音さたなく県やきもき 笠間の工業団地イオン商業施設計 画提出期限迫る
東京新聞(2009年1月15日)
 急速な景気後退の影響を受け、「イオン」(千葉市)による県内最大級商業施設の茨城中央工業団地笠間地区(笠間市)への進出が、遅れている。1月29日の事業計画提出期限まであと半月に迫るが、イオン側から音さたがないためだ。仮に進出が頓挫すれば、県側も損失を負うだけにイオンの動向にやきもきしている。
 県が事業主体となる同工業団地笠間地区の約18ヘクタール分について、県は2007年11月から12月にかけて、業種は限定せず、土地最低単価を1平方メートル当たり3万円に、そのほか必要経費を加算した額を条件に進出企業を公募した。
 複数の応募企業の中から、1平方メートル当たり4万5400円で購入し、店舗面積5万6650平方メートルの複合型商業施設を立地するとしたイオンを、県は昨年1月30日に進出予定事業者に決めた。
 県の公募要領では、進出予定事業者決定から原則一年の間に、詳細な事業計画の提出を受け、その後、譲渡契約を結ぶとともに、企業側の希望に応じた造成に着手することになっていたが、イオンからは依然として事業計画が出ていない。
 イオンから県には、夏場は原油高などによる資材高騰の影響、秋以降は金融危機による景気低迷のため事業計画策定が遅れていると説明があったという。
 万が一、イオンの進出が遅れたり、立ち消えになったとしても、違約金などは設定しておらず、おとがめはない。逆に県にとっては、進出業者の再募集をかけるなどして企業へ土地譲渡が遅れれば遅れるほど、用地取得に要した借入金の利子(年間約8600万円)が膨らむことになる。
 県事業推進課は「イオンには進出に向けて最大限努力してほしいと呼び掛けている」としている。

参考写真 昨年秋に発生した金融危機や小売業の低迷の中で、大型のショッピングセンター計画が茨城県内でも相次いで頓挫しています。
 1月15日に東京新聞が掲載した茨城中央工業団地へのイオングループ出店が、白紙に戻ることがほぼ明らかになりました。一部マスコミも1月22日付で報道する見込みです。
 昨年(平成20年)1月30日、イオングループは、茨城中央工業団地(笠間地区)の約18ヘクタール分について、1平方メートル当たり4万5400円で購入することを表明し、県は優先して交渉することが決定しました。
 この茨城中央工業団地は、いわゆるオーダーメード式工業団地であるため、イオンは事業計画を県に示し、県はそれに基づいて造成工事を行うことになっていました。したがって、優先交渉権を獲得しても、契約金などは発生しておらず、万が一解約された場合の違約金規定もないなど、12月議会でも問題視されていました。
 1月14日付で、イオン側より優先交渉権を辞退するとの正式な辞任書が、橋本知事に提出されました。イオンの岡田元也社長が直接、橋本知事に面会し、事態の理由並びに謝罪を行いました。その際、立地予定の18ヘクタールを1年間占有したことの使用料として約2億7000万円を支払うことが、示されました。
 一方、昨年12月には、ひたちなか地区(ひたちなか市新光町)にホテルを中心とする複合施設の建設する進めていたアセットパートナーズ水戸を代表とする企業グループ(アセットパートナーズ水戸、安藤建設・魯山コーポレーション・オリックス「310・3号ひたちなか特定目的会社」TMK)が、購入した土地20ヘクタール余りの契約(ひたちなか地区27番1区画土地譲渡契約)を解除しました。
 県には既に契約金として約12億1400万円(土地代の9割)が納付されていましたが、違約金約3億3700万円(土地代金の25%)と解約までの土地使用料相当額約3890万円を差し引き、約8億3800万円を、茨城県土地開発公社が返還しました。
 県は、この二つの物件について、全力を挙げての早期売却を進めていく方針です。

(2009/2/22更新)
 1月22日付の読売新聞(地方版)、茨城新聞(1面)、東京新聞(地方版)に、イオンの進出辞退のニュースが一斉に掲載されました。
イオン出店断念 笠間の工業団地
読売新聞(2009/1/22)
県に2億7000万円支払いへ
 大型商業施設を全国展開するイオン(本社・千葉市)が、昨年から計画を進めていた茨城中央工業団地笠間地区(笠間市)への進出を断念したことが21日、わかった。急速な景気悪化の影響などを受け、工業団地を所有する県に進出辞退を伝えた。県に対し、約2億7000万円を支払う意向を示しているが、土地譲渡契約の締結や経済効果などを期待していた県や地元の笠間市にとっては大きな痛手で、大幅な軌道修正を求められることになった。
 進出が計画されていた工業団地の土地は約18ヘクタール。県が2007年11月から12月にかけ、土地最低単価を3万円(1平方メートル当たり)に設定して進出企業を公募し、翌年1月、4万5400円(同)を提示したイオンが進出予定事業者に決まった。
 工業団地は常磐道友部サービスエリアのスマートインターチェンジ(IC)に隣接しているうえ、北関東道の茨城町西ICからも近く、立地の良さが高く評価されていた。計画では、「イオンモール水戸内原」(水戸市)を上回る店舗面積約5万7000平方メートルの広域型複合商業施設が建設される予定だった。
 県の公募要領によると、進出予定事業者は優先交渉権を得るだけで、1年後を期限とする詳細な事業計画の提出を経て、譲渡契約を結ぶことになっていた。
 事業計画の提出期限は今月29日に迫っていたが、建築資材の高騰や世界的な景気低迷の影響で、イオンは採算が取れる計画策定ができないと判断。岡田元也社長が14日県庁を訪れ、橋本知事に辞退することを伝えた。契約に違約金の支払い条項は盛り込まれていなかったが、イオン側は、昨年4月から今年1月まで土地を賃借していたという想定で金額をはじき出し、県側に提示したという。
 イオンの担当者は読売新聞の取材に「経済状況があまりにも大きく変化し、テナントの出店などが見込めなくなった。進出辞退は例がないが、使用料相当の金額を支払うことで、誠意を示させてもらった」と経緯を説明した。
 県事業推進課は「非常に残念だが、今の経済情勢では致し方ない部分もある」と話しているが、純粋な土地の売却額だけで約81億円が見込まれていただけに、県にとっては大きな損失だ。県は今後、公募段階で進出希望を示していた別の企業と再度交渉する方針だが、景気が悪化する中、土地の売買契約を新たに結ぶまでには、相当な時間がかかる見込みで、難しい交渉を迫られる。用地取得に要した借入金の利子も膨らみ、県の厳しい財政をさらに圧迫することになる。

イオンが進出辞退 笠間の県工業団地に計画 『迷惑料』2億7000万円
東京新聞(2009/1/22)
 「イオン」(千葉市)が県茨城中央工業団地笠間地区(笠間市)に予定していた県内最大級の商業施設の進出が、急速な景気後退の影響などで遅れていた問題で、イオンが県に約二億七千万円の「迷惑料」を支払い、進出を辞退したことが二十一日、分かった。県は同工業団地への進出に名乗りを上げていたもう一社の流通業者を軸に、新たな立地企業を探す。
 県は同工業団地約十八ヘクタール分について、二〇〇七年末に進出企業を公募、イオンを含む二社から応募があった。イオンは一平方メートル当たり四万五千四百円で購入し、店舗面積五万六千平方メートルの複合型商業施設を立地するとの条件を出し、昨年一月三十日に進出予定事業者に決定。今月二十九日まで、県との優先交渉権が与えられていた。
 だがその後も同社から事業計画が提出されず、今月十四日になってイオン側から知事に対し、「景気悪化でテナントが集まらない」などの理由で進出辞退書が出された。
 イオンと県の間に違約金の設定はなかったが、同社は一平方メートル当たりの購入単価に、県との本格交渉が始まった昨年四月一日から今月二十九日までの“占有日数”を乗じた二億七千二百二十五万円を支払うことを約束。また、同社から地元関係者に謝罪があったことなどを考慮し、県は二十一日、辞退を承諾した。
 県事業推進課は「進出を期待していたので残念」としている。