さくらシティ日立 所有権取得めど立たず
茨城新聞(2009/5/27)
合同会社 抵当権買い取り断念へ
 米証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻(はたん)の影響で閉店した大型複合商業施設「さくらシティ日立」(日立市神峰町)について、合同会社まちづくり日立(岩田秀邦代表社員)が抵当権取得を事実上断念せざるを得ない状況にあることが5月26日、関係者の話で分かった。所有権取得のめどが立っていないとみられる。同日開かれた同社の定時総会で、これまでの交渉経過を含め報告された。

 1月30日に設立された合同会社「まちづくり日立」は、アメリカの証券大手リーマン・ブラザーズの経営破綻の影響で閉鎖した「さくらシティ日立」の再開を目指し、その根抵当権の取得を目指してきました。しかし、根抵当権を取得しても、土地建物の所得の目処が立たないことから、5月26日開催された定時総会で今までの方針を断念しました。
 まちづくり日立は、日立商工会議所の幹部を中心に、法人4社を含む18人が50万円以上を出資し、3900万円の出資金を集め、東京三菱UFJ信託銀行から、5000万円の根抵当権を買い取る計画でした。根抵当権を取得した上で、物件を所有するニューシティーコーポレーションの関連会社と優先的に土地建物の購入交渉を行う計画でした。しかし、購入を求めていた日立市が、使用目的が明確でない施設の購入は難しいと、慎重な姿勢を崩していないため、計画の全面的な見直しを迫られてものです。
 今後、ニューシティーコーポレーションの関連会社は、既に破綻が決定してるため、「さくらシティ日立」の土地建物は、競売に付される可能性が強くなりました。
【参考記事:ニューシティコーポレーションが廃業】
 ニューシティコーポレーションは、5月20日に廃業されました。4月21日、金融商品取引業の廃止公告を出した。傘下の私募ファンドは他社に移管済みで、近く会社も清算する方針です。
 ニューシティコーポレーションは経営破綻したニューシティ・レジデンス投資法人のスポンサーで、不動産開発とファンド運用を手掛けてきました。米CBリチャードエリス出身者が中心となり、デベロッパーの日本新都市開発を母体として2000年に設立されました。
 2004年にはニューシティコーポレーションが開発した賃貸マンションを主な資産とするニューシティ・レジデンス投資法人を上場させ、その後3年間で2000億円規模に拡大させました。私募ファンドでは住宅のほか商業施設、物流施設なども運用。2006年には米国で賃貸マンションを取得したほか、上海やソウル、シンガポールに拠点を置くなど海外展開も進めていました。こうした物件の一つが、「さくらシティ日立」です。
 しかしその後、主力の賃貸マンションの流動性低下とREIT(不動産投資信託)市況の低迷により経営が悪化。2008年10月には傘下のニューシティ・レジデンス投資法人が民事再生手続きを申請しました。本体のニューシティコーポレーションも人員削減などのリストラを進めてきたが、2009年2月末時点ですでに債務超過に陥っていました。
 この事態を受けて、金融庁は4月22日から2カ月間、ニューシティコーポレーションの全業務を停止する行政処分を下しています。
参考写真
さくらシティ日立のオープンを告げるニューシティコーポレーションのプレスリリース