子ども手当は見直しを OECDの政策提言
時事通信(2009/11/18)
参考写真 経済協力開発機構(OECD)は18日、日本の経済政策に関する提言を発表した。鳩山政権が導入を目指している子ども手当について「目的と対象を再検討すべきだ」とし、大幅な見直しが必要だとの見解を明らかにした。所得格差是正のための税制改革も求めた。
 東京都内で講演したOECDのグリア事務総長は「巨額の財政赤字を抱える日本には、少子化対策と女性の社会進出を両立させる一挙両得の対策が必要」と述べ、一律に子ども手当を支給するよりは保育所の待機児童対策などに重点を置くべきだとの考えを示した。
 所得制限を設けない子ども手当には、巨額の財源が必要な一方で少子化対策の効果がどれだけあるか疑問視する見方が出ていた。OECDの提言は制度づくりに影響を与える可能性がある。
 民主党は総選挙で、中学生までの子どもを持つ家庭に1人当たり月2万6千円の子ども手当を支給すると公約。鳩山政権は10年度予算で、半分に当たる月額1万3千円を支給する方向で検討している。
 OECDの提言は「教育は将来の経済的繁栄への戦略的投資だ」と指摘。幼児教育と保育サービスの一元化などを促した。税制改革については、納税額から一定額を差し引く税額控除による減税と、所得が課税最低限に達しない人たちへの給付金による支援を組み合わせた「給付付き税額控除」を導入し、所得格差を是正することを盛り込んだ。

 11月18日、経済協力開発機構(OECD)は、「日本の政策課題達成のためにOECDの貢献」と題する日本の政策課題達成に向けた提言を発表しました。
 この提言は、内需主導の成長戦略、労働市場、税制改革、環境・気候変動、教育、医療・介護、年金改革、地域政策と地方分権の推進、パブリック・ガバナンスの9つの視点から、日本が抱える政策課題への対応を求めています。そして、「日本というOECDの大切な加盟国のためだけでなく世界全体のために、これらが、日本における政策議論に役立つことを期待している」と結んでいます。
 今回の提言で最も注目すべきポイントは、「教育は、将来の経済的な繁栄への戦略的な投資である」との書き出しで始まる『教育』の章だと思います。
日本の政策課題達成のためにOECDの貢献−教育
 教育は、将来の経済的な繁栄への戦略的な投資である。財政的な制約にもかかわらず、日本政府は、現在、教育システムの質、公正性、効率性を強化し、長期的な経済成長を高める機会を得ている。
教育投資
参考写真 日本の家計に占める教育費の割合は、OECD加盟国の中で二番目に高いが、これにより就学率の急激な伸びが支えられてきた。しかし同時に、家計にとっては大きな負担になっており、経済危機によって、一層深刻となった。日本の大学では、高い年間授業料を課している一方、日本には、教育ローン、奨学金、助成金を組み合わせた学生への十分に発達した経済的支援の仕組みがない。他国の例を見ると、こうした仕組みは、公財政による教育支出への負担なしに、それどころか、長期的に財政面でプラスのリターンを生みだしつつ実現できることが分かる。
 OECD諸国では様々な学生への支援策が講じられているが、一般化した基礎的助成制度を採用している国はほとんどない。能力ベースの奨学金制度を併せ持つ国もあるが、世帯収入に応じた奨学金制度が最も一般的な形態である。将来の収入によって返済可能になった時にだけ支払いを求められるローン方式の支援が一層一般化している。対照的に、日本における現行の学生向け教育ローン制度は固定的な返済計画を伴っている。その結果、概ね三分の一程度の学生しか教育ローンを受けていない。 現行のローン制度を将来の所得を条件とした返済方式に移行することは、教育ローンをより一層魅力的なものとし、高等教育へのアクセスを改善すると考えられる。こうしたローンは、それがなければ大学に通う余裕のない学生向けの、世帯収入に応じた奨学金によって補完できるだろう。
幼児教育と保育
 重要な政策目標は、子供の発育に健全で力強いスタートを確保し、出産・育児の経済的負担を軽減し、家庭生活と仕事をより両立するものにし、女性の就労を支援し、早期かつ利用可能で質の高い幼児教育・保育を通じた公平性の醸成といったことを含んでいる。
 こうした複数の目標を同時に達成するために、成功した国々では、関連するセクター別の政策(たとえば、教育、医療、税制、雇用)をより上手く統合している。したがって、日本は、異なる政策選択肢、例えば児童手当と、幼児教育や保育といった児童に対する他の投資手段の間にある相互関係やトレード・オフを注意深く分析することが重要である。また、日本は、幼児教育と保育サービスを統合することによって政策の一体性を改善し得るだろうし、こうしたサービスを質量ともに拡充するためにより多くの資源を投じることができるだろう。
教育に関する主な提言(抜粋)
・就学前教育と保育に対する公的支出を増加するとともに、「子ども手当」案は、その目的と対象を再検討すべきである。
 引用したOECD提言の中の赤の太字は管理者が施したものですが、鳩山新政権が目指す「子ども手当て」であることは充分に理解できます。「世帯収入に応じた奨学金制度が最も一般的な形態である」と指摘するように、所得制限を設けない子ども手当に疑問の声を上げています。
 その上で、「高等教育における奨学金の充実」や「幼児教育・保育を通じた公平性の醸成」といった手段での教育支援の重要性を強調しています。
 これはまさに、公明党と自民党が前政権下で進めた政策そのものです。政権交代によって、補正予算が凍結された「子育て応援特別手当」は、幼児教育(保育園や幼稚園)の無料化の第一歩であったわけですから、鳩山新政権の政策の未熟さをOECDが世界に証明した格好になっています。
 また、同時にグリア事務総長が行った記念講演では、5歳未満の子供への支援拡大が日本にとって重要だとして強調しています。
This morning, I would like to stress another important aspect - the lack of appropriate childcare. We share this concern with the new government, which has promised in the 9 September policy agreement that it:
“will endeavour to increase the number of childcare facilities, ensure high quality childcare, and work to eliminate waiting lists for public childcare facilities.”
In fact, children - kodomo, are another of the four Ks identified by the government.
Compared to other OECD countries, the Japanese government spends a relatively large amount on children who are ten years old. But it spends one of the lowest amounts on fiveyear olds. Shifting resources to children aged five and below, in particular by providing more childcare and early education, offers a number of benefits:
1. As mentioned, it would encourage greater female labour force participation.
2. It would improve the quality of education; research shows that the rate of return on public investment in early childhood education is greater than for later years.
3. It would promote equality by working to overcome disadvantages as early as possible.
4. Finally, it may help raise the fertility rate as the burden of childcare is one factor that discourages families from having children. Indeed, in the OECD area, there is a clear positive correlation between female labour force participation and the fertility rate.

【翻訳文】管理者の稚拙な英語力で翻訳したものです。参考程度に読んでください。 
 今朝は、もう一つの重要な側面=「適当な育児の不足」を指摘したと思います。我々はこの懸念を新しい政府(民主党政権)と共有します。新政権は9月9日の政策協定(連立政権樹立に当たっての3党の政策合意)において、それを約束しました。
 「保育施設の数を増やして、高品質育児を確実にして、公共保育施設のために待機者を無くすために努力する」との合意です。事実子供たち=Kodomo、新政権にとって重要な4つのKの一つです。(4つのKとは雇用、子ども、景気、環境です)
 他のOECD諸国と比較して、日本政府は、比較的かなりの量を10才の子供たちに費やしています。しかし、5歳以下の子どもに対しては最も少ない量となっています。より多くの保育、早めの教育など、5歳以下の子供にリソースを移行させることによって、以下の大きな利益を得ることが出来ます。
1.上述のとおり、それはより大きな女性の労働力参加を促します。
2.教育の品質を改善します。最近の研究では、幼年期教育への公共投資に関する利益率がより大きいことを示します。
3.できるだけ早く実行することで、平等を進める効果があります。
4.最後に、育児の負担が家族に子供たちを持つことを思いとどまらせる一つの要因となっており、(負担軽減が)出生率を上げるのを助けるかもしれません。OECD諸国では、女性の労働力参加と出生率の向上に、はっきりした相関関係があります。

 所得制限のない多額の子ども手当より、義務教育の完全無料化(給食費や教材費、遠足・修学旅行の無料化)、保育園・幼稚園の無料化、乳幼児医療費の無料化を先行させるべきだと強く主張します。