ピンチを、チャンスに変えよう!
 新しい年が明けた。身の引き締まる厳しい新年の船出である。米国発の金融危機によって世界経済は失速し、日本経済も深刻な打撃を受けている。新しい年が、危機打開に向けて着実な一歩を印す年となるよう心から願わずにはいられない。
 「100年に一度」といわれる金融危機の暗雲は簡単には晴れそうにない││というのが、エコノミストやマスメディアのほぼ一致した予測である。悲観的な見方が支配的だが、私たちはいたずらに悲観主義に陥ってはなるまい。「悲観主義は気分に属し、楽観主義は意思に属する」との哲学者アランの言葉を引くまでもなく、悲観主義からは何も生まれないからだ。
 1933年、大恐慌のさなかに登場したルーズベルト米大統領は、ケインズの「一般理論」を採用したニューディール政策を展開し、危機を克服した。「われわれが一番恐れなくてはならないのは『恐れ』そのものである」「希望はある。アメリカは必ず立ち直る」とのメッセージを発信し続けたルーズベルトのリーダーシップが大きかったと言われている。
 昨年12月、麻生首相は記者会見し、急激な景気後退や雇用悪化に対応するため、総額23兆円規模の追加景気対策を発表した。景気回復を最優先した自民・公明の与党税制改正大綱も打ち出された。追加景気対策の裏付けとなる08年度第2次補正予算案と09年度予算案は1月5日召集の通常国会に提出されるが、両予算案の速やかな成立に向けて政府・与党の強いリーダーシップを期待したい。
 国民の将来不安をぬぐい去り一刻も早く希望と安心をもたらすことこそ政治に課せられた責務である。通常国会では冒頭から激しい与野党攻防が予想されるが、与党、野党という前に、国民の利益を守ることが最優先されるべきだ。政局がらみの権力闘争をしている時ではない。
 公明党が昨年9月に開催した第7回全国大会。太田昭宏代表は、強い危機感を持って国民生活と中小企業を守り抜く決意を表明する一方、未来を切り開く国家戦略、成長戦略をあらゆる面で進めていくと力説。ビジョンとして、第2の産業革命である低炭素社会づくり、安全な食料の安定的確保、自給率向上、農業立て直し、充実した社会保障制度の構築などを挙げた。
 闇が深ければ暁は近い。ピンチはチャンスと言うが、今、日本の政治に求められているのは、直近の危機克服にスピード感を持って取り組むとともに、日本の将来を見据えピンチをチャンスに変えていく「元気」ではないか。
 「日本経済の父」と言われた渋澤栄一は、語録「元気振興の急務」の中で「真に憂慮すべきは元気がないこと」「維新当時の人々が元気旺盛だったこと真に目を見張るものがあった」と喝破している。明治維新、戦後の出直しに次ぐ一大変革期の今日にあって、渋澤の言葉は重い。
 2009年の元朝の太陽は昇った! 今年は、北九州市議選など大型地方選挙を皮切りに衆院選、東京都議選が戦われる。太陽のごとき情熱を燃え上がらせ、常在戦場、臨戦態勢の決意で、すべての戦いに断じて勝利していかねばならない。心を一つにして「公明党ここにあり!」の戦いを展開し、日本の政治の新しい希望と元気をつくり出していこうではないか!
(公明新聞2009年1月1日付社説を転載しました)