3月24日、民主党の小沢代表の秘書が西松建設からの政治献金をめぐる政治資金規正法違反の罪で起訴されました。その進退が注目された小沢代表は、24日夜、記者会見して、民主党の代表を辞任する考えがないことを明らかにしました。その理由を、小沢代表は2つ挙げています。1つは、政治団体からの献金として受領した事実をそのまま収支報告書に記載したのであり、違法性は全くないということ。2点目は、衆議院の総選挙が目前に迫った今、異例の強制捜査に踏み切った検察のやり方は、とうてい納得できないということです。
 結局、民主党内にも小沢代表の続投を容認する雰囲気があることや、世論調査でも民主党の支持率の低下が想定の範囲であることなどから、このままの体制でも選挙の勝てると判断したのでしょう。小沢代表の判断の物差し、事の善悪や政治家としての良心の問題、国民への影響などではなく、結局は選挙に勝つか負けるかという一点であるということなのです。
 しかし、民主党の存在意義から考えてみると、小沢の続投は民主党それ自体の自己否定であると指摘せざるを得ません。
 民主党の存在意義は、自民党の古い政治の体質=金権体質・利権体質を根本から改めることであるはずです。しかし、次々と明らかになる小沢代表の後援会の企業との癒着構造は、自民党のそれを上回るものです。仮に民主党が政権を奪取しても、小沢政権は、自民党以上の金権利権体質の政権になるのではと、心ある国民は見ています。
090325ozawa1 自民党との対立軸を明確にするため民主党は、公共事業を請け負う企業からの献金は、政党や政党支部向けのものであっても禁止する法案を国会に提出し、小沢代表になるまで、選挙の政権公約(2005年の総選挙のマニフェスト)にもそのことをはっきりうたっていました。しかし、小沢代表のもと取りまとめられたマニフェスト2007には、企業献金に関する記載はスッポリと抜けてしまっています。
 そもそも、こうした多額の献金を受けている小沢代表関連の後援会が、その資金で何を行おうとしているのか、多額の不動産資産を形成した本当の目的は何なのか、小沢代表が説明しなくてはいけない内容は、増える一方です。
 自民党との対立軸を失った民主党、自民党の悪しき伝統の後継者である小沢氏を代表としていただく民主党は、崩壊への第一歩を記したと断言できます。
 また、今回の事件そのものも小沢代表が言うように、軽微な形式犯程度の内容ではありません。
 公共工事の受注を目指していた西松建設は、実態のないダミーの政治団体を使って、企業献金という実態を隠蔽していました。それを小沢代表の秘書も知っていた、ということが核心部分です。起訴された小沢代表の秘書は、すでに政治資金報告書の虚偽の記載をしたことを認める供述をしていることが判明しています。西松建設の関係者は、「小沢代表の影響力を持って、公共事業の受注が有利になるように期待して、献金を行った」と、供述しています。また、政治団体を使ったのは、「その動きをライバルのゼネコンから隠すのが狙いだった」とも供述しています。
 起訴事実の虚偽記入は5年以下の禁固で、政治資金規正法の罰則の中で最も重い内容です。政治資金規正法では様々なルールを定めていますが、虚偽記入されると国民がその内容に対して正確な判断を下せなくなるからです。これは決して軽い罪ではなく、形式犯でもありません。まして、事務手続きのミスでこのようになったわけでもありません。その重みを充分認識する必要があります。
 3月25日付の新聞各社は、小沢秘書の起訴と代表続投について、一斉に社説で論評を加えました。いずれも、小沢代表と民主党の責任の重さを強く指摘する内容です。
 産経新聞は、「小沢氏は政治的、道義的責任に加え、大久保被告の刑事責任にどう関与したかが問われることになる。検察のさらなる解明を期待する。小沢氏は24日夜の会見で「責任は大きい」と自ら認めた。その意味では、民主党代表を辞任するなどして政治責任を明確にすべき事態である」と、きっぱりと結論づけています。
 毎日新聞は、民主党の存在意義に重きを置いた社説を載せました。いわく「利権をめぐりカネと票が動く。これこそ政官業の癒着の本質であり、古い自民党の族政治そのものの構図ではないのか。しかも小沢氏はそんな自民党政治の打破を掲げて離党し、政権交代可能な2大政党制の実現を目指してきたはずだ。次の衆院選で首相をねらう民主党の代表が『古い自民党の体質そのままだ』と多くの有権者を失望させた責任は免れまい。小沢氏は突然、企業・団体献金の全面禁止にも言及しているがそもそも、これまでなぜゼネコンから巨額な献金を受け続けてきたのか。小沢氏は会見で『隠しているわけでない』などと語るだけで疑問に直接答えなかった」と論及しました。
 朝日新聞は、自民党や検察の責任にも言及しながら、「政権交代によって、日本の政治を変える。官製談合や天下りを根絶し、税金の無駄遣いを徹底的に改革する。それが民主党の政権公約の柱のはずだ。だが、肝心の党首が『古い自民党』そのままの土建政治にどっぷり漬かる姿が浮き彫りにされてしまった。果たして政権をとれば、本当に政治を変えられるのか。根本的な疑念を呼び起こさずにはおかない。変革を訴える党の党首として、小沢氏がふさわしいとは思えない。国民の大方が納得できる説明を尽くせないのなら、代表から身を引くべきだ。情けないのは、この間、小沢氏の政治責任にほとんど触れようとしなかった民主党議員たちの姿だ」と主張しました。