小沢民主党 安全保障を政局の具にするな
読売新聞社説(2008/11/19)
 「テロとの戦い」の継続や国際金融危機への対処は、今の日本の最優先課題だ。これを政局の具にしようとするのか。
 民主党の小沢代表が、突如、麻生首相との党首会談を経て、与党との全面対決路線に転じた。参院で重要法案の採決を徹底的に拒否するという「政局至上主義」の復活だ。これでは、政治の責任は果たせまい。
 小沢代表は17日の党首会談で、第2次補正予算案の今国会提出を迫った。首相が応じないとみるや、給油活動継続のための新テロ対策特別措置法改正案について、18日に委員会採決するという与野党合意を一方的に反古(ほご)にした。
 金融機関に公的資金を予防的に注入するための金融機能強化法改正案の採決も拒否する方針だ。
 しかし、外交・安全保障にかかわる法案や、一刻も早い対応が迫られる金融機能強化は、補正予算案とは別の問題である。当然、切り離して処理するのが筋だ。
 民主党は当初、衆院の早期解散を目指し、新テロ特措法改正案の迅速な審議を主張した。ところが、解散が先送りされると、一転して慎重審議を求めたが、それでも、「いたずらに審議の引き延ばしはしない」と明言していた。
 さらに、今度は、採決日程を覆したうえ、徹底して審議を引き延ばすのでは、あまりに場当たり的ではないか。こうした政局一辺倒の小沢代表の手法は、与党だけでなく、共産、社民の両野党までが批判している。

 小沢民主党の「政局第一」の姿勢は、まさに頑迷な「体質」とでも言うしかない。民主党は、18日に参院外交防衛委員会で予定されていた補給支援特別措置法改正案の採決を一方的に拒否する暴挙に出ました。
 インド洋上で給油活動を継続するための法案はテロとの戦いに欠かせません。参院外交防衛委員会は13日の理事懇談会で、採決を18日に行うことで与野党が合意していました。そもそもこの委員会の委員長は民主党。その合意が、17日夜の突然の自民・民主の党首会談で、民主党が「採決を人質に取る形で、二次補正の提出を迫る」(18日付「日経」)という“政局優先”に豹変。一党首の意向が参院の決定を覆すという異常事態を招きました。
 補給支援法案の採決は、政府が準備中の第2次補正予算案に絡めるような話ではありません。同じ野党の社民党から「採決OKと言いながら、補正予算案を出さないなら審議拒否というのは理解できない」と批判されても仕方ありません。
 突然の党の方針転換に、18日の参院外防委では、委員長(民主党)が採決しない理由について「諸般の事情で議が調わなかった」と弁解する羽目に追い込まれました。結局、この日参院では、金融機能強化法案を審議する財政金融委など6委員会で審議に応じませんでした。
 その一方で、衆院では平然と本会議や委員会に出席。これは“参院での採決・審議拒否批判をかわす狙い”との見方がもっぱらだが、衆参でちぐはぐな対応は、民主党内からすら疑問の声が上がる始末です。
 これではマスコミから「テロ対策や金融危機を政争の具にしている」などと批判を浴びたのも当然です。政局第一で国民生活や国益を無視した国会対応を続ければ、国民からの批判が民主党に向かうのは間違いありません。