閉鎖の商業施設を地元で購入へ
NHK茨城県のニュース(2009/1/15)
 アメリカの大手証券会社「リーマン・ブラザーズ」の経営破たんの影響で去年10月に閉鎖した日立市の商業施設「さくらシティ日立」について、地元の商工会議所に加盟する複数の企業が出資して土地や建物を譲り受ける方向で「リーマンブラザーズ」側と最終調整を進めていることがわかりました。日立市の「さくらシティ日立」は市内の中心部にあり、スーパーマーケットや雑貨店などおよそ60の店が入った商業施設でしたが、「リーマン・ブラザーズ」から融資を受けていた商業施設の運営会社の経営が破たんしたため、去年10月に閉鎖されました。
 この施設の引き受け先は決まっていませんでしたが、日立市の企業の間から地域の活性化に役立てたいという声が強まり、日立商工会議所が中心となって「リーマン・ブラザーズ」が所有する土地と建物の抵当権を譲り受ける方向で調整に乗り出していました。
 日立商工会議所によりますと、今月中に商工会議所に加盟する複数の企業が出資して新会社を設立し、「リーマン・ブラザーズ」側からおよそ5000万円で抵当権を譲り受ける方向で最終調整を進めているということです。
新会社は、抵当権を譲り受けた後、建物の所有権も取得する手続きを進め、地元のスーパーマーケットや市の出先機関などの誘致を進めたいとしています。
 日立商工会議所の山本忠安会頭は「日立の中心街の灯を消さないよう地元が力をあわせて残された建物を活用したい」と話しています。

 日立市の中心市街地に立地し、昨年10月に閉鎖された大規模商業施設「さくらシティ日立」の再生に向けて取り組みが具体化しています。
 NHKをはじめ地元メディアは、1月15日から一斉に、日立商工会議所の山本忠安会頭ら役員有志が計画しているさくらシティの受け皿会社設立のニュースを報じています。
 山本会頭らは、合同会社という仕組みで仮称「まちづくり日立」を設立し、さくらシティの建物と土地を所有しているニューシティ・リアルエステイト・トレーディング12有限会社(NCC12と略して記載します)と交渉。第1段階として三菱UFJ信託銀行が、土地建物に設定した根抵当権(5000万円)を買い取る計画を持っています。
 その後、「まちづくり日立」はNCC12との物件の譲渡価格などの交渉を行い、さくらシティの土地建物を取得したいとしています。
 さくらシティ日立の運営は、以下のようなスキームで行われていました。いわゆるリーマンショックにより、資金の大部分を貸し付けていた「リーマン・ブラザース・コマーシャル・モーゲージ株式会社」が破綻したために、さくらシティは運転資金も調達できなくなり閉鎖されることになりました。登記簿上の土地建物の所有者は、信託契約を結んだ「三菱UFJ信託銀行」でしたが、「リーマン・ブラザース・コマーシャル・モーゲージ株式会社」の倒産、NCC21並びに「ニューシティ・エムエル・スリー有限会社」の清算のためには、土地建物の売却を行わなくてはならないために、権利関係を整理する必要がありました。
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 昨年12月24日付で、「三菱UFJ信託銀行」はNCC12に土地建物の所有権を移転させ、この物件に根抵当権(極限額5000万円)を設定しました。また、同時に資金を提供していた「リーマン・ブラザース・コマーシャル・モーゲージ株式会社」は21億円の抵当権をこの物件に設定しました。(21億円の金銭消費貸借契約を締結)。この所有権の移動によって、さくらシティーの清算交渉の相手は、NCC21であることが明確になりました。
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 1月16日、井手よしひろ県議は、山本会頭と直接面会し、このようなスキムを確認した上で、具体的な課題について意見交換を行いました。山本会頭は、「まちづくり日立」は、一人につき50万円以上の出資を募り、1月中にも立ち上げたいと今後の計画を説明。土地建物の購入資金については、「日立市の看板ともいえる施設であり、このまま放置していくわけにはいかない。日立市も積極的に積極的に出資を検討すべきである」との考えを示しました。また、さくらシティの再建に当たっては、「地域住民に身近な商業施設を目指し、医療・福祉機能も合わせた複合施設などが検討の対象となるのではないか」と語りました。
 一方、井手県議は、旧テナントの契約解除が進んでいない問題を指摘。NCC12は旧テナントとの賃貸策契約の解除のために、土地建物の処分が決まった段階で敷金の返済を約束する条項を付けて交渉を続けています。しかし、未だに複数のテナントとは交渉がまとまっていない現状があり、これが「まちづくり日立」との売却交渉の隘路となる懸念があります。井手県議は、山本会頭に対して直接旧テナント側に状況を説明するなど、情報提供を行うことを要請しました。
 さくらシティの再開に向けての取り組みは、その端緒が開かれたと言っても、まだまだ大きな課題が山積しています。国や県をも巻き込んだ、地方都市の中心市街地活性化の取り組みとして、地域の企業と行政、そして市民がいったとなった取り組みが望まれます。