憲法解釈「過去の法制局答弁にしばられず」官房長官
朝日新聞(2009年11月4日)
 平野博文官房長官は4日の記者会見で、鳩山政権が、政府の憲法解釈を国会で示してきた内閣法制局長官の過去の答弁にしばられないとの見解を示した。憲法9条などの解釈は、今後内閣が政治判断で行う考えも表明。鳩山由紀夫首相は同日夜、記者団に「法制局長官の考え方を金科玉条にするのはおかしい」と述べた。
 歴代政権は、内閣法制局の了解がなければ、事実上、憲法解釈の変更には踏み込まなかった。今回の発言は、憲法解釈も政治主導で行う原則を示したとみられるが、時の政権の都合で憲法解釈が安易に変更される恐れもある。
 平野氏は会見で「これまでの法制局長官の憲法解釈には内閣はしばられないのか」と問われ「もちろんそういうことだ」「政治主導だから、政治判断で解釈していく」と述べた。
 集団的自衛権の行使を違憲とするこれまでの政府解釈については「現時点では過去に解釈されたことを踏襲する」と述べた。一方で「踏襲はするが、無条件で内閣はしばられないということか」と問われると、「もちろん」と答えた。解釈変更の可能性については「世界情勢が大きく変わったときにはその時点で判断する」と述べた。
 集団的自衛権については首相も2日の衆院予算委員会で「当面、解釈を変えるつもりはない」と述べ、「当面」との留保をつけている。
 首相は4日夜、記者団に対し、「(憲法解釈を)変えるためには極めて慎重じゃなきゃいけない。変えるためには当然、国民的な世論というものもしっかり見定める必要もあると思う」とも述べた。

参考写真 内閣のスポークスマンと言われる官房長官は、どうも鳩山首相よりも小沢一郎幹事長の顔を伺っているようです。法の番人として長年にわたって憲法と法律の関係について精緻な考察と議論を積み上げてきた内閣法制局。この憲法解釈を、官房長官が軽々しく扱うことに大きな危機感を抱きます。
 この背景には、どうしても自衛隊の武力行使を伴う国連平和活動への参加にこだわる小沢幹事長の姿が見え隠れします。
 ところで、公明党の浜田昌良参院議員が10月26日に提出していた「鳩山内閣における憲法9条の解釈に関する質問主意書」に対する政府答弁書が、11月4日付で送付されました。正式な内閣の答弁書はまだ入手していませんので、後日掲載したいと思います。
 浜田議員は、民主党の小沢一郎幹事長が「国連の平和活動は武力行使を含むものであっても憲法に抵触しない」との見解を示していたことを踏まえ、主意書の中で「鳩山内閣も同様の解釈をしているのか」などと質問しました。
 答弁書は、国権の発動としての戦争や武力行使の放棄をうたった憲法9条について「現時点で従来の解釈を変えていない」「鳩山内閣では、政府の憲法解釈についても内閣が責任を持って行う」とし、民主党が示してきた解釈をそのまま持ち込むことはしないとの立場を明らかにしました。
 この答弁書の「現時点で従来の解釈を変えていない」との書きぶりが大いに気になります。民主党主導の政府見解変更で、この部分がほごになる危険性があります。
 この件については、今後とも注意深く見守っていきたいと思います。