中低所得層に手厚い減税、恩恵受けられない層に給付
参考写真 世界各国で実施されている「給付つき税額控除」は、「減税」と「給付」を組み合わせて、生活を支援し経済的な自立を促す制度です。現在国会で審議されている2兆円に及ぶ「定額給付金」も、この「給付つき税額控除」を先取りしたものと位置付けられます。公明新聞の記事などより、その仕組みなどについて、まとめてみました。
各国で導入 日本も検討
 給付つき税額控除の歴史は古く、低所得者支援策として1975年に米ニクソン政権のもとで着手されたのが始まりです。
 その後、制度内容は国により異なりますが、同様の趣旨でカナダ、イギリス、ドイツ、フランス、オランダなどで実施。このうち、イギリスの場合は2003年から低所得者層への支援策として、税額から控除しない全額給付方式で実施しています。
 お隣の韓国でも、勤労者を対象にした所得支援策として今年から給付されます。同制度に詳しい、中央大学法科大学院の森信茂樹教授は「世界的な潮流になってきた」と指摘しています。
所得再分配 効果高める
 もともと税制や社会保障には、所得の多い人から少ない人に所得を再分配することで、所得格差を是正する働きがあります。
 給付つき税額控除は、税と社会保障を組み合わせることによって所得の再分配効果を高めようとするものです。
 具体的には税額から一定額を減税(税額控除)する一方で、減税の恩恵を受けられない低所得の方には社会保障の観点から給付を実施します。こうした仕組みを設けることで漏れなく所得支援を行うものです。制度として、中低所得層に恩恵が手厚くなるのが最大の特徴です【グラフ参照】。
民主党、社民党など野党も同様の税制主張
 減税の恩恵のない層も対象とすることや、納税の有無にかかわらず原則として同額を受け取れることから、今回、政府・与党が実施をめざしている「定額給付金」の趣旨は給付つき税額控除と変わりません。
 その意味で、税制抜本改革アクションプログラムで給付つき税額控除の導入を主張してきた民主党や、3兆円規模の定額減税を提案している社民党が、今回の定額給付金に反対しているのは、全く矛盾しています。
 給付つき税額控除は優れた政策ですが、わが国で実施するには世帯の所得を正確に把握する必要があり、併せて納税者背番号制度の導入を進めなければなりません。
 「100年に一度」の経済危機という非常事態に対し、迅速に対応するために打ち出されたのが定額給付金なのです。