「文化をばかにしている」=歌丸師匠、芸術費削減に立腹
時事通信(2009/12/12)
 「文化と芸術をばかにしている」。行政刷新会議の事業仕分けで芸術文化振興費が「圧倒的縮減」と判定されたことを受け、公明党が11日に都内で行った芸術・芸能関係者からの意見聴取で、今後の活動に支障を来すとの反発が相次いだ。
 落語芸術協会会長の桂歌丸師匠は、学校への芸術家派遣が見直しとなったことについて、カンボジアで子どもたちに落語を披露した経験に触れ「異国の子供も喜ぶものを日本で行うのに、国の予算を使うのがいけないのか。子供たちが本当の文化に触れる機会は大切だ」と訴えた。
 歌丸師匠はこの後も、記者団に「無駄を省くのは大賛成だ。でも、もっと省くべき無駄がある。狭い日本にこんなに多くの政治家が必要なのか」と怒りが収まらない様子だった。

参考写真 12月11日、公明党の文化芸術振興会議(議長=松あきら副代表)は、参院議員会館で拡大会合を開き、鳩山政権が来年度予算概算要求を対象に行った事業仕分けに関して芸術家団体の意見を聴取しました。公明党からは、山口那津男代表、浜四津敏子代表代行ら多くの衆参国会議員が出席しました。
席上、日本芸能実演家団体協議会(芸団協)が、野村萬会長名で要望書を提出。芸団協の大林丈史専務理事は、今回の事業仕分けについて「充実してきた文化芸術政策の形成を無に帰すもの」と力説。参加団体の総意として、結果をそのまま来年度予算に反映しないよう求めました。
落語芸術協会会長の桂歌丸師匠は、事業仕分けで「地方へ移管」と判定された学校への芸術家派遣事業について「大変素晴らしいもの。何でそんなに目くじらを立てるのか。子どもが本物の文化に触れる機会は大切だ」とし、公明議員に対して「明るい日本、笑いのある日本を取り戻してほしい」と訴えました。
このほか、出席団体からは「仕分けのやり方があまりにも乱暴。哲学がない」「縮減ありきの会議」などの意見のほか、「人間の成熟は、文化芸術なくしてはあり得ない。人の心を豊かに育てるためには時間がかかる」(ピアニストの中村紘子さん)、「国の地位は文化芸術への力の入れ方で決まる。フランスが大国なのは文化芸術を大切にするからだ」(作曲家の三枝成彰さん)など、文化芸術予算の必要性を訴えた著名芸術家らの声が紹介されました。
 公明党の山口代表は、「今回の事業仕分けは目に見える成果や数字にこだわりすぎている」と力説。斉藤鉄夫政務調査会長は、「あらゆる手段で政府に皆さまの声を届け、文化予算を守り、日本が元気になるよう全力を挙げると誓う」と強調しました。
この日、参加した団体は、芸団協、日本劇団協議会、日本オーケストラ連盟、芸術家会議、公共劇場舞台技術者連絡会、日本舞踊協会、落語芸術協会、東京芸術劇場などです。
子どもたちに残す財産
落語芸術協会 桂 歌丸 会長

落語芸術協会の桂歌丸会長は会合終了後、記者団の質問に答え、大要次のように語りました。
  • (事業仕分けについて)正直に言うと、あまりに日本の文化芸術をバカにしているという気がしますね。子どもたちに、後に残していくものといったら、文化芸術からつなげていくのが当然だと思う。最初から「勉強、勉強」ではダメ。楽しみを与え、音楽、演劇を与え、笑いを与えて、それが教育につながっていくのが、私は文化だと思っています。そういう教育や楽しみにつながるものを国が切ってどうするんだと言いたい。
  • (鳩山首相に言いたいことは)もっと総理というものは決断力があっていいのではないか。あちこちの顔色ばかりうかがっているような気がする。本当に歯がゆい。
  • 事業仕分けについて一番先に出したのは公明党さん。それを今、おやりになっている。公明党さんの場合は、もっと(文化芸術への)理解をしておやりくださいましたよね。ところが、今のアレ(鳩山政権)は全然理解していない。ムダを省くのは大賛成だが、省くべきムダはほかにあるんじゃないかと思う。