6月22日、県議会本会議が開会され、県議会県出資団体等調査特別委員会に、地方自治法第98条第1項に基づき、橋本昌知事に報告を求める議案が可決されました。
 98条第1項に基づく委員会では、主として県の組織内部のことを知事や教育長などの関係者から直接または書面で報告を求めることができる委員会です。茨城県議会では初めて設置されることになります。
 ただしこの98条委員会は、一般的に『検査権』を持つ委員会と言われ、地方自治法100条で規定されている委員会と違って証言の強制力はなく、また外部の人に対しての調査権はありません。
 すでに設置されている出資団体等調査特別委員会に、直接知事を迎えて質疑をおこない、必要であれば、過剰な土地の取得経過などの関係資料の提出を求めることになります。
地方自治法第98条 第1項
 普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の事務(自治事務にあっては地方労働委員会及び収用委員会の権限に属する事務で政令で定めるものを除き、法定受託事務にあっては国の安全を害するおそれがあることその他の事由により議会の検査の対象とすることが適当でないものとして政令で定めるものを除く。)に関する書類及び計算書を検閲し、当該普通地方公共団体の長、教育委員会、選挙管理委員会、人事委員会若しくは公平委員会、公安委員会、地方労働委員会、農業委員会又は監査委員その他法律に基づく委員会又は委員の報告を請求して、当該事務の管理、議決の執行及び出納を検査することができる。

 6月19日に開かれた県出資団体等調査特別委員会では、2008年度決算見込みに基づき、県の財政状況を表す「健全化判断比率」の試算結果が提出されました。
 これによると、財政規模に対する、地方債残高のほか公社や第3セクターなどを含めた将来負担すべき借金の割合を示す「将来負担比率」は約290%で、将来負担すべき実質的債務は1兆5332億円に上っています。07年度決算の289,9%から改善が進んでいない現状が明らかになりました。
 また、TX沿線地区で県が保有する土地の処分は、08年度で25.4ヘクタールの計画に対し、実際には1.6ヘクタールしか売却できませんでいた。今年度は39.5ヘクタールをばいきゃくうるの計画に対し、どれだけ処分できるか不透明な情勢だ。県や公社などの保有土地に関する負担額だけで約1650億円に達する見込みです。
 こうした状況に対して、県議会の最大会派である自民党県連が、県住宅供給公社など県の出資団体やつくばエクスプレス(TX)沿線地区開発で巨額の不良資産が生じている問題について、橋本昌知事を財政問題で厳しく追及し、9月に予定されている県知事選を意識して、対決姿勢をより鮮明にする目的で設置を提案したといわれています。
 井手よしひろ県議ら公明党は、知事選への対応に関しては全く白紙の状態ですが、深刻な県の財政状況をよりつまびらかにするためには、必要な手法であると判断し、98条委員会の設置に賛成しました。
 22日の採決では、なぜか共産党が採決に棄権し退席しましたが、自民・民主・公明・自民県政クラブ全員の賛成で、可決されました。
 この98条の基づく出資団体等調査特別委員会は、7月15日に開催される予定です。
県議会、知事と対決の場/来月に調査特別委
朝日新聞(2009/6/23)
 県議会は6月定例会最終日の22日、地方自治法98条に基づく検査権を行使する決議案が葉梨衛議長から提出され、共産党を除く4会派の賛成多数で可決した。今議会で橋本昌知事(63)の「失政」を突けなかった自民県連の主導により、7月に県出資団体等調査特別委員会を開いて県の公社問題などの責任を追及する。ただ、知事選をにらんだ政争の色彩が濃く、「泥仕合」に終わる公算が大きい。
 県連は11日に橋本知事に提出した公開質問状が、回答期限の21日を過ぎても届かなかったことを問題視し、22日午前に検査権の行使を最終決定した。検査権は議会が自治体に書類の検閲や報告を求める権利で、今回はつくばエクスプレス沿線地区開発や、多額の債務を抱える住宅供給公社などの保有土地の問題を対象にしている。
 背景には知事選をにらんだ思惑が当然ある。元国土交通事務次官の小幡政人氏(64)を擁立する自民県連としては、7月1日にも立候補表明をする橋本知事の勢いをそぐことが不可欠だ。「橋本知事はそれを突かれるのがいやだから、6月議会で表明しなかった」(県連幹部)との見方もあり、同特別委を7月15日に設定し、直接対決に臨む構えだ。
 22日に県庁で記者会見した海野透幹事長は「(橋本知事が)立候補に向けた動きをしなければ、98条を発動することはなかった」と明言。鶴岡正彦政調会長は「委員会としてではなく、議会として招致するのだから重みが違う」と強調した。県議会では民主党も自民側の提案に賛成した。
 一方、橋本知事は同日午後、県連に公開質問状の回答を提出。県連の「橋本知事から今期限りの(引退)申し入れがあった」との指摘については、「申し入れをしたことはない」と完全否定。多選批判や保有土地問題に対しては、「多選は弊害があると一概に決めつけられない」「住宅供給公社についてはほとんどが私の就任以前に取得されたもの」などと回答した。
 回答が遅れた理由について橋本知事は閉会後、報道陣に「締め切りの設定の問題。税金だって日曜日が納付期限なら、翌日の月曜が締め切りになるでしょう」と県連側を挑発した。特別委がある7月15日は、「全国知事会があるからどうしようかと思っている」と言葉を濁した。