参考写真 茨城県は5月29日、臨時県議会を招集し、県職員の夏のボーナスを減額する給与条例を上程することになりました。
 茨城県人事委員会は5月15日、6月支給の県職員の夏のボーナスについて0.2カ月分を暫定的に減額する勧告を橋本昌知事に行いました。国の人事院勧告に基づく措置で、減額の臨時的な勧告は県人事委としては初めてです。
 対象となるのは行政職、警察官、教職員の約3万3000人。係長で45歳、妻と子2人のモデル例では94万5478円から、85万6998円に減額となります。
 凍結した減額分の取り扱いについては、例年通り行う民間のボーナス支給状況を調査したうえで、10月の勧告にあわせて必要な措置をとることになります。
 なお、県議会議員のボーナスは、知事に準じることになっていますので、0.15カ月分の減額となります。
 期末手当勤勉手当夏のボーナス計
一般職員1.40→1.25
▼0.15
0.75→0.70
▼0.05
2.15→1.95
▼0.20
部長級職員1.20→1.10
▼0.15
0.95→0.85
▼0.05
2.15→1.95
▼0.20
知事等の特別職
教育長
医療大学長
1.60→1.45
▼0.15
 1.60→1.45
▼0.15
(写真は県人事委員会の勧告書を受け取る橋本昌知事)
公務員の給与は民間に準拠、労働基本権制約の代償
 国や地方の公務員は民間と異なり、ストライキなどの労働基本権が制約されています。その代償措置が国家公務員法と給与法に基づく勧告制度で、公務員の給与水準を民間企業の給与水準と均衡させる「民間準拠」を原則にしています。人事院は、民間給与の実態調査をした上で、非現業の一般職国家公務員の月給やボーナス、各種手当などを改定する勧告を毎年行っています。
 公務員の数は国家公務員が約92万人、地方公務員が約300万人。このうち人事院勧告の対象になるのは、給与法の適用を受ける一般職の非現業国家公務員約30万人です。
 しかし、国会職員や裁判所職員などの特別職国家公務員や、独立行政法人職員、国有林野事業の現業一般職国家公務員も、非現業一般職の改定にならい、給与の見直しを行っています。
 さらに、地方公務員も、都道府県や政令市の人事委員会が、人事院勧告を踏まえた勧告を首長と議会に行っています。
 つまり国の人事院勧告は、国と地方の公務員全体の給与水準決定に、大きな影響を与えていることになります。
初の夏のボーナス減額、臨時的な措置で12月分で調整
 人事院は毎年5月〜6月、4月時点の民間企業の月給を調査、ボーナスも前年の冬とその年の夏の民間企業の支給額を調査(職種別民間給与実態調査)します。調査対象は民間企業が全国約43万人、一般職の国家公務員は新規採用者を除く約29万人。役職や年齢、勤務地などの条件ごとに、民間と国家公務員の給与を比較します。ちなみに平成20年の茨城県の調査対象は243事業所でした。
 調査の結果、公務員が民間より高い水準なら引き下げ、低ければ引き上げを勧告します。
 世界的な経済危機が続く今年の夏のボーナスに関しては、5月1日、国家公務員の夏季ボーナスを約1割減とする、史上初の臨時の減額勧告を行いました。
 先にも述べたように、公務員のボーナスは、前年の冬と今年の夏のボーナスの水準を調査し、今年の冬のボーナスにその結果を反映させることになっています。しかし、昨年秋以降の景気の急激な悪化で、民間の夏のボーナスは、大幅に減額となることが予想され、冬のボーナスだけで調整しようとすると、その減額幅が非常に大きくなってしまうことが懸念されます。
 そして何よりも、主権者であり納税者である民間企業のボーナス支給が減額となる中、公務員だけがこれまでと同じ額を支給されることに、国民の理解は得られのかという問題があります。
 そこで、人事院は夏のボーナスで暫定的に期末手当・勤勉手当て等について10%分を凍結し、12月のボーナス支給時に調整するという、勧告を提出しました。
 地方の人事委員会の多くでは、この人事院勧告に準じた特例措置を講ずるのが適当と判断し、知事と議会に対して勧告を行いました。