肝炎患者・被爆者「立法の約束守って」
毎日新聞(2009/10/28)
「新政権は約束を守って」。26日から始まった臨時国会に、肝炎患者や被爆者が不安を募らせている。新政権が支援や救済の立法を約束していながら、臨時国会では上程の見通しが立っていないからだ。民主党が議員立法の原則禁止を掲げるため、政府提出以外の法案を取りまとめる場すらない。鳩山由紀夫首相が所信表明演説で掲げた「命を大切にする政治」の実現を求める声は国会に届くのか。
薬害肝炎原告団の山口美智子代表(53)は26日の鳩山首相の演説を傍聴し、肝炎問題について言及がないことに失望した。「命に直結する政策を最優先してくれないのか」。27日、厚生労働省で山井和則政務官に長妻昭厚労相との面会を要望し「私たちはもう待てません」と訴えた。
肝炎対策の法整備は、与野党とも必要性を認めている。前回と前々回の国会では、与野党それぞれが法案を提出したが、審議されないまま廃案に。鳩山首相は6月、肝炎患者と面談し政権獲得後の法制定を確約している。
薬害肝炎弁護団などによると、政権交代後、元原告の福田衣里子衆院議員らが旧与野党法案の一本化を検討。基本法の性格が強い旧与党案をベースに、国の責任を明記する形の原案をまとめた。内閣法制局との調整も済み、野党側も協力の意向を示しているが、過密日程などを理由に民主党の国会対策委員会が法案上程を認めていないという。「残るのは内容ではなく手続きの問題だけ」と鈴木利広弁護団長は指摘する。
国が19連敗している原爆症認定訴訟の解決もたなざらしにされている。麻生政権は8月、日本原水爆被害者団体協議会(被団協)と(1)議員立法による基金を設ける(2)厚労相と被団協、原告側の定期協議の場を設ける−−などとする確認書を交わした。だが立法化の議論は進まず、定期協議も開かれていない。
被団協の田中熙巳(てるみ)事務局長は23日、山井政務官に改めて解決を要請したが、政務官側から基金の金額や拠出先など具体案は出なかった。田中事務局長は「確認書締結後も原告が1人亡くなった。被爆者の早期救済をマニフェストに入れた民主党政権なら、すぐに動いてくれると思ったのに」と話している。弁護団の一人は「弱者救済の視点から、政府とは別に国会議員も政策を立案できる仕組みを整えるべきだ」と訴える。
10月27日、薬害肝炎訴訟原告団代表の山口美智子さん(右)と福田衣里子衆院議員は、山井和則厚生労働政務官と面談し、肝炎対策の基本法制の提出について要望しました。政権交代後、元原告の福田衣里子衆院議員(民主党)らが旧与野党法案の一本化を検討しました。基本法の性格が強い旧与党案をベースに、国の責任を明記する形の原案をまとめました。内閣法制局との調整も済み、民主党が国会に提出さえすれば、成立の方向性が見えています。しかし、民主党は、臨時国会の過密日程などを理由に法案上程を認めていません。
一方、原爆症認定訴訟の解決も全く前進がありません。8月に前麻生政権とかわした、議員立法による基金の設置、厚労相と被団協、原告側の定期協議の場の設置などの確認事項も履行されていません。
民主党は、政府と与党は一体不可分の性質であり、議員立法は原則として認めないという立場をとっています。こうした、頑なな態度も肝炎対策や原爆症対策が遅々として進まない一因になっています。
「命を大切にする政治」の実現ということばだけが先行する鳩山新政権に関係者のいらだちは高まっています。
(写真は10月30日、参院代表質問で肝炎対策・原爆症対策の具体的前進を求める公明党山口那津男代表)
一方、こうした新政権に政権運営に対して、10月30日の参院代表質問では、公明党の山口那津男は、議員立法による肝炎対策・原爆症対策法案の国会提出を強く主張しました。
(2009/11/2更新)
30日の公明党山口代表の代表質問を受けて、やっと民主党が重い腰をあげたようです。この臨時国会で議員提案として「肝炎対策基本法」が提出される見込みとなりました。11月2日、時事通信は以下のような記事を配信しました。
公明党山口代表の参院代表質問
議員立法による肝炎対策・原爆症対策について
議員立法による肝炎対策・原爆症対策について
今後、議員立法によって救済を急ぐべき課題として肝炎対策や原爆症対策があります。
肝炎対策について公明党は、自民党とともに肝炎対策基本法案を提出し、成立に向けて民主党案との調整を図ってきましたが、残念なことに先の衆院解散により廃案となりました。こうした命にかかわる問題は党派を超えて最優先で取り組むべきではないでしょうか。
また、原爆症対策についても公明党は、被爆者の立場に立った幅広い認定拡大を進めるとともに、全面解決に向けた訴訟の早期終結に取り組んできました。本年8月、前総理と関係団体との間で、集団訴訟の終結に関する確認書が結ばれましたが、そこに明記された、議員立法による被害者救済のための基金の創設は、まだ実現しておりません。
鳩山総理は、所信表明演説の中で「いのちを守り、国民生活を第一とした政治」を掲げながら、こうした肝炎対策や原爆症対策について、全く具体的な言及がありません。
肝炎患者の救済制度と原爆被害者救済のための基金創設にかかる立法措置について、政策決定は政府に一元化と言うのであれば政府の責任で行うべきであります。
政府として、できないというのであれば、議員立法による早期解決を目指すべきと考えますが、鳩山総理の明確な答弁を求めます。
肝炎対策について公明党は、自民党とともに肝炎対策基本法案を提出し、成立に向けて民主党案との調整を図ってきましたが、残念なことに先の衆院解散により廃案となりました。こうした命にかかわる問題は党派を超えて最優先で取り組むべきではないでしょうか。
また、原爆症対策についても公明党は、被爆者の立場に立った幅広い認定拡大を進めるとともに、全面解決に向けた訴訟の早期終結に取り組んできました。本年8月、前総理と関係団体との間で、集団訴訟の終結に関する確認書が結ばれましたが、そこに明記された、議員立法による被害者救済のための基金の創設は、まだ実現しておりません。
鳩山総理は、所信表明演説の中で「いのちを守り、国民生活を第一とした政治」を掲げながら、こうした肝炎対策や原爆症対策について、全く具体的な言及がありません。
肝炎患者の救済制度と原爆被害者救済のための基金創設にかかる立法措置について、政策決定は政府に一元化と言うのであれば政府の責任で行うべきであります。
政府として、できないというのであれば、議員立法による早期解決を目指すべきと考えますが、鳩山総理の明確な答弁を求めます。
(2009/11/2更新)
30日の公明党山口代表の代表質問を受けて、やっと民主党が重い腰をあげたようです。この臨時国会で議員提案として「肝炎対策基本法」が提出される見込みとなりました。11月2日、時事通信は以下のような記事を配信しました。
肝炎基本法案、今国会に提出=与野党が大詰め調整
時事通信(2009/11/2)
肝炎患者を広く救済するための肝炎対策基本法案が、今国会に提出され、会期内に成立する公算が2日、大きくなった。与野党の非公式な調整が進んだためだ。衆院厚生労働委員会の委員長提案とする方向だ。
基本法案は2007年11月、当時与党だった自民、公明両党が提出した法案がベースとなる。B型、C型肝炎患者への医療費助成拡充など肝炎対策を総合的に推進するのが目的で、国や自治体、医師らの責務を明記するととともに、厚生労働相に対して医療指針の策定を義務づける内容とする。
しかも、それを指摘されてもはぐらかし、他者に責任転嫁する無責任な姿勢には、あきれ返ってしまいます。
あれだけ長い準備期間があったにもかかわらず、民主党自身の発言をどうやって実現するか、という具体的・現実的な動きはなく、中身の乏しい行動・パフォーマンスのみ目立ちました。
民主党は、一体いつまで野党気分なのでしょうね。