安全・安心の子どものインターネット利用へ
参考写真 インターネット上の有害情報から青少年を守るため、携帯電話などにフィルタリングの適用を義務付ける「青少年が安全に安心してインターネットを利用できる環境の整備等に関する法律」(青少年インターネット環境整備法)が4月1日から施行されます。
携帯電話・PHS契約時に、フィルタリングを適用
 文部科学省が1月25日に発表した、子どもの携帯電話利用に関する調査結果(全国の小6、中2、高2の計約1万7000人と、その保護者を対象に調査)によると、高2の4割近くが一日1時間以上(11.5%は3時間以上)、携帯電話でインターネットに接続しています【右グラフ参照】。
参考写真 こうしたなか、子どもたちが有害サイトを通じて犯罪や被害に巻き込まれる危険も増えています。
 青少年インターネット環境整備法は、子どもたちが安全に安心してインターネットを利用できるよう、(1)青少年にインターネットを適切に活用する能力を習得させる(2)フィルタリングの普及促進などにより、青少年の有害情報の閲覧機会を最小化する(3)民間の関係者の自主的・主体的な取り組みを尊重する――ことを基本理念とし、国や自治体、関係事業者、保護者などの取り組みを定めた法律です。
 このなかで、インターネット接続サービスを提供する携帯電話・PHS事業者に対しては、利用者が18歳未満の青少年である場合、保護者からの解除の申し出がない限り、フィルタリングの適用を義務付けています。保護者に対しても、18歳未満の子どもが利用する携帯電話やPHSを購入する場合、その旨を契約時に申し出る義務があるとしています。
 環境整備法ではこのほか、インターネット接続業者に対し、利用者からの求めに応じてフィルタリングソフト・サービスを提供する義務、パソコンなどインターネットに接続する機器(携帯、PHSを除く)の製造者に対し、フィルタリングソフト・サービスの利用を容易にする措置を講じる義務をそれぞれ課しています。
 ただし、これらの義務には、いずれも罰則は設けられていません。
 規制対象となる「青少年有害情報」については、「インターネットを利用して公衆の閲覧に供されている情報であって青少年の健全な成長を著しく阻害するもの」と定義。その例として「犯罪もしくは刑罰法令に触れる行為を直接的かつ明示的に請け負い、仲介し、もしくは誘引し、または自殺を直接的かつ明示的に誘引する情報」「人の性行為または性器などのわいせつな描写その他の著しく性欲を興奮させまたは刺激する情報」「殺人、処刑、虐待などの場面の陰惨な描写その他の著しく残虐な内容の情報」の三つを挙げています。
 また、フィルタリングソフト・サービスに関する調査研究、普及・啓発を行う機関や、ソフト開発事業者などは「フィルタリング推進機関」として総務相と経済産業相の登録を受けられるとしています。
 なお、環境整備法については昨年6月、法案が衆院で可決した折に、日本新聞協会が、有害情報の「例示」を「事実上の情報規制を招く根拠ともなりかねない」とし、フィルタリング推進機関の登録も「公的関与の余地を残す懸念がある」と指摘し、「表現の自由を損なうことにつながりかねないと危惧する」との声明を発表。マイクロソフトやヤフー、楽天など5社も、同様の懸念を表明しています。
 これを受け、参院では、「インターネットを利用した表現の自由、多様な情報に関する情報発信やアクセスを不当に制約することのないようにする」「事業者などが行う有害情報の判断、フィルタリングの基準設定などに干渉することがないようにする」などの付帯決議を行いました。
重要な役割果たす家庭、親子間のギャップ埋める必要
 子どもがインターネットを安全に、適切に利用できるようにするために、最も重要な役割を果たすのは家庭(保護者)で。
 整備法では、保護者に対し、携帯電話・PHSの利用者が18歳未満であることを契約時に申し出る義務のほか、(1)インターネット上には有害情報が多く流通していることを認識し、不適切に利用した場合には、青少年の売春、犯罪の被害、いじめなどのさまざまな問題が生じることに留意する(2)子どもの発達段階に応じて、インターネットの利用状況を把握するとともに、フィルタリングなどの方法で、その利用を適切に管理する――などの責務を課しました。
 フィルタリングについては、保護者の判断に委ねられており、どの方式を利用するか、また外すかどうかは、保護者が子どもの年齢や成長を考えながら決めることが大切になります。また、フィルタリングだけでなく、インターネットのマナーやルール、安全対策などについても教えていくことが求められています。
 具体的な例を指摘すると、危険な異性との交際のキッカケとなる可能性のある掲示板サイトやプロフサイトには、無料のゲームがダウンロードできるなどの得点があり、こどもたちは、親にゲームをやりたいとの理由で、フィルタリングを解除させたりするケースがあります。
参考写真 また、解除のための暗証コードを安易に設定したり、こどもに教えてします事例なども多く報告されています。
 文科省調査(前述)によると、自己紹介サイト(プロフ)の公開経験(パソコンを含む)がある高2は44.3%に上る一方で、子どもに公開経験があると思う高2保護者は16.5%にとどまるなど、親が実態を把握できていない現状が浮き彫りになっています【グラフ右参照】。
 また、携帯電話の利用ルールについて「家庭で特に決めていない」と答えた高2が54%だったのに対し、親は26.2%と、親子間の意識にズレがあることも明らかになっています。
 今後、こうしたギャップを埋めていく取り組みが重要になります。
【フィルタリング】
 インターネット上の情報を一定基準のもとで選別し、有害情報を閲覧できなくするプログラムやサービス。
 現在、提供されているフィルタリングには、主に(1)安全と思われるサイトのみに接続でき、それ以外のサイトへの接続を制限する「ホワイトリスト方式」(2)出会い系サイトやアダルトサイトなど、有害な特定分野のサイトへの接続を制限する「ブラックリスト方式」(3)夜間から早朝にかけてすべてのサイトへの接続を停止させる「利用時間制限」――の三つの方式がある。