「鈴木外務委員長」に反対
公明新聞(2009/9/19)
選任手続きめぐる民主の強行姿勢を批判
衆院本会議で自民、公明など
18日午前の衆院議院運営委員会理事会で、同日午後の本会議で選任される常任委員長人事のうち、民主党が外務委員長にあっせん収賄罪などで上告中の鈴木宗男氏を推薦したことについて、自民、公明両党は反対を表明した。これに対し、民主党が本会議での選任手続きで、強行姿勢を示したため理事会が紛糾し、本会議の開催が1時間10分遅れた。
理事会の席上、自公両党は鈴木氏への反対理由について「刑事被告人であり、2002年に議員辞職勧告決議が全会一致で可決されている」(公明党の遠藤乙彦理事)と強調。常任委員長人事は、慣例では選挙手続きを省略して議長が一括して指名するが、反対の意思を明確に示すため外務委員長人事を起立採決にするよう求めた。
ところが、民主党理事は全会一致を意味する「異議なし採決」ですべての人事を行う意向を示したため、自公両党理事は理事会を退席。共産党も同調した。この後、自公理事の申し入れを受けた横路孝弘議長は外務委員長人事を分離して採決するよう民主党を説得。民主党が受け入れた。
本会議に先立ち開かれた公明党の代議士会で、漆原良夫国会対策委員長は「上告棄却されれば即座に収監される人を“異議なし”と認めるのは国会の権威にもとる」と指摘。民主党の強行姿勢についても「賛否の意思を表明する機会が奪われることがあってはならない」と批判した。

参考写真 まさに言語道断、刑事被告人が国の外交・安全保障を担う衆院外務委員会のトップに立つとは、民主党政権の奢りを実感します。鈴木宗男議員は、受託収賄やあっせん収賄など4つの罪で1審、2審とも有罪の判決を受け、現在最高裁で係争中の身。最高裁で2審と同じ懲役2年の判決が確定すると、公民権が失効し、同時に衆院議員としての身分を失うことになる人物です。
 2002年、国後島の「日本人とロシア人の友好の家」(いわゆるムネオハウス)建設を巡っての様々な疑惑が発覚し、国会への参考人招致や国会喚問を受けました。その際に、今は連立を組む社民党の辻元清美議員から「あなたは、疑惑のデパート言われてますけど疑惑の総合商社ですよ」と有名な言葉を浴びせかけられた張本人です。02年6月にはあっせん収賄罪で逮捕され、衆議院本会議で議員辞職勧告決議が可決されました。もちろん辞職勧告には、民主党も社民党も賛成しての全会一致でした。受託収賄罪や議院証言法や政治資金規正法違反などの罪でも追起訴されています。
 2004年11月、東京地裁での第1審で懲役2年、追徴金1,100万円の実刑判決が下されました。鈴木宗男は、一連の事件を全て否定した上で「国策捜査」と批判し、即日控訴しました。
 2008年2月26日に東京高裁においても、控訴棄却となり、即日最高裁判所に対し上告し、現在に至っています。
 最高裁で禁錮以上の刑が確定しすると国会議員は失職します。あっせん収賄、受託収賄罪で実刑が確定すれば、服役後も5年間は公民権が停止され、議員に立候補することもできなくなります。
 民主党ななぜこの時期に鈴木宗男を外務委員長に抜擢したのか?誰がこのような人事を進めたのか?疑問は深まるばかりです。一つ言えることは、こうした国民を愚弄した国会運営には、賢なる国民の審判が必ず降りるということです。
国会人事―鈴木委員長への疑問
朝日新聞社説(2009/9/19)
 総選挙を経て、衆院の常任委員会の新しい構成が決まった。民主党がおもだった委員長ポストをずらりと占め、巨大議席の威力をみせつけた。中にひとつ、異様な人事があった。鈴木宗男議員の、外務委員長への就任である。
 鈴木氏はかつて自民党に所属し、外務政務次官や北海道開発庁長官、内閣官房副長官などをつとめたことのあるベテラン議員だ。02年、あっせん収賄事件で逮捕され、一審で懲役2年の実刑、二審で控訴棄却の判決を受け、最高裁に上告している。
 疑惑が発覚して離党し、逮捕されたあと、新党大地をつくって代表として衆院議員に返り咲き、さきの総選挙でも北海道比例区で当選した。民主党と選挙協力し、民主党・無所属クラブという会派に加わっている。今回の委員長就任は、300議席を超すその巨大会派の意向によって可能になった。
 だが、最高裁で実刑判決が確定すれば、そのまま刑務所に収監される立場である。議員も失職する。そうした可能性のある人物が国会の要職にふさわしいとは思えない。
 自民党などの野党が「国会の歴史で刑事被告人が役員についた例がない」と反対したのは当然だろう。
 二審の東京高裁が認定し、鈴木氏が争っているのは次のような事実だ。
 北海道開発庁長官だったころ、建設業者から600万円のわいろを受け取った。製材会社から林野庁への働きかけを頼まれ、500万円のわいろを受け取った。衆院に証人喚問された際に偽証した――。
 もちろん、被告は有罪が確定するまで無罪と推定されるのが刑事司法の大原則だ。加えて鈴木氏は逮捕されて以来、一貫して無罪を主張し、有罪判決に対して「国策捜査をした検察と裁判所が一体となった、司法の危機だ」と反発してきた。
 そんな鈴木氏が有権者の支持を得て議員として活動するのはむろん自由だ。だが、この人事を押し通した民主党の見識を疑う。
 来年の参院選挙に向け、新党大地との連携を深めたいとの思惑かもしれない。だが、少なくとも無罪が確定するまでこうした人事は控えるのが筋ではなかったか。民主党としてはむろんのこと、国会の倫理観が問われる。
 鈴木氏は自民党時代、外務省とのかかわりが深く、人事や政策にも強い影響力を持ったといわれる。小泉政権では当時の田中真紀子外相らと激しい確執を繰り広げ、衆院議院運営委員長を辞任したこともあった。
 そうした過去を思えば、なおさら今回の人事への疑問は膨らむ。これが政権交代で目指した「変化」なのか。党首としての鳩山由紀夫首相に説明を求めたい。国会のことは小沢一郎幹事長に任せたという釈明は通用しない。