1月18日、台湾政府は景気低迷脱却に向け国民全てに日本円で約1万円分の商品券「消費券」の配布を開始しました。台湾籍住民や外国人配偶者を対象に1人当たり3,600元(500元券6枚と200元券3枚)を支給。交付期間は今月18日から4月末まで、使用期限は今年9月末までとなっています。
「消費券」は馬英九政権が掲げる景気刺激策の柱。日本と同様の“ばらまき”批判などがあるものの、今月下旬の春節(旧正月)を控え消費意欲が高まりやすい時期だっただけに、台湾国民には大いに好評と伝えられています。
台湾全土の百貨店や電化製品店、レストランなどは配布を商機ととらえ、消費券で買えば値引きをするといったセールスをスタートさせました。
また、この消費券を地元で消費してもらおうと、各地方自治体の間で抽選キャンペーン合戦が繰り広げられています。台北市では、市内で消費券300元を使用するごとに1回分の抽選の権利が発生、1万元分の商品券や台北市立動物園の優先入場券が当たります。一方、台中市では他県市に先駆けてキャンペーンを発表。目玉となる景品は、50坪の高級住宅。ほかマンダリンエアラインズの協力を得て、台中〜杭州(中国・浙江省)のチケットもプレゼントします。
台湾でも日本同様、「消費券」発行に対する与野党の攻防があったようです。当初、与党・国民党は約583億新台湾ドルを地方の公共事業に投資することを提案。しかし、野党・民進党は急激、かつ多額の公共事業への資金投入は公共事業における品質の悪化につながり、インフレを発生させる恐れがあると与党の政策を批判しました。これに対して、民進党はは税金を一定の額で国民に還付し、その還付金で国民に消費を促し、景気を刺激するという税金還付政策を提案しました。
その後、民進党の税金還付政策に対抗するかのように、国民党は商品またはサービスを交換することのできる「消費券」を国民に発行することで、台湾国内の消費を拡大し、景気を刺激するという政策を打ち出しました。民進党の税金還付政策のように現金を支給するのではなく、印刷等の手間を要する消費券の発行政策を提案した理由について、国民党は、国民に現金を与えた場合、国民はせれを貯蓄にまわす可能性があり、国民に現金を与えても景気を刺激する効果があるとは限らないためと説明しました。
こうした経緯を経て、全ての台湾国民、居留権のある中国大陸の者、及び居留権のある台湾国民の外国人配偶者に「消費券」を配布することになりました。
議論に紆余曲折はあったにせよ、国民に直接的な税の還付を行うという発想は、既に各国のスタンダードな政策となっている感じさせます。こうした政策を成功させるのは、やはり迅速な意思決定であり、タイムリーな政策実行です。旧正月前の消費が高まる時期に迅速に「消費券」を実行した台湾。その成果の検証が期待されます。