税となります。「控除の廃止で、子どものいない世帯の多くは増税になってしまう」(読売「社説」 2007年12月27日付)、「手当の財源には配偶者控除や扶養控除の廃止分を充てるため、子どものいない家庭は大幅増税になる可能性もある」(週刊朝日 2008年10月24日号)などと指摘されている通りです。
 ましてや、仮に、財源に特定扶養控除(16歳以上23歳未満が対象)や老人扶養控除(70歳以上が対象)の廃止が充てられれば、教育費に苦しむ高校生、大学生などがいる家庭や高齢者世帯の生活には大きな打撃となります。
児童手当拡充に反対続けた民主、「子ども手当」語る資格なし
参考写真 そもそも民主党に、子ども手当の創設を語る資格などない。なぜなら<右表>の通り、2000年6月から4回にわたる児童手当の拡充に「バラマキ」などとの批判を浴びせ、共産党でさえ賛成に回ったにもかかわらず、反対し続けた唯一の政党だからです。例えば、2004年6月の参院本会議では、支給対象を小学校3年生までに引き上げる児童手当法一部改正案に対し、「単なるバラマキにすぎない」と反対しています。
 これに対して公明党は、児童手当を子育て支援の柱の一つに位置付け、一貫して充実に取り組んできました。
 2008年度の児童手当の給付総額は1兆284億円(予算ベース)と、初めて1兆円の大台に乗りました。公明党が連立政権に参加する前の1998年度の給付総額1484億円に比べて約7倍、金額にして8800億円が子育て家庭への経済支援として上積みされた。事実の上で子育て家庭を応援しているのは公明党です。
お粗末な民主党の政策
 民主党は2003年衆院選時のマニフェストでは、児童手当に関する記述がなく、政策として重視していなかったことが分かる。子ども手当の記述は2004年参院選時のマニフェストから。「配偶者控除・配偶者特別控除を廃止し、税の増収分で子ども手当(児童手当)を充実します」と記しいました。
 マニフェストに支給月額が明示されたのは、2005年衆院選時。中学卒業まで、1人当たり月額1万6000円の子ども手当を支給し、その財源として、配偶者控除・配偶者特別控除・扶養控除(老親控除以外)の廃止を挙げました。
 しかし、お粗末なのは、これを実行すると、子育て家庭は家計がより苦しくなるということ。妻が配偶者控除の対象者で、子どもが小学1年生1人の3人家庭をモデルに試算すると、子ども手当の年額が19万2000円。各種控除の廃止による増税が年額14万2000円で、差し引き5万円。一方、当時から児童手当制度は、第1子は月額5000円で年額6万円。つまり、民主党案だと1万円も損をすることが明らかでした。
 そのためか、2007年参院選時のマニフェストから急に、支給月額を2万6000円へとハネ上げました。しかし、財源が遠く及ばず、所詮、“空手形”にすぎません。
 なお、民主党が廃止するといっている配偶者控除・扶養控除は、所得税で38万円、住民税で33万円。特定扶養控除(16歳〜22歳)は、所得税で63万円、住民税で45万円もあります。これらを全部廃止した場合、年収別にみると増税額は、下記のような試算となります。
給与
年収
現 在民主案
(配偶者・扶養控除廃止)
増税額
単位円
所得税住民税合計所得税住民税合計
500万円47,000121,000168,000160,500264,500425,000257,000
600万円87,000211,000298,000248,500344,500593,000295,000
700万円160,500305,500466,000416,500428,500845,000379,000
800万円268,500395,500664,000596,500518,5001,115,000451,000
夫婦子供2人 配偶者は控除対象(給与年収103万円以内)子どもは特定扶養(16歳〜22歳)の標準世帯で健康保険控除等他の控除50万円にて試算
 当然、子どもがない家庭は、民主党案では「配偶者控除」廃止の直撃を受けます。年収500万円の家庭では、年間7万1000円の増税となります。
給与
年収
所得・住民
税合計
民主案
税合計
増税額
300万円108,000162,50054,500
400万円219,000273,50054,500
500万円354,000425,00071,000
600万円514,000593,00079,000
700万円736,000845,000109,000
800万円1,006,0001,115,000109,000