匿名献金もほとんどがウソ、偽装の総額2億円に
参考写真 鳩山由紀夫首相の献金偽装問題。会計担当だった元秘書への聴取など東京地検特捜部の捜査が進む中、連日の国会論戦での首相答弁を通じ、ずさんな会計処理や個人資産管理の実態が次々と発覚する一方、マスコミ報道でも新たな疑惑が相次ぎ明らかになっています。
 このブログでは、現時点での鳩山首相の献金疑惑について、新聞各紙の報道などを中心にまとめてみます。
 11月4日、衆議院予算委員会で鳩山首相は、「弁護士からは『疑わしい部分がないとは言えない』と言われており、今後の捜査に委ねたい」と、資金管理団体「友愛政経懇話会」の収支報告書に名前を記載する必要がない5万円以下の「匿名献金」にも偽装があったことをあっさり認めました。
 首相の匿名献金は国会議員の中でも突出して、2004〜08年の5年分で総額約1億7717万円と大きな金額となっています。首相は偽装の総額は「分からない」と逃げましたが、10月26日付の東京新聞の報道では、会計担当の元秘書は「匿名献金も大半は鳩山氏側の資産を充てた」と述べています。
 しかも、「収支報告書の元となる会計帳簿にはこの分の寄付者などの記載がないことも判明」(朝日新聞2009/11/25)しています。
 鳩山首相は、すでに05〜08年の4年間で計92人分から受けた総額約2177万円の個人献金の偽装を認めています。元秘書の説明が事実なら、偽装献金の総額は「2億円近くに上る」(産経新聞2009/10/19)ことになります。
 また、収支報告書の未訂正分(03、04年)にも、実際は献金していない人が記載されていることが指摘されてきましたが、これについても、4日の衆院予算委で首相は「今、検察において調査しており、その(偽装)額がもし判明したら、貸し付けという形で処理する必要が出てくる」と未訂正分の偽装を実質的に認めました。
 このほか、政治資金パーティー収入にも当初の見込み額に達しなかったため、見栄えを良くするために水増ししたとの報道(時事通信2009/10/27)もあり、その額は年間数百万円に上るといわれています。虚偽記載が個人献金だけでなく、パーティー券収入にも及んでいたとなれば、首相の政治資金収支報告書はほとんどがデタラメであったことになります。収支報告書に対する国民の信頼を大きく損ねるものであり、首相としての資質が問われます。
 献金偽装問題の最大の疑問は「なぜ偽装したのか」という動機です。首相は6月末の会見以来、「元会計担当者の秘書が独断で行った」と言い張っています。そうであるならば、自らの政治生命すら脅かされかねない事態を引き起こした元秘書をなぜ、告発しないのか大きな疑問です。
毎年5千万円、鳩山家の資金を流用
参考写真 鳩山由紀夫首相の献金偽装問題で大きな疑問は、「首相本人は本当に偽装に関与していないのか」という点です。その疑惑解明のカギを握るのが献金偽装の資金源。鳩山首相は6月末の会見で「元会計担当者の秘書に預けていた個人口座の資金」と説明し、元秘書が独断で行ったとしてきました。
 ところが、先日の衆参両院の予算委員会での野党追及によって、鳩山家の資産管理会社「六幸商会」が管理する個人口座からも資金が流入しており、六幸商会から元秘書が資金を引き出す際、首相本人が「必要な文書に署名していた」と認めました。
 さらに、公明党の木庭健太郎参院幹事長が11月9日の参院予算委で、引き出した資金総額を問いただしたのに対し、首相は「正確に調べれば分かる話なので答えることはできる」と述べ、翌10日の同委で「6年で年平均5000万円」、つまり総額約3億円にも上ることを明らかにしました。
 政治家が自らの資金管理団体に寄付(献金)できる上限額は年間1000万円まで。それを超えると、政治資金規正法の「量的制限」違反となります。首相は「これ(上限額)を超える分は貸し付けで処理していた」と理解していたと釈明しています。たしかに「貸し付け」ならば上限はありません。しかし、そうであるならば、「貸し付け」と正式に記載すれば済むはずです。本音は、「故人献金」「匿名献金」に潜り込ませる形で献金を偽装、寄付の上限違反を免れようとしたのではないか考えるのが普通です。
 疑惑はまだありません。報道では、鳩山首相の献金偽装について、元秘書は「長年の慣習だった。政治家の個人資産を他からの献金に偽装するやり方は、鳩山氏の父親の代からやってきたこと」と周囲に話していたと報道されています(産経新聞2009/10/18)。もし証言が事実なら、鳩山首相は初当選直後から、個人資産を献金と偽る手法を繰り返していたことになり、首相が「全く知らなかった」では済まない事態となります。
 そもそも、首相本人に関与がないのであれば、なぜ、6月末の会見で資産管理会社「六幸商会」から巨額の資金を引き出していたことを説明しなかったのか。次々と鳩山首相の献金疑惑は深まります。
鳩山首相の資産でも問題発覚
参考写真 鳩山由紀夫首相の献金偽装問題に関し、衆参両院の予算委員会などで野党は数々の問題点を突きつけたが、いまだに多くの真相がヤブの中です。
 脱税の疑いが指摘されるのが、虚偽の個人献金者に交付された所得税控除の証明書です。報道では、首相の資金管理団体の報告書で偽装した延べ116人の個人献金者に、税控除の証明書が総務省から交付されています。
 11月4日の衆院予算委員会で、原口一博総務相は偽装献金者分の証明書返還の有無を問われ「確認していない」と答弁しました。鳩山首相側が返還していないことを事実上認めているとされています。
 もし、これがこの証明書を悪用して、寄付控除に使われていれば法律違反の重大問題です。
 また、鳩山首相側が偽装だとして収支報告書から削除した個人献金者名の中に、実際に献金した人が含まれていた「二重の虚偽記載」問題も発覚しています。これはれっきとした罰則対象であり、2度目の虚偽記載は事件発覚後であり首相の関与が疑われます。さらに、首相サイドの調査の信ぴょう性も疑問視される事態なのに、なぜきちんと釈明しないのでしょうか。
 一方、鳩山首相が代表を務める「民主党北海道第9区総支部」の報告書にも疑惑が噴き出しています。現段階だけでも、(1)個人献金者にすでに亡くなった人を記載、(2)「地方議員の歳費に応じて決めた額」を「議員党費の代わりに寄付の形で徴収」などと説明していますが、同じ道議なのに寄付の額が違うのはなぜか。寄付していない議員がいるのはなぜか、(3)事務所家賃の不払い――など不透明な部分が多くあります。
 鳩山首相の献金偽装問題に加えて、最近になって、ずさんな個人資産管理の実態も露呈しています。11月2日付毎日新聞は、首相が08年に株を売って得た7226万円余の所得を税務申告していないことを報じました。
 さらに11月11日付毎日新聞は、02年から08年の資産報告書に、保有株や有価証券など総額5億4500万円相当の記載漏れが発覚し、11月10日に訂正したと伝えました。そして、16日付読売新聞では、この訂正の結果、株取得の時期が国会答弁と最大約4年も食い違うと指摘しています。
 鳩山首相の政治資金、資産をめぐる疑惑はますます広がり、首相の順法精神に不信の目が注がれ始めています。国民に対し、国の最高責任者である首相は疑惑に答える責任があります。
 総務省のHPには、政治資金収支報告書が掲載されています。ここに、各年度の政治資金収支報告書のリンクを掲載しますので、ぜひご一覧下さい。
2000年(平成12年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2001年(平成13年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2002年(平成14年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2003年(平成15年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2004年(平成16年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2005年(平成17年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2006年(平成18年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2007年(平成19年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書
2008年(平成20年)友愛政経懇話会政治資金収支報告書