6月9日、井手よしひろ県議は県議会内で、「スクールニューディール政策」の具体化状況について県教育庁に説明を求めました。
 「スクールニューディール政策」については、「不況下こそ学校施設への投資を!スクール・ニューディール政策」と題して、このブログでも取り上げました。
 「スクールニューディール政策」のポイントは3点。災害時の避難所機能の強化にもつながる学校校舎の「耐震化」や、太陽光発電パネル設置などの「エコ化」、パソコン整備などの「ICT(情報通信技術)化」を3年間で集中的に進めるもので、需要や雇用の創出、中長期的な経済成長につなげる狙いがあります。
 まず、学校耐震化に関しては、国は特に緊急性の高い1万棟余りについて11年度までの5年計画だったものを、09年度補正予算で2年間前倒しして、実行するものです。
学校校舎の耐震化促進
参考写真 学校は、子どもたちが一日の大半を過ごす生活の場であり、災害時には地域住民の応急避難場所としての役割も果たすことから、安全性の確保は最優先の課題となっています。
 これまで公明党の粘り強い取り組みで着実に進められてはきましたが、子どもたちや災害時のことを考えれば、各地の学校耐震化の実現は一日でも早いほうが望ましく、今回、その取り組みが加速されることに大きな意義があります。
 茨城県の取り組みの実情は、大変厳しいものがあります。08年4月現在の実績で耐震補強の前提となる耐震診断の実施率は、県内小中学校が80.8%(93.8%:45位)、高等学校64.2%(90.5%:42位)、特別支援学校55.7%(95.3%:45位)、幼稚園57.4%(74.9%:31位)となっており、全国平均を大きく下回わっています。(全国平均の実施率と全国順位)
 さらに全校舎に対して耐震性が確保されている校舎の割合(=昭和57年以降の建築物、補強済み、耐震診断を行って補強不必要とみなされた校舎の割合:耐震化率)は、小中学校が46.5%(62.3%:45位)、高等学校57.5%(64.4%:29位)、特別支援学校67.9%(80.5%:39位)、幼稚園30.0%(57.8%:44位)となっており、いずれも全国平均を下回わっています。
 今回の補正予選では、小中学校の耐震化を進めるために、Is値0.3未満の耐震化工事をすべてを今年度中に完了させるための予算が計上されました。この国庫補助を活用すると、市町村の負担はIs値0.3未満で全体事業費の6%、Is値0.6未満で全体事業費の11%で耐震化を行うことができ、市町村にとっては大変有利な補助制度です。
 しかし、これまでの計画が後れていたこともあり、耐震化診断の必要な1500棟の内、いまだに1100棟の耐震診断(詳細診断)が完了しておらず、残り400棟の耐震化工事が必要となっています。
 その内、現時点で耐震化工事の予定が決まっているのはわずか300棟。今年度中に緊急に耐震化が必要な校舎をすべて改修しようという国の計画とは大きな乖離が生じています。
 なぜ、国の計画と市町村の計画との間に、このような差が出てしまうのかという理由は、第一に予算の問題があります。国の予算では、耐震化の前提となる耐震診断そのものの予算は認められません。また、割合は少ないといっても一定の地元負担も発生しますので、厳しい財政状況や地域経済が疲弊する中で、校舎改修・耐震化に大幅な予算を組めないという実情があります。二番目には、市町村合併や少子高齢化、人口減少などを受けて、小中学校の再編整備の検討が行われている最中であるとの要因があります。人口減少地域に点在する小中学校を統合したり、場合によっては廃止するなどの議論は、地元住民の意向を尊重する必要があり、こうした計画がまとまらない限り、既存の校舎の耐震化に踏み切れないという実情があります。
 井手県議は、県の説明を受けた上で、各市町村の議員との連携で早期の耐震化を進めていくこととしました。
学校施設への太陽光発電装置の設置
参考写真 続いて学校施設への太陽光発電パネルの設置促進について、意見交換を行いました。
 新経済対策では、二酸化炭素(CO2)排出の少ない社会をめざす「低炭素革命」を中長期的な成長戦略の柱として位置づけています。環境分野への投資が世界的な潮流になる中で、最先端のレベルにある日本の環境関連技術を生かす上で、太陽光発電にかかる期待は非常に大きなものがあります。政府としても2020年までに現在の太陽光発電の量を20倍程度まで拡大することを目標にしていますが、学校施設への太陽光パネル設置は、その大きな推進力となることが期待されてています。現在約1200校に設置されている太陽光パネルは、当面、10倍の1万2000校への設置をめざすしています。
 県内の小中学校に設置されている太陽光発電設備は、21市町村の27学校で合計431.26kW分の設備が設置されています。国の方針によれば、300近い学校に太陽光パネルの設置を進めることになります。
 しかし、現在県に太陽光パネルの設置の意向を示している市町村の学校数は、わずか30箇所程度で、計画の1割程度です。
 太陽光パネルは原則として学校校舎の屋上・屋根に設置することになり、校舎の耐震化と連動して整備が進められる必要があります。現場からは、たとえば各市町村で1箇所、モデル学校を国が指定して、大規模な太陽パネルを設置して、教育関係者や地域住民にも啓発を進めながら太陽光発電の普及事業を進める必要性があるとの声が寄せられました。
学校におけるICT環境の整備
参考写真 さらに、学校におけるICT環境の整備についても聴き取りを行いました。ICT技術は、いまや社会に不可欠なインフラです。こうした環境整備の格差が、子どもたちが本来身に付けるべき知識・能力の格差となるようなことはあってはならず、こうした機会に先行して学校のICT化を図ることは意義深いことです。
 具体的には、すべてのテレビをデジタル化すること、教師用のパソコンを1人1台配備すること、児童・生徒用のパソコンを3.6人あたり1台配備すること、普通教室すべてに校内LANを整備すること、電子黒板を1校あたりの1台整備すること、など4081億円が予算化されました。
 市町村は6月12日までに、具体的な予算組について国に報告することになっていますが、今日現在、まだ固まっていないとのことです。
 一番の隘路は、やはり予算の問題です。学校ICT整備の予算4081億円のうち、半分は「学校情報通信技術環境整備事業」で賄われます。残り半分は、やはり緊急経済対策に盛り込まれた「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」を活用することになり、全額国の予算で小中学校のICT環境が整備できるとされています。しかし、後者の「地域活性化・経済危機対策臨時交付金」は、その他の公共事業にも活用できることから、市町村によっては学校への予算にまわせないところが出てきています。例えば、日立市ではすでにパソコン配備が進んでいることや校内LANの整備が終わっているなどの理由で、学校ICT化には取り組まないという結論に至っています。また、電子黒板の導入についても、導入してからの活用が果たしてできるのか、学校に1台の配備でどのような教育効果が上がるのかなどの疑問の声があり、積極的な導入推進の動きにはなっていません。
 スクールニューディール政策を進めるにあったては、国の積極的な姿勢がまだまだ現場の市町村担当者に伝わっていないという実感を強くしました。地方議員との連携の中で、こうした危機的な経済状況の今だからこそ、学校から新しい投資の動きを起こすために努力をしていきたいと考えています。