日立製作所日立総合病院:産科医1人が残留 分娩を継続へ/茨城
毎日新聞(2009/1/22)
◇ハイリスク対応は困難
 今春以降の常勤産科医の確保が不透明な状況となり、昨年夏から分娩(ぶんべん)予約を取りやめている日立市の日立製作所日立総合病院(日製病院)で、若手の常勤産科医1人が4月以降も残留することが決まった。医師派遣元の大学病院は常勤産科医4人全員を大学に戻す意向を示していた。病院側は「最悪の事態は避けられた」と、分娩を受け入れていく構えだが、1人ではハイリスク分娩への対応は難しく、広域医療に及ぼす影響は必至だ。
 07年の日製病院の分娩数1212件は県内最多。24時間体制で急を要する妊婦や新生児を受け入れる県北地域の地域周産期母子医療センターにも指定されている。06年に8人いた常勤の産科医は現在半減。派遣元の東京大病院の要請で、昨年夏に産科医全員が今年3月で大学に戻ることが決まると、4月以降の分娩予約の一時中止を決め、院内の掲示板やホームページで告知した。以降、病院は、県や市とともに、都内の私立医大などに医師派遣の要請を続けていた。
 病院によると、今回残留が決まったのは卒業後4年目の女性医師。昨年末に本人が残留の意向を示し、東大病院も了承したという。常勤医が確保できたことで、約25人の助産師を活用するため、県内では初めてとなる「院内助産所」開設の検討を進める。
 一方、周産期医療の「最後の砦(とりで)」であるセンター機能を維持することは容易ではなさそうだ。「正常分娩は何とか周辺地域で吸収できている。問題はハイリスクだ」。水戸済生会総合病院・総合周産期母子医療センターの山田直樹医師はこう指摘する。日製病院の年間の母体搬送は約50件(07年)。半数以上が県北以外の地域からの搬送だった。「県内全体のマンパワーがない。ハイリスクの受け皿が無くなると、(正常分娩を担う)1次医療機関も機能しなくなる」(石渡勇・県産婦人科医会顧問)との懸念もある。
 日製病院は、OBや民間の医療人材派遣会社など複数のルートを頼りに、引き続き医師確保に努めている。最終的な常勤医の人数が固まり次第、2月中にも来春以降の体制について公表する予定だ。

 昨年夏、突然の分娩予約中止発表で表面化した日立製作所日立総合病院(日製日立病院)の産婦人科医師の確保問題は、ここに来て産婦人科医師が一人もいなくなるという最悪の事態は回避できたものようです。
 日製日立病院によると、現在東京の大学病院から派遣されている4人の産婦人科医師の内1名が、4月以降も引き続き診療に当たることが決まりました。この医師を中心に、約25名在籍する助産師を活用し「病院内助産所」開設に向けて、準備を進める計画です。
 産婦人科それ自体を閉鎖する最悪の事態は回避できたものの、今後は、ハイリスク分娩への対応が課題となります。日製日立病院は、07年1212件もの分娩を扱い、県北の周産期医療の拠点病院です。地域周産期母子医療センターとして、新生児集中治療室(NICU)を完備しています。医師1名の体制では、この地域周産期母子医療センターの機能を維持することは出来ません。
 もし、センター機能が失われると、県北地域のハイリスク分娩妊婦を水戸まで搬送しなくてはなりません。日製日立病院への07年度の救急母体搬送件数は53件。このうち、約半数の25件が県北地域内からの搬送です。危険な状態の妊婦を水戸に運ぶとなれば、移動距離は最大80キロにも達します。
 産婦人科とNICUを維持してセンターの枠組みを残すには、最低でも2〜3人の常勤医を確保することが必要とされています。今後とも、日製日立病院だけではなく地域や行政が連携しての医師確保に全力を挙げなくてはなりません。