参考写真 6月3日、公明党の太田昭宏代表は、厚生労働省で舛添要一厚労相と会い、乳幼児に重い細菌性髄膜炎を引き起こす「インフルエンザ菌b型」=ヒブ(Hib)などの予防ワクチンの定期接種化を求める要望書を手渡しました。 細菌性髄膜炎とは、ヒブや肺炎球菌などの細菌が引き起こす髄膜炎で、国内では年間約1000人の子どもたちが自然感染で発症。患者の25%に知的障害や聴覚障害などの後遺症が残り、5%が死亡する深刻な疾病です。
 席上、太田代表らは「細菌性髄膜炎を予防するワクチンは、すでに100カ国以上で使用され、90カ国以上で定期予防接種されて効果を上げている」とした上で、日本でも昨年12月から販売開始となったヒブ(Hib)ワクチン(商品名:アクトヒブ、サノフィパスツール第一三共ワクチンならびに第一三共が販売)が、任意接種のため、費用負担が計4回で約3万円と高額であることや、肺炎球菌ワクチンの承認が遅れていることを指摘。
 「子どもたちの命を守るには、早急な対策が必要」とし、(1)細菌性髄膜炎などのヒブ重症感染症を予防接種法の定期接種対象疾患(一類疾病)に位置づけ(ヒブ(Hib)ワクチンの定期接種化)(2)ワクチンの安定供給体制の確保(3)肺炎球菌ワクチンの早期承認――の3点を要望しました。
 同席した古屋範子女性局長は、予防効果のあるヒブ(Hib)ワクチン接種について「都議会公明党の推進で、都は4月から公費助成を行う区市町村の助成額の半分を補助する独自の支援策をスタートさせ、荒川区や品川区などで導入されている」と紹介し、「一刻も早く定期接種に」と重ねて要請しました。
 これに対し舛添厚労相は、「副作用がないか安全性を確保した上で決めたい。問題意識は持っている。そうすれば3万円もする(保護者の)負担も少なくなる」と前向きに取り組む意向を表明。肺炎球菌ワクチンの承認についても「審査は最終段階にあり、さらに督励したい」と回答しました。
ヒブ(Hib)とは?
 そもそも「ヒブ(Hib)」というはどのような細菌なのでしょうか。昔、冬に流行るインフルエンザ(新型インフルエンザが大きな話題になっていますが...)の病原体と間違われ、こんな紛らわしい名前になってしまいましたが、全く別ものです。
 ヒブ(Hib)による重症感染症には、髄膜炎、喉頭蓋炎、菌血症などがありますが、日本では毎年600人の子どもたちが感染し、そのうち20〜30人が死亡し、後遺症を残す子どもが100人以上います。
 WHOによる2000年の推計では、ワクチンで防げる病気で乳幼児が亡くなる原因として、一番多いのが麻疹(はしか)の約78万人、次に多いのがヒブの約46万人です。
 また、ヒブ髄膜炎は初期は胃腸炎と区別がつかないことが多く、診断が大変難しいことと、抗生物質がなかなか効かないヒブが増えているなど、治療が益々難しくなってきています。
 ヒブは幼児の鼻の奥に潜んでおり、健康な幼児でも5〜10%はヒブ(Hib)を保菌(キャリア)しています。一方で3歳をすぎると、ヒブ(Hib)に対する抗体ができてくるので、保菌者は少なくなり、ヒブによる重症感染症も減ってきます。
ヒブ(Hib)感染症はワクチンで防げる
 1990年代から、欧米ではヒブ(Hib)ワクチンが導入され、2008年には、アジア・アフリカを含む110カ国以上で使用されています。WHOの推奨により、2003年には94カ国で定期接種に組み込まれています。効果は劇的で、今やほとんどの先進国でヒブによる重症感染症はないといっても良い状態になっています。
 しかし、日本はヒブ(Hib)ワクチンの導入が遅れていました。2007年の時点で、東アジアで有料でも接種できないのは、日本と北朝鮮の2か国だけという状況でした。
 導入が遅れた背景には、薬害が起こることへ過剰反応があったと指摘されています。昭和30年代から数多く起こった薬害裁判で国が負けるという事態が起きました。それがトラウマとなって、「ワクチンを認可しなくれば絶対に薬害は起きない」のですから、出来るだけ認可を先延ばしする傾向が生まれてしまったのではないでしょうか。