11月21日、全国議長会主催の「第8回都道府県議会議員研究交流大会」が東京都内の都市センターホテルで開催されました。
 基調報告では、「地方分権時代と議会の役割」と題して、慶応義塾大学法学部政治学科教授片山善博(元鳥取県知事)が講演しました。
 片山先生は、「地方分権を論ずるときには、その言葉を明確に規定しなくてはいけない」と語り、地方分権には2つの意味があると指摘しました。その第1は、地方のことは地方で決めるということで、自己決定と自己責任、それに自己負担という3つに視点があると強調しました。
 第2は、住民の判断によって地方が支えられているかという視点が重要でであるとしました。
 その上で、地方分権の進展の上で一番重要な機関は、地方議会であると断言。地方分権が進めば、地方議会が最終決定権を握るようになり、議会の資質が厳しく問われていると述べました。
基調講演:地方分権時代と議会の役割
片山善博氏(慶應義塾大学法学部政治学科教授)
1 地方分権とはどういう意味か
  地域のことは地域で決める一自己決定、自己責任、自己負担*
  自治体が国ではなく、住民またはその代表である議会によってコントロールされる
 ・議会の質や能力によって自治体経営に差が生じる
  *「自己負担」とは、全ての経費を住民が負担するという意味ではない。今後の税源移譲と地方交付税制度などの地方財政調整システムを前提にしつつ、追加的な財政需要については自治体が超過課税などにより独自にその財源を調達する仕組みをいう
2 地方議会は住民から信頼されているか
 三位一体改革の際の福祉関係者の反応
 地方分権全般に対する国民の評価は
3 地方議会はその役割を十分に果たしているか
(1)財政統制
 財政の持続可能性を保障−−過剰な借金が将来の財政運営を困難にしないか
 ・夕張市などの財政破綻と議会の役割
 本来税制の操作を前提にして歳入を増加させ、あるいは歳出を抑制
 ・例えば、道路特定財源問題と議会のチェック
 財政運営の原則は「量出制入」か、それとも「量入制出」か
 議会は税制を論じ、税条例を審議し、税の使途を点検しているか
 ・議会は、やむを得ざる税負担増に対し納税者の代表として渋々同意する
 ・日常は、少しでも税負担を減らすために歳出のムダを省く−税の使途を点検
(2)執行機関のチェック
 執行部提案に係る議案のチェック
 ・労使交渉の結果を条例化、予算化する際のチェック
 ・行政委員会委員の選任同意一教育委員の「品質管理」を適切に行っているか
 ・工事請負契約の締結の承認案件の点検など
 公聴会や参考人質疑の活用一執行部の「うらとり」を欠かさないように
(3)政策決定と立法機能
 地方分権改革に伴い、議会の立法の範囲は飛躍的に拡大一機関委任事務の廃止など
 議員立法の意義は、執行部が嫌がることでも住民のために敢えて条例化するところに
4 最終意思決定機関、住民の合意と納得を調達する場としての議会のあり方
 議会は「魚河岸」のようなもの一議場において合意が形成され、ものごとが決まる
 ・公開の場で出される多様な見解や選択肢から合理的で説得力のあるものを選び取る
 ・決められたことには、議員も大方の住民も納得する 議会は手続をスムースに終えるための「通過機関」や「手続機関」ではない
5 議会をめぐる最近のいくつかの話題
二元代表制と議会
 ・招集権の帰属をめぐる議論
 ・執行機関への対抗軸として調査能力を強化するには−−事務局、議会図書室の充実
 ・二元代表制には与党も野党もない−−真の「車の両輪」とは 議員の役割と口利き
 ・口利きの多くは「システム障害」をそのままにした個別解決−−「わりこみ」の罪
 ・議会の重要な使命は、システム改革にある−−個別案件をオープンに解決する
自治基本条例・議会基本条例の論点
 ・立憲主義−−権力に対する制約、住民の政治参画の拡大、マイノリティへの配慮など
 ・硬性型−−通常の条例と同じ条件で改正できるのであれば「基本条例」とは呼べない
 ・基本条例は一つでいい−−国に「国会用憲法」と「内閣用憲法」があるか
  目に余る「議会軽視」−−国の違法な関与や政策誘導による議会権能の軽視
 ・集中改革プラン、市町村合併促進策など  その他