参考写真 10月16日、茨城県は不適正経理に関する全庁検査の結果を公表しました。井手よしひろ県議は、10月9日の橋本県知事への代表質問で、調査結果の早期公表を強く求めていました。
 昨年10月から、国の会計検査院は、土木部と農林水産部の補助金の経理処理について会計検査を行ってました。その課程で、不適正な経理処理が数多く指摘されました。この調査に連携して、県も総務部長を総括責任者とした庁内の調査チームを作り、本庁と出先の全ての部門について、需用費(消耗品、印刷製本費)、賃金、旅費について、庁内の伝票と取引先の伝票との突合検査を行いました。
 その結果、不適正な経理処理の総合計は1661件、1億7,000万円に上ることが判明しました。私的流用や使途不明金はなかったと報告してます。調査対象の429所属の内、76所属で不適正な経理処理が確認されています。不適正処理は、そのほとんど(99.9%)が出先機関で行われており、内部牽制体制の不備が最大の原因と考察されます。
 内容別では、物品を購入したこととして支払いを完了したものの実際に購入せず業者に代金を預けていた事例(預け金)が565件で6,283万円。契約と異なる物品を差し替えていて納品させていた事例(差替え)が566件で3,890万円、後日異なる物品を購入するとして一括払いしていた事例(一括払い)が530機関で6,831万円、合計32機関3,142万円となっています。
 部門別では、土木部が最も多く924件1億1,878万円、次に農林水産部が532件3,958万円で、この両部で全体の93%を占めています。
 また、「預け金」の内4件68万円余りが業者に預けたままとなっていました(今回の検査で発覚したため業者から変換済み)。クオカード、ビール券、図書券などの金券を購入していた事例も7件34万円余りありました。
 さらに、年度を跨いだ購入事例が2,391件2億4800万円もありました。厳格に言えば、これも不適正な経理処理の一類型であり、その総額は4052件4億1800万円に上るともいえます。
 県では、こうした不適正な経理処理で5100万円の損害が出たと試算しており、各部門の管理監督者を中心に職員から損害金の返済を求めることにしています。損害金は、「預け金」などのより取得された物品の金額と適正な経理処理(入札等)を行った場合の差額を10.5%とし、利息相当額や国庫金返還加算金、調査や報告に要した費用を加えて算出しました。
 また、不適正経理処理の責任を明確にするために、監督責任者を中心として処分を行います。知事、副知事などの特別職にあってもその責任を明らかにする予定です。
 再発防止策としては、1.職員のコンプライアンスの再徹底、2.物品調達・チェック体制の改善、3.予算執行システムの見直し、4.内部牽制(指導・検査、監査体制)の充実などを行うとしています。
 今回の不適正経理問題で、県の公金の取り扱いに大きな問題があることがはっきりしました。使途不明金や私的流用はなかったとの結論ですが、全て内部調査の結果であり、県民の疑念が全て晴れたと言うことではありません。業者の伝票との突合検査も、伝票さえそろっていれば、不正を見抜くことは出来ません。県は、信頼回復に大きな責任を負うことになりました。
私的流用34万円 県不正経理
朝日新聞(2009/10/17)
 県の不正経理に公金を私的に使ったケースが含まれ、旅行券やビール券を買うなどの金券購入だけで計34万3250円にのぼることが16日、明らかになった。県が同日、不正経理の概要を発表した中に含まれていた。県によると、不正経理の総額は年度繰り越し分を含めると4億1800万円。実際の金や帳簿の管理は業者任せで、請求書の確認もしていないなど、ずさんな公金管理の実態が浮き彫りになっている。
 書類が残っている02〜07年度の国庫補助事業と県事業の需用費や旅費などについて、県が昨年11月から全庁を対象に県の支出書と業者の元帳を付き合わせて調査していた。その結果、不正経理は、年度を超えないよう納入日の改ざんを行った2391件(2億4800万円)を加えると4億1800万円に上った。
 やり方は業者に公金をいったんプールしておく「預け」のほか「一括払い」「差し替え」など。いずれも会計の支出名目と実際に納入された物品が異なっていた。ある土木事務所では、04年9〜11月にファイルやボールペン、修正液などの文具を10回に分けて54万円分買ったと装って05年4月に代金を支払ったが、実際には同年6〜12月にデジカメ、ハードディスク付きビデオカメラ、パソコン周辺機器を同額分納品させていた。調査では、納品検査を証明するはんこまで押して偽造した例もあったという。
 公金を業者に預ける場合、県としても帳簿を作っていないと預けた金額がつかめないが、県は「裏帳簿などは見つかっていない」「業者にほとんどお任せだったと聞いている」と説明している。
 県が明らかにした中で私的流用分は、退職者に贈る旅行券5万円分を業者に用意させ、一括払いの偽請求書で処理▽公務中の交通事故の被害者にビール券3万5千円分を一括払いの偽請求書で購入し提供▽用地買収交渉時に移転登記をとりまとめた2人に協力費として贈った2万5千円の図書券代を別の請求書に潜り込ませた――など。県は「職員が積み立てた親交会費から工面するはずが、偽請求書で気づかず処理した」などと説明し、「自分のために使ったのではない」と意図的な私的流用を否定している。
 こうした不正経理による県費の損害額を、県は「入札を実行した場合との購入費の差額の平均」などを計算して5100万円と算定。関係部局の管理監督者のほか、02年度以降の退職者にも負担を求めて返還させる方針。関係職員の処分も行うが、業者については処分しない意向で、今後同様の行為に加担した場合は処分対象として検討する。