神戸市長が安心宣言
産経新聞(2009/5/28)
 神戸市の矢田立郎市長は28日会見し、市内の新型インフルエンザ感染の広がりが収まったとの見方を示し、「ひとまず安心」と宣言した。また今後予想される第2波に備え、早期に感染を探知する地域連携システム「神戸モデル」を構築すると発表した。
 同市では16日未明に国内感染としては初めての感染者が確認され、これまでに高校生を中心に1歳から60歳の男女計107人の感染が確認された。このうち、有症者は27日午後2時の時点で7人。また、休校を解除した25日以降、市内で新たに感染が確認されたのは市内の1高校での感染にとどまっている。
 このことから市では感染拡大に「一区切りついた」とし、今後は個人予防に重点を置き、季節性インフルエンザに近い対応に切り替える。
 矢田市長は宣言の中で「市民生活と地域経済に大きな打撃を受けた。これからは新型インフルエンザを体験した町として、どこよりも安全・安心な生活を取り戻す」とした。
 「神戸モデル」は、発熱外来のほかに国の機関である神戸検疫所と市内の開業医、校医らに協力を依頼し、検体の提供を受けて定点観測を行うサーベイランス(監視調査)を実施する。

 5月27日現在の新型インフルエンザの感染者数は、和歌山県でも新たに感染者が確認され、10都府県で361人となりました。107人の感染者を出した神戸市は、感染拡大に一区切りがついたとして、矢田立郎市長が「安心宣言」をしました。
 ここで、新型インフルエンザにかからないための注意点と万一かかってしまった時の対処法について、公明新聞の記事を中心に整理してみました。
海外発生期から国内発生早期へ
参考写真 厚生労働省は、5月16日に新型インフルエンザの段階を第1段階<海外発生期>から、第2段階<国内発生早期>に切り替えました。
 今回の新型インフルエンザの広がりの中では、高校生への感染拡大が特筆されます。国立感染症研究所の安井良則主任研究官らの積極疫学調査によると、大阪府茨木市の高校での新型インフルエンザ集団発生で、感染が確認された生徒らの大半に、座席が近いなどのつながりがあることがわかっています。これらの学校では、休校措置により感染拡大は急速に収束。安井研究官は「近い距離で長時間接した人に感染することが確認できた。地域には広がっていないとみられる」としています。感染者は圧倒的に生徒が多く、通常家庭内で多くみられる母親への感染はあまりありませんでした。「過去に流行したウイルスと関係があるのかもしれないが、まだ分からない」と説明されています。また、安井研究官は、感染者の出た学校に対する非難の声もあることについて、「感染症は誰もがかかるもの。生徒や学校関係者が誹謗中傷されることはあってはならない」と強調しています。
 今後新型インフルエンザ蔓延対策には、学校での休校措置が大きなウェイトを持つことが確認されたといえます。
今回の新型インフルエンザは弱毒性
 今回の新型インフルエンザの対応について、一部から全校休校などは厳しすぎるのではないかという声が上がっていることは事実です。これは本来想定していた鳥インフルエンザ並の強毒性のものだったためです。強毒性の場合は致死率も高く、全校休校、企業も一部部門を除いて停止など、厳重な処置が必要です。ガイドラインはこの鳥インフルエンザの発生を前提としていたので厳重な対応になりましたが、今回の新型インフルエンザが弱毒性のものであることが明らかになったので、対応をより緩やかなものに変更しつつあります。しかし、このインフルエンザが変異して毒性の高いものになる可能性は全くないわけではありませんから、注意深く見守ることは必要です。
予防の基本中の基本は「手洗いの徹底」
 インフルエンザにかからないようにするには、まず、なるべく人の多いところには出かけないようにすることです。
 感染の危険性が最も高いのは、閉ざされた空間で人と接触することです。その意味では、人込みをなるべく避けることが最大の防御策といえそうです。
 外出から帰ったらすぐに手洗いを徹底することが最も重要です。外では無意識のうちにいろいろなところに触れていますが、もしウイルスがあったら、それが手を経由して入ってくる可能性が高いからです。私たちは無意識のうちに、いろいろなところに触れた手で自分の口や鼻を触わったり、物を食べていたりするものです。
 うがいも有効性が確認されています。手洗いとうがいはセットで励行することが必要です。
マスクの使い方は
 テレビの報道によると、5月20日の街頭調査でマスクを着用している人は大阪は7割、東京3割、名古屋は2割弱とありました。マスクは本来はインフルエンザにかかっている人がしてほしいのですが、やはり心理的にも予防のためにかけておきたいということでしょう。
 マスクをする時は、鼻からあごの下まできっちりと覆うように装着しましょう。鼻を出している人もたまに見かけますが、それでは効果がありません。最も普及している不織布のマスクは、基本、使い捨てです。1日使ったらポリ袋などに包んで廃棄しましょう。ウイルスがついている可能性のある外側は触わらないようにというのが、本当のやり方だそうです。
 現在はマスクが品切れの地域も多く出ています。3月に生産されたマスクは約1億7千万枚で先月の同月比3.4倍ですが、全国民が1日1枚使ったらそれで終わってしまう量です。今は品薄なので仕方ありませんが、夏になれば新型インフルエンザの勢いも一時弱まり、マスクも出回ってくると思われます。マスクはその時に、秋以降の流行に備えて買っておきましょう。
 一部には、マスクの有効性に疑問を投げかける報道もあります。アメリカやヨーロッパでは、マスクをつけて町を歩く人はほとんど見られません。
 なぜ欧米ではマスク姿の人がいないのか。新型インフルエンザに詳しい専門家は「インフルエンザ予防のため、マスクをするのは日本とアジアの一部の国で定着している衛生習慣」と指摘しています。その理由として、「欧米では、自分への感染がマスクで防げるかどうかについてはっきりとした効果があるとされておらず、マスクは病原体を持っている人が第三者にうつさないために使用されている」と説明しています。欧米では、手にウイルスがつくことが考えられるため手洗いをしたり、人込みに入らないようにしたりする教育が徹底的に行われています。つまり、欧米でマスクをしている人は「自分が新型インフルエンザを発症しているという表現で、第三者にうつさないためにしているか、顔を見られたくないためにしている」とみられるのだそうです。
 平成20年9月に新型インフルエンザ専門家会議がまとめた内容を以下に紹介します。
不織布製マスクの使用方法
(1)咳・くしゃみなどの症状のある人が使用する場合
参考写真 咳・くしゃみなどの症状のある人は、周囲の人に感染を拡大する可能性があるため、可能な限り外出すべきではない。また、やむを得ず外出する際には、咳・くしゃみによる飛沫の飛散を防ぐために不織布製マスクを積極的に着用することが推奨される。これは咳エチケットの一部である。
(2)健康な人が不織布製マスクを使用する場合
 マスクを着用することにより、机、ドアノブ、スイッチなどに付着したウイルスが手を介して口や鼻に直接触れることを防ぐことから、ある程度は接触感染を減らすことが期待される。また、環境中のウイルスを含んだ飛沫は不織布製マスクのフィルターにある程度は捕捉される。しかしながら、感染していない健康な人が、不織布製マス
クを着用することで飛沫を完全に吸い込まないようにすることは出来ない。よって、咳や発熱等の症状のある人に近寄らない(2メートル以内に近づかない)、流行時には人混みの多い場所に行かない、手指を清潔に保つ、といった感染予防策を優先して実施することが推奨される。
 やむを得ず、新型インフルエンザ流行時に外出をして人混みに入る可能性がある場合には、ある程度の飛沫等は捕捉されるため、不織布製マスクを着用することは一つの防御策と考えられる。ただし、人混みに入る時間は極力短時間にする。

家族がインフルエンザにかかったら
 家族がインフルエンザにかかってしまった場合、これからは重篤な症状でない限り自宅で療養することになるでしょう。この際、看病のコツを紹介します。
  • インフルエンザのウイルスは高い湿度の環境に弱いので、湿度は高めに50〜60%を保つようにしましょう。加湿器などを使うのも効果的です。
  • ウイルスが部屋にこもらないように何度も窓を開けて換気しましょう。空気清浄機を使うのもひとつの方法です。
  • 看病する家族はインフルエンザがうつらないようにマスクをして看護しましょう。看護の後は必ずしっかりと手を洗ってください。
  • 患者の使った食器や衣服などは、普通の洗剤で洗って乾燥させれば充分消毒できますから、特別に消毒などをする必要はありません。

 看護の方法は今までの季節性のインフルエンザと同じような対応となります。必要以上に怖れることはありませんが、できるだけ家族に広がらないように配慮することは大切です。治ったら病院などで完治しているかどうか、検査してもらうことをお勧めします。
参考:私たちにもできる新型インフルエンザの身近な予防策(YouTube動画にリンク:厚労省提供)