国会法改正:官僚答弁禁止、臨時国会提出へ 小沢氏主導、前倒し
毎日新聞(2009/10/14)
 民主党の小沢一郎幹事長は13日、党本部で記者会見し、国会改革の一環として、官僚の国会答弁を禁止する国会法改正などの関連法案を、今月26日召集予定の臨時国会に提出する考えを明らかにした。
 当初は来年の通常国会に出す方向だったが、小沢氏の主導で前倒しする。自民党など野党にも早期成立を呼び掛ける方針だ。
 小沢氏は「我々は脱官僚支配を最大のセールスポイントとして、総選挙で議席を与えてもらった。まず国会そのものが官僚支配から脱しなければならない」と強調し、「できるだけ早く臨時国会に(法案を)提案し、(来年の)通常国会からは議員同士のディベートの活性化を実現したい」と語った。
 小沢氏はインターネットによる選挙運動を解禁するための公職選挙法改正や、政治資金規正法改正についても「それなりに時間をかけて議論して成案を得たい」と述べ、来年の通常国会での法改正に意欲を示した。

官僚答弁認める? 小沢氏、臨時国会は容認 「慣らし運転なので…」
産経新聞(2009/10/26)
 民主党の小沢一郎幹事長は26日、党本部で記者会見し、官僚による国会答弁について「今国会は法案も間に合わない。慣らし運転なので、できる限りは官僚に力を借りず、大臣や副大臣が答弁してもらいたいと(政府側に)努力をお願いしている」と述べ、同日召集の臨時国会では容認せざるを得ないとの考えを示した。
 小沢氏はこれまで、政治家同士の国会論戦を活性化させる観点から、「脱官僚支配は国会から始めたい」として、官僚答弁の禁止のための国会法改正に意欲を示してきた。
 ただ、民主党など与党が政府も国会も掌握したことから、法改正をしなくても官僚に答弁させないことは運用上可能だ。
 そこで臨時国会での対応が注目されていたが、衆参両院の議院運営委員会は26日の理事会で、政府側の要請を受け、官僚である内閣法制局長官、公正取引委員会委員長らを従来通り、「政府特別補佐人」として国会で答弁させることを認めた。
 臨時国会で、国会の各委員会は他の官僚が国会で答弁できる「政府参考人」も認める見通しだ。
 衆院選で圧勝し、政府も国会も意のままになったにもかかわらず、官僚答弁を続けることについて小沢氏は「制度が法的に整備されていないので今国会は(官僚が)出席することはルール違反ではない。今後立法作業に入る」と語った。

参考写真 鳩山政権は、「官僚主導」から「政治主導」の政治をスローガンに掲げ、数々の新たな動きを起こしています。
 その「政治主導」の一つとして、民主党の小沢幹事長は、国会法を改正して官僚の答弁を禁止する法案を、この臨時国会に提出しようとしていました。現実には、臨時国会は「慣らし運転」として、先送りになったようですが....
 いうまでもなく、国会での審議は政治家同士で行われることは、大変に意義のあることです。しかし、官僚の答弁を法律で禁止してまで封じ込めようとする意図が、どこにあるのかが問題です。
 これまで、議員が総理や大臣に答弁を求めても、自分で答弁をしないで官僚に答弁させるケースが、多く見られました。この点については指摘されるとおり決して好ましいものではありません。しかし、これは本来自ら答弁すべきところを官僚に答弁を「丸投げ」した総理や大臣の問題であって、答弁を命じられた官僚の問題ではないことを確認しなくてはいけません。従って「政治主導」の観点から言えば、官僚に答弁を「丸投げ」する総理や大臣の行為を禁止すれば済むことであって、官僚の発言を禁止するのは、全くの的外れです。
 小沢幹事長の本音は、内閣法制局長官の発言を法律上禁止したいのです。
 「国連決議さえあれば、日本の自衛隊がアフガンに上陸し、武力行使をしても憲法九条に違反しない」との小沢論文を憶えておられるでしょうか。この小沢見解には、歴代内閣法制局長官は、頑として首をタテに振りませんでした。
 それならば、内閣法制局長官の国会答弁を禁止してしまえ、というのが小沢さんの本音だと私は推測します。
 内閣法制局長官の答弁が禁止された後の憲法解釈は、小沢さんの息のかかった総理や官房長官に委ねられることになります。これでは時の権力による憲法の解釈改憲が思いのままになってしまいます。
 憲法解釈が、時の政権の自由になる・・・・・こんな危うい日本になって本当に良いのでしょうか。
 日本には、残念ながら、憲法裁判所がありません。権力の暴走を一体誰が止めるのでしょうか。不十分ながら、内閣法制局長官が「憲法の番人」として、その任に当たって来たのです。
 官僚の答弁禁止法案とは、憲法裁判所のない我が国においては、内閣法制局長官の「憲法の番人」としての役割を奪う法律に他なりません。
内閣法制局とは(出典:フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』)
 内閣法制局は、内閣(政府)が国会に提出する新規法案を、閣議決定に先立って現行法の見地から問題がないかを審査することから「行政府における法の番人」といわれる。審査の実務を担当する課長級分掌職の内閣法制局参事官は各省から派遣された将来有望な人材で構成されるが、そのまま法制局に残って幹部として昇格する者も少なくない。
 内閣法制局は、内閣の下で法制についての事務を行う機関であり、その長は、内閣が任命する内閣法制局長官である。また内閣法に言うところの主任の大臣は、内閣総理大臣とされている。