茨城の岐路:’09夏決戦 知事選 長塚氏、出馬表明「しがらみない県政を」
毎日新聞地方版(2009/8/7)
 8月30日投開票の知事選で、アテネ五輪自転車競技銀メダリストの長塚智広氏(30)が水戸市内で会見し、無所属での立候補を表明した。政党の推薦は受けない。「しがらみ」のない県政運営を訴え、茨城空港や霞ケ浦導水事業の凍結を掲げている。知事選は当初、5選を目指す橋本昌知事(63)と自民党推薦の元国土交通省事務次官の小幡政人氏(64)の保守分裂による事実上の一騎打ちの構図とみられていたが、同日までに現新6人が立候補を表明。47年の6人に並ぶ最多出馬の見通しとなった。長塚氏が若さと知名度で無党派層の受け皿となる可能性もあり、混戦模様を呈してきた。
 長塚氏は出馬の動機について「候補者を見て代わり映えがしない。保守分裂と言われているが、結局は有力者が変わっていない」と説明。政権公約では行財政改革を柱に、公共事業削減や2期8年を上限とする知事の多選禁止条例制定などを訴えている。また、競輪選手らしく「自転車で県内全部をごあいさつしたい」と述べた。
(後略)

 「衆院選と同日選挙の知事選挙の話題が、県議会議員のブログにないのはおかしい」との、ご指摘を受けました。全くその通りです。県知事選の告示は8月13日、もう3日後には選挙戦がスタートします。遅ればせながら、知事選への見解なども示していきたいと思います。
 その第一弾は、新人の長塚氏のマニフェストについての検証です。若い力の台頭を期待する茨城県民にとっても、長塚氏のような人材の登場は嬉しい限りです。
 しかし、長塚氏の公約は大変残念ながら“勉強不足”としか言いようがありません。民主党の某衆院議員候補が、自分の選挙を有利にしようと担ぎ出したものともっぱらのウワサですが、地方自治の基本は勉強してもらわないと困ります。
 ざっと長塚氏のマニフェストを見てみると、様々な矛盾点があります。財源も明確ではありませんが、今回は、「2期8年を上限とする県知事の多選禁止条例を制定します」との“多選禁止条例”について考察を加えてみます。
 そもそも“多選禁止条例”は、全国でも一例の施行されていない事実を長塚氏はご存じなのでしょうか。たしかに、神奈川県では松沢知事の強い意志で“多選禁止条例”がつくられました。しかし、実際に“施行”はされていないのです。
 その理由は、条例で多選禁止を定めることが、その前提となる法律の制定を必要とするからです。多選の制限は、その在任期間の制限であり、任期(1期4年間)と同じように、地方公共団体の組織及び運営に係わる基本的な重要事項です。したがって、制度化する場合は、地方自治法などの法律にその根拠を置くことが憲法上不可欠であるとされています。したがって、国の法律に規定されない“多選禁止条例”を茨城県が制定すれば、それ自体が法律に抵触するという違法状態になってしまいます。
 このような考え方から、神奈川県では“多選禁止条例”を施行していないのです。
 一方、埼玉県や横浜市では、“多選自粛条例”を制定しています。これは「連続して3期を超えて在任しないよう努めるものとする」と、多選を禁止するのではなく努力するよう求めた条例です。努力ですから、実際に4選出馬しても罰則はありません。
 「2期8年を上限とする県知事の多選禁止条例を制定」ことは、明らかに現行法の体系では無理ということになります。これが、地方自治の基本、法律の基本と言わざるを得ないのです。それを可能とするのは、知事の力ではなく、国権の最高機関である国会が法律を改正することが必要です。