昨年、両親が相次いで病院や介護施設に入院(入所)することになり、驚いたことがあります。それは、入院(入所)時に「預かり金」を求められたことです。
 父親の入院時には10万円を、母親の入所時には5万円を請求されました。もちろん、「預かり金」ですから、退院(退所)する際にはかかった費用と相殺して、保証金の残額は返却されました。
 この「預かり金制度」は、平成17年9月の厚労省医療課長通知(平成17年保険医発0901002号)を根拠としているようです。
療養の給付と直接関係ないサービス等の取扱いについて
(一部抜粋)
4 その他
上記に関連するものとして、入院時や松葉杖等の貸与の際に事前に患者から預託される金銭(いわゆる「預り金」)については、その取扱いが明確になっていなかったところであるが、将来的に発生することが予想される債権を適正に管理する観点から、保険医療機関が患者から「預り金」を求める場合にあっては、当該保険医療機関は、患者側への十分な情報提供、同意の確認や内容、金額、精算方法等の明示などの適正な手続を確保すること。
参考写真 この通達を精読すると、どこにも「預かり金」を認めるという文言は書かれていません。しかし、「保険医療機関が患者から「預り金」を求める場合にあっては、当該保険医療機関は、患者側への十分な情報提供、同意の確認や内容、金額、精算方法等の明示などの適正な手続を確保すること」という表現は、「当該保険医療機関は、患者側への十分な情報提供、同意の確認や内容、金額、精算方法等の明示などの適正な手続を確保」すれば「患者から「預り金」を求める」ことが出来ると、解釈されているようです。
 どの病院がいくらぐらいの「預かり金」を徴収しているかは定かではありません。7月17日、井手よしひろ県議が県保健福祉部に問い合わせたところ、そもそも保険外に扱いのために、県ではその実態を掌握している部署はないとの回答でした。ちなみに、県立の3病院については「預かり金」を徴収していないとのことでした。
 病院経営にも一般企業のような自己責任と医療費抑制への対応が求められていることは事実です。医療費の未払いは、全国の主要な病院だけで最近3年間でも800億円以上にも上っているという統計もあります。自己防衛のために「預かり金」を求めるようになってきているようです。
 しかし、やはり、10万円近く、場合によっては数十万円もの現金がなければ入院できないというのは、医療機関・介護施設のあり方としては、いかがなものかという声は少なくありません。ことばを換えれば、「預かり金」支払う能力がない者は入院できないということになってしまいます。ひとりぐらいの高齢者や派遣社員の増大や派遣切りなどの雇用不安の中で、確実に増えてきているのではないでしょうか。「預かり金制度」が、これらの人々の医療拒否につながってはいないか大いに心配です。
 医師法には、正当な理由なく診療を断ってはならないことが定められています。(医師法第19条:診療に従事する医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない)
 まずは「預かり金」の現状を正確に把握し、医師法との整合性が崩れていないか、早急に徴させべきと、県に申し入れを行う予定です。
 「医は算術にあらず、仁術なり」この原則を再確認したいと思います。
<参考>東大付属病院の入院「預かり金」
保険診療10万円
自費診療美容形成10万円〜80万円
正常娩50万円
生体肝移植1500万円
上記以外の
医療保険未加入
自費診療
50万円