参考写真 今国会では、農地制度の力点を「所有」から「利用」に移す改正農地法が成立しました。公明党が主張してきた「借りやすく貸しやすい農地改革」が実ったもので、農地の流動化促進に期待がかかります。
 日本の農業が危機に直面していることは、今さら論を待ちません。
 農業従事者はこの40年間で7割以上も減少し、335万人にまで縮小しました。しかも、その6割近くが65歳以上の高齢者です。担い手不足は既に危機的水準を超えています。
 農地の減少もとどまることを知らず、この40年間で2割以上減少しました。その一方で、耕作放棄地は約40万ヘクタールと埼玉県の面積に匹敵するまでに拡大しています。
 今回の改正法の目的は、こうした“農の衰退”に歯止めをかけ、カロリーベースで40%という水準にまで落ち込んでいる食料自給率を高める点にあります。言い換えれば、食料安全保障の確立です。
 この目的のために改正法は、農地制度の基本的な理念を、従来の「所有者保護」から「有効利用」に大転換しました。
 具体的には、農地の貸し借りをめぐる規制を大幅に緩和し、農家に限定されていた農地の利用を原則自由化しました。これまで耕作放棄地に限られていた企業による借地も、今後は優良農地にまで広げ、最長20年だった貸借期間も50年に延ばしました。企業に加え、農協やNPOなども農業に参入できるようになりました。
 法改正を受け農地の貸借を仲介する組織が市町村ごとに設けられます。ここを調整拠点として、農地の「まとめ貸し」ができるようになります。まとまった農地で、借り手が機械化による効率的な農業経営を行うことで、耕作放棄地の蘇生ができる仕組みです。
 こうした措置で企業の農業参入が進めば、若者の就農の機会は大きく広がり、新たな農業の担い手の確保につながるはずです。意欲ある人が農地に集まることで、地域おこしにも弾みがつくにちがいありません。
 反面、農地の流動化のマイナス面も注意する必要があります。
 貸し出された農地が産業廃棄物処分場にされた事例や乱開発で優良農地がなくなる事態は防がねばなりません。
 今回は違反転用への罰金についても、最高300万円から1億円に引き上げました。そうした歯止めと監視を強めた上で、企業の参入を促すのは担い手を確保する上で必要な措置です。