東京都の1.3倍28万4千ヘクタールが耕作放棄
4月7日、農林水産省は、2008年度の耕作放棄地全体調査結果を公表しました。調査結果によると、休耕地や草刈りなどの管理を行っている不作付け地を除いた耕作放棄地の面積は、東京都の面積の1.3倍に当たる28万4千ヘクタールと推計。このうち13万5千ヘクタールは森林・原野化が進み、農地への復元が著しく困難とみられています。この結果は、2005年農林業センサス上の耕作放棄地面積38.6万ヘクタールを10万ヘクタール程度下回りました。
 この調査は、市町村と農業委員会などが実際に農地の現況を見て判断。荒れ具合の軽度なものから順に、(1)草刈りなどをすれば耕作可能(緑)(2)基盤整備すれば農業利用できる土地(黄)(3)森林・原野化し、農地に復元不可能な土地(赤)−−と色分けし、地図上に書き込みました。「赤」はさらに、「復元困難な非農地」と判断を保留した「判断未了農地」に2分類されています。
08年度耕作放棄地全体調査の結果に基づく全国推計
 小計
(判断未了)

(非農地)
合計
農用地区域4.73.68.33.41.112.8
農用地区域外3.53.16.66.42.615.6
全体計8.26.714.99.83.728.4

 08年度耕作放棄地全体調査の目的は、耕作放棄地の位置と実態を把握し、状況に応じた対策の実施につなげることです。全国1785市町村が、農業委員会と連携し実施しました。3月末までに市町村から集まった調査結果を踏まえ、全国の耕作放棄地の面積を推計しました。緑は8万2千ヘクタール、黄色は6万7千ヘクタール、赤が13万5千ヘクタール(非農地3万7千ヘクタール+判断未了地9万8千ヘクタール)と算出。農用地区域の耕作放棄地面積は12万8千ヘクタールあり、うち、緑(4万7千ヘクタール)と黄色(3万6千ヘクタール)をあわせた8万3千ヘクタールが再生可能とみられています。
公明党県本部の耕作放棄地の実態調査 食料自給率が4割と低迷する中、狭い国土にもかかわらず、これだけの農地が利用されていないという現状を、深刻に受け止める必要があります。
 農地の放棄要因は、高齢化に伴う労働力不足や引き受け手の不在、土地条件の悪さなどが指摘されています。その上、海外から輸入される低価格の農産物、戦後急速に浸透した西欧食文化の影響も見逃せません。
 農地再生を、食料自給率の向上や農業の強化につなげるためには、農業者や行政はもちろんのこと、消費者側も農業や食料問題に積極的にかかわることが非常に重要です。
 政府は、07年から耕作放棄地対策に本腰を入れ、5年程度をメドに農業上重要な地域を中心に、耕作放棄地“ゼロ”をめざしています。
 公明党もこれまで、耕作放棄地の活用に向けた現地調査や農業者との意見交換のほか、政府への申し入れなどを再三にわたり行うなど全力を挙げてきました。
 今年度予算では、総額206億円の耕作放棄地再生利用緊急対策交付金などで、貸借などによって耕作放棄地を再生・利用する担い手や集落営農組織などを手厚く支援することになりました。
 税制面も、農地を相続した人が農業を続けた場合に適用される相続税納税猶予制度について、市街化区域外の農地を貸し付けた場合にも適用できるようにするなど改正しました。
参考:平成20年度耕作放棄地全体調査(耕作放棄地に関する現地調査)の結果について
 さらに、農地を「所有」から「利用」へと転換するための、農地法改正案の国会審議が進んでいます。これにより、農地の転用を期待して農業生産による収益水準を大きく上回る農地価格や、農地の分散化による非効率などの課題を是正することで、生産コストの引き下げや引き受け手の確保を目指します。
 また、改正案では違反転用への罰則を強化し、行政代執行制度を創設します。さらに農林水産大臣が、都道府県知事が行う2ヘクタール以下の転用許可事務の適切な処理を要求できる規定も盛り込みました。農用地区域からの除外規定も厳格化します。
 さらに、賃借の要件を大幅に緩和し、企業などの農業参入を促すと同時に、農地の不適正利用の場合に賃借を解除する旨を契約条件に盛り込みました。農業委員会のチェック機能も強化し、農地利用の監視強化や違反転用の防止に向けた体制整備も行います。
 農地政策改革や耕作放棄地対策は、食料自給率・自給力の向上を目指し、農地を農地として利用することが目的に他なりません。そのためには農地を確保するだけでなく、耕作する人材の確保や作物選定、販路確保など十分な所得の確保が見込める、農業環境の整備がもっとも重要です。