扶養・配偶者控除:住民税も廃止検討
毎日新聞(2009/10/21)
政府は20日、子ども手当創設に伴う扶養控除と配偶者控除の廃止について、住民税も廃止対象に含めて検討することを明らかにした。従来は所得税のみの控除廃止を検討してきたが、同日の政府税制調査会後の会見で小川淳也総務政務官が「住民税だけの控除を残すのは徴税技術上、難しい」と述べた。
住民税の両控除は課税対象額から各33万円を差し引く制度。住民税率は一律10%で、両控除が廃止されれば、所得税と合わせて、年収700万円の夫婦・子ども2人(1人は16〜23歳未満で廃止対象外の特定扶養控除に該当)の世帯では、所得税8・5万円、住民税6・6万円と合計15万円の増税になる。
政府は中学生以下の子ども1人あたり年31・2万円を支給する子ども手当の創設を計画しており、10年度から実施(10年度は半額)する予定。控除廃止は10年度以降で検討している。
「やっぱり来たか」これが素直な感想です。住民税は所得税と一括して源泉徴収で徴税され、地方自治体に配分されます。したがって、国税の配偶者控除、扶養控除が無くなって住民税だけに残るという、今までの民主党のマニフェストに違和感を感じていました。小川政務官の発言は至極もっともな発言で、これが民主党の本来のねらいならば、子供のいない家庭には大増税の時代が来ます。
井手よしひろ県議は、すでに昨年10月、そのシミュレーションをこのブログで提示しています。(参考:民主党の子ども手当て導入で大増税:その金額を試算)
多くの方から、民主党は住民税は対象にしないといっているのに、なぜこんな誤解を招くような資産を掲載するのかとお叱りをいただきましたが、心配が現実のものになる可能性が出てきました。
さらに、最悪のシナリオとして特定扶養控除も廃止される可能性もあると考えています。来年の参院選前に、なんとしても子ども手当てや高校授業料の無料化、高速道路無料化など、国民へのバラマキ政策を出来るだけ実施する。当然、国は大変な財源不足に陥るため、年明け(2011年1月)から、大増税に踏み込む。これが、民主党政権のシナリオではないかと危惧しています。
井手県議の試算では、700万円の年収(額面)の夫婦子供2人 配偶者は控除対象(給与年収103万円以内)、子どもは特定扶養(16歳〜22歳)の世帯で、健康保険控除等他の控除を50万円で試算すると、増税額は37万9000円になります。子供手当の対象は15歳以下ですので、マルマル大増税です。
子供がいない家庭でも10万9000円の増税となってしまいます。 民主党が、廃止すると言っている配偶者控除・扶養控除は、所得税で38万円、住民税で33万円。特定扶養控除(16歳〜22歳)は、所得税で63万円、住民税で45万円もあります。これらを全部廃止した場合、年収別にみると増税額は、下記のような試算となります。
給与 年収 | 現 在 | 民主案 (配偶者・扶養控除廃止) | 増税額 単位円 | ||||
所得税 | 住民税 | 合計 | 所得税 | 住民税 | 合計 | ||
500万円 | 47,000 | 121,000 | 168,000 | 160,500 | 264,500 | 425,000 | 257,000 |
600万円 | 87,000 | 211,000 | 298,000 | 248,500 | 344,500 | 593,000 | 295,000 |
700万円 | 160,500 | 305,500 | 466,000 | 416,500 | 428,500 | 845,000 | 379,000 |
800万円 | 268,500 | 395,500 | 664,000 | 596,500 | 518,500 | 1,115,000 | 451,000 |
当然、子どもがない家庭は、民主党案では「配偶者控除」廃止の直撃を受けます。年収500万円の家庭では、年間7万1000円の増税となります。
給与 年収 | 所得・住民 税合計 | 民主案 税合計 | 増税額 |
300万円 | 108,000 | 162,500 | 54,500 |
400万円 | 219,000 | 273,500 | 54,500 |
500万円 | 354,000 | 425,000 | 71,000 |
600万円 | 514,000 | 593,000 | 79,000 |
700万円 | 736,000 | 845,000 | 109,000 |
800万円 | 1,006,000 | 1,115,000 | 109,000 |
一方、子ども手当の財源を地方にも負担させるとの意見が出始めています。
自民・公明が進めた児童手当は、その実現や拡充について、地方負担や企業負担も盛り込んだ上で、慎重に財源を確保してきました。確かに、民主党の子ども手当の比べると、金額や対象年齢など見劣りがすることは否めませんが、逆にいうとこうした協議をふまえながら着実に進めてきたと言えます。子ども手当の混乱は、日本全体の混乱の導火線にならなければと、心配がつのります。
自民・公明が進めた児童手当は、その実現や拡充について、地方負担や企業負担も盛り込んだ上で、慎重に財源を確保してきました。確かに、民主党の子ども手当の比べると、金額や対象年齢など見劣りがすることは否めませんが、逆にいうとこうした協議をふまえながら着実に進めてきたと言えます。子ども手当の混乱は、日本全体の混乱の導火線にならなければと、心配がつのります。
国か地方か?子ども手当 官房長官はなお地方負担に含み
産経新聞(2009/10/20)
鳩山由紀夫首相は20日夜、横浜市内で演説し、「子ども手当」の財源について「全額国が負担するのは当たり前だ。財務省の発想で国の財政も厳しいから一部を地域に持たせる。それはあまりにも残酷な話だ。首相としてこの方向で必ずまとめる」と述べ、全額国費で賄う考えを強調した。一部を地方自治体に負担させるかをめぐり、閣内の意見が割れたことを受け、収拾を図った。
ただ、平野博文官房長官は20日夕の記者会見で「(首相)発言は重いが、その中でも首相の思いも含めて具体案を決めなければいけない」と述べ、地方の一部負担に含みを残した。
子ども手当の2・1兆円は、平成22年度予算を92兆円以下に絞り込むうえで大きな壁となっており、厚生労働省は概算要求で「事業主や地方自治体の負担は予算編成過程において検討する」と明記した。
これに対し、原口一博総務相は「国が決めたから(自治体も)負担するのは当たり前というやり方は分権改革を言う資格を問われる」と発言。橋下徹大阪府知事は「民主党が勝手に決めたことに地方も金を出せというのは独裁政治、共産国家。『地方主権』は偽装だ」と反発していた。