定額給付金などの財源に有効活用
参考写真 財政事情が厳しい中、政策実現のための財源として、特別会計の積立金(いわゆる“埋蔵金”)の有効活用が注目されています。国民に新たな負担を求めることなく財源を確保するための工夫と言えまが、毎年度充てられる安定的な財源にはならないなどの課題もあります。
 そもそも財投特別会計積立金とは、財政投融資の利益のうち将来の金利変動に備え、積み立てている資金です。
 国には21の特別会計(特会)があります。今回、政策経費の財源として特に注目されたのは「財政投融資特別会計」(財投特会)の積立金です。財投特会は公事業を行うため、財投債を発行して市場から資金を調達し、政府系金融機関などに融資する事業を手掛けています。
 融資による利息が財投債発行に伴う利払いより大きければ、その差額が利益となりますが、法律上、将来の利払いの金利変動に備え、利益のうち総資産の5%までは準備金として積み立てる必要があります。これを超えた分は国債償還に充てなることになっています。
 積立金残高は約10兆円(08年度末見通し)にも上り、これを有効活用するよう求める声は強くなっています。
 こうした資金が埋蔵金と言われるのは、これまで特会の実情が見えにくく、巨額の資金が隠されていたかのように見えたためです。
 特別会計の積立金が新たな政策経費の財源として浮上した背景には、厳しい財政事情があります。
 高齢化による社会保障費の増大や景気対策などで必要経費が増える一方、景気減速で税収は大幅に減少。不足分は赤字国債の発行で賄う必要があります。しかし、すでに国と地方を合わせた長期債務残高は先進国で最悪の水準となっています。次世代にツケを安易に回すことはできません。増税も経済状況が好転しないままでは、個人消費や企業活動を一段と萎縮させる恐れがあり容易にはできません。
 こうした中、今年度第2次補正予算案と来年度予算案には計8兆円を超える財投特会の資金活用が盛り込まれています。
 ただ、これは一回限りの財源で、毎年度充てられる安定的な財源ではありません。
 財投特別会計の積立金の具体的な使途は、定額給付金や中小企業の資金繰り支援を柱とする生活対策などに充当します。来年度予算案では、基礎年金の国庫負担割合の2分の1への引き上げ(約2兆3000億円)や、将来の経済金融情勢の変化に対応するための「経済緊急対応予備費」(約1兆円)、住宅ローン減税の国費分、地方交付税増額などの財源となります。
 しかし、これらの施策を円滑に実施するには、両予算案の年度内成立とともに、財投特会の積立金を政策経費に充てられるよう法整備を行わなくてはなりません。
 このため、政府は1月5日、今年度第2次補正予算の財源確保へ、財政投融資特別会計に関する特例法案を国会に提出しました。13日に衆院を通過しましたが、野党が多数を占める参院での審議は、26日に補正予算の採決は行うものの、関連法の審議は先伸ばしされることになりました。
 景気が厳しい今、景気対策を盛り込んだ両予算案の財源となる特例法の早期成立が急務です。
参考:財政投融資とは
 財投債の発行など国の信用等に基づき調達した資金を財源として、政策的な必要性がありながら、民間金融では困難な長期資金の供給や、大規模・超長期プロジェクトの実施を可能とするための投融資活動です。すなわち、財政投融資は、財政政策を有償資金の活用により実施する手段です。
(写真は財政投融資資金で建設された福島国家石油ガス備蓄基地(長崎県松浦市))