「生活を守り抜く」政治を貫き、再出発期す。
参考写真 8月30日に投開票された衆議院総選挙の結果は、私ども公明党にとって大変厳しいものとなりました。民主党は、単独過半数を大きく上回る308議席を獲得し、自民党は改選前議席から181減の119議席、また改選前31議席だった公明党は候補を立てた8小選挙区で敗れ、比例区で800万票以上を戴きましたが21議席へと後退しました。
 とりわけ、太田代表、北側幹事長の議席を失ったことは痛恨の極みです。私たちは、今回の民意を真摯に受け止め、党全体で議論を重ね、早急に態勢を立て直していく決意です。公明党に熱い支持を寄せてくださった有権者の皆さま、党員・支持者の皆さま、献身的なご支援を寄せていただいた創価学会の皆さまに対し、心から感謝とお礼を申し上げます。
 2007年末からの世界経済危機による国内経済や雇用の不安に対して、政府・与党は、切れ目ない対策を打ち出し、何とか景気回復の入り口が見えるに至りました。しかし、こうした「実績」は「政権交代」の大波の前に有権者に十分浸透せず、劣勢を巻き返すことができませんでした。
 今回の与党敗北は、自民長期政権ゆえの「制度疲労」的現象に伴う支持離れもあります。また、近年表面化した「官の失敗」もあることは否定できません。膨大な年金記録漏れに象徴される行政の失敗は、与党への不信感を高めたことは否めません。また、連立与党の中で、公明党本来の立ち位置である「庶民の生活を守る党」とのイメージが希薄化してしまったことも、敗北の要因の一つです。
 さらに、定数1という小選挙区制度特有の問題点が浮き彫りになったと思います。「風」の影響によって、総選挙のたびに大政党が大勝と大敗を繰り返していては、政治の安定や継続性は損なわれます。得票率と議席率の隔たりが大きく、有権者の選択肢を狭める現在の衆議院の選挙制度について議論が必要かもしれません。
 政権交代が現実のものとなった現在、改めて民主党のマニフェストへの不安が高まってます。
 特に、高速道路料金の無料化、子ども手当、農家への戸別所得補償など、過度なバラマキは、財政規律を破壊してしまいます。補正予算の凍結公約も景気回復を妨げることは確実です。外交・安全保障面でも懸念があります。日米関係を基軸に戦後築いてきた国際社会の中での日本の安全が揺らぐ恐れもあります。民主党は、これまで顕著だった党利党略や選挙偏重ではなく、将来世代が安心できる国づくりに全力を挙げるべきです。
民主党新政権の5つの緊急課題
写真素材 PIXTA (C)hanenoki すでに、来年度の予算編成の重要な時期に差し掛かっています。県議会では、10月議会に向けて景気対策に係わる補正予算が上程されることになっています。民主党新政権の最大の課題は、政策実現に必要な財源を確保できるか、そもそも来年度の予算を組めるのかと言うことです。
 民主党がマニフェストで実施時期を明示した主要政策だけで2010年度は7.1兆円の財源が必要になります。はたして、政府予算をどこまで組み香えることができるか、その具体的な姿は全く明確になっていません。
 民主党は、新設する首相直属の「国家戦略局」で、予算の大枠を決定します。同じく新設する「行政刷新会議」で既存事業を洗い直し、財源をひねり出す考えです。
 まず、やり玉に挙がるのが麻生内閣が経済対策として組んだ約14兆円の2009年度補正予算です。「国立メディア芸術総合センター」(いわゆるアニメの殿堂)の建設中止など、中身の精査で3兆円程度を浮かせ、2010年度予算に充当するといわれています。
 しかし、すでに支出を決定した予算もあります。また複数年度にわたり支出する「基金」は、すでに都道府県や市町村で議会承認を済ませ、正式に立ち上げています。茨城県では700億円、県内市町村では300億円の税源が、地方の活性化や雇用や中小企業支援、公共事業の充実などに当てられることになっています。
 一部報道では、すでにこうした地方分の経済対策補正予算については、執行を認めると言われています。すでに、財源に対する民主党の選挙中の主張はブレ始めていると言わざるを得ません。
 2010年度予算の編成作業では、一般会計と特別会計を合わせた総予算207兆円(09年度ベース)のうち70兆円について、全面的に見直すとしています。大幅な補助金削減や公共事業の中止がひつようとなります。
 しかし、70兆円のうち49兆円を占める補助金の中身は、社会保障や地方交付税交付金などで、絶対に削れない内容です。生活に欠かせない公共事業の削減は、地方経済をさらに疲弊さる懸念があります。
 朝日新聞(2009/8/31付け)で、野村証券金融経済研究所の木内登英チーフエコノミストは「景気対策の反動が出る09年度下期に公共投資を削減すれば、景気の急落は避けられない」と指摘しています。09年度補正予算を3兆円ほど削減すれば、成長率を0.4%幅押し下げると試算されています。民主党は「子ども手当」などで家計を潤して内需を拡大すると主張していますが、それには大きなタイムラグが生じます。今の経済回復の足並みを止めてしまえば、景気は二段底に落ち込む恐れがあります。
国民の49%は「月2万6000円のことも手当」に反対
 二つ目の課題は、「政権交代」をスローガンに衆院選に勝利した民主党ですが、その政策を国民は両手を挙げて賛成しているわけではないと言うことです。
 9月2日付の朝日新聞は世論調査の結果を掲載し、「朝日新聞の全国世論調査で、民主党の新政権への期待が高い一方で、具体的な政策になると依然厳しい目が注がれていることがわかった。1人月2万6千円の子ども手当を支給して所得税の配偶者控除などを廃止することに賛成は31%で、反対は49%。衆院選比例区で民主に投票した人の中でも反対が37%(賛成43%)いた。他の政党に投票した人では反対がおおむね5〜6割を占めた。高速道路を無料化して建設の借金は税金で返済することについては、賛成は20%にとどまり、反対が65%とかなり評判が悪い。民主党に投票した人でも56%が反対だ。この二つの政策について、総選挙の公示直前に公約としての評価を聞いた際には、子ども手当を「評価する」33%、「評価しない」55%、高速道路無料化を「評価する」23%、「評価しない」67%だった。選挙戦を通じてのアピールにもかかわらず、有権者に理解されていないことがうかがわれる」と報道しました。
 民主党新政権の目玉政策「子ども手当」。中学校を卒業するまで1人当たり月2万6千円支給します。ただ、半額の1万3000円を支給する2010年度でも、2兆7千億円の財源が必要となります。現行の児童手当の3倍弱にのぼるため、財源確保が深刻な課題です。
 民主党は、所得税の配偶者控除と扶養控除の廃止などで財源を確保する考えですが、負担増となる子どものいない専業主婦世帯などからは強い反発がでています。また、税制改正は、早くても2011年からしか実行できません。この時間差をどのように埋めるのか、その説明は未だにありません。
民主党の危機管理能力が問われる新型インフルエンザ対策
 民主党政権が直面する3つ目の課題は、新型インフルエンザ対策です。厚生労働省の推計によると、9月下旬から10月上旬に第一波のピークを迎え、1日に約76万人の患者が発生する可能性があり、医療機関での患者の受け入れ態勢を整える必要に迫られています。
 一番の問題はワクチンの確保策です。現状では、年内に国内で生産できるワクチンは1300万〜1700万人分で、厚労省が必要とみる5300万人には遠く及びません。ワクチンを輸入するかどうか、また、だれから接種するのか優先順位を早急に決定しなくてはなりません。地方においては、治療薬のタミフルやリレンザの確保も充分ではありません。重症者の入院体制や人工呼吸器の確保などの課題も残っています。新型インフルエンザは、全国満遍なく発生するものではありません。地域により集中的に発生する恐れがあり、国の調整や支援が不可欠です。
民主党政権で雇用対策が出来るのか?派遣労働全面禁止で、雇用問題はさらに深刻化する懸念
 4つ目の緊急課題は雇用状況の改善です。7月の完全失業率は、5.7%と過去最悪を記録しました。失業手当が切れた人や、非正社員ら雇用保険に入れない人たちの再就職支援をする「第2のセーフーティネット」の構築が喫緊の課題です。
 自公政権は補正予算で、3年間の時限措置として、職業訓練中に月10万円程度の生活費を支給する仕組みを予算化し、この夏から制度をスタートさせました。民主党は、当面この制度を引き継ぎますが、恒久的な制度として「求職者支援法」を国会に提出し、2011年度から実施する方針です。
 また、労働者派遣法の改正問題も深刻です。民主党は社民、国民新党とまとめた共通政策にも日雇い派遣の全面禁止や、製造業派遣の原則禁止などを盛り込んでします。しかし、派遣労働を全面的に禁止すると「むしろ雇用機会を失わせる」ことになり、民主党内からも批判が出ています。
地方に活力を与える生活に密着した公共投資
 5つ目の課題が地方の公共事業の取り扱いです。民主党は大型公共事業の典型として「八ッ場ダム」の工事中止をうたっています。しかし、地元からは反対と落胆の声が上がっています。読売新聞(2009/9/1付け)の記事によると、高山欣也・長野原町長は、「全国の選挙結果に落胆した。お先真っ暗」「ダム湖による観光振興がなければ、再建にならない」と反発していると伝えています。さらに、水没予定地の川原湯温泉街の樋田省三観光協会長が「国民の審判なので受け入れるしかないが、我々はダム建設と生活再建を、政党とではなく、国と“契約”したのに……」と落胆の色を隠していません。こうした地方の声を民主党新政権は、真摯に受け入れる必要があります。
 また、ガソリンなどの暫定税率の廃止や高速道路の無料化も、地方に深刻な影響を与えます。茨城県内では、圏央道の整備がどうなるのか、東関東道水戸線整備はどうなるのか、といった不安の声が既に出始めています。日立市内では渋滞対策が重点課題でもあり、国道6号日立バイパスの南伸、大和田4車線拡幅など、一刻も早い整備促進が望まれていただけに、新政権の対応に注目が集まっています。