12月11日、日本とアメリカは、日米航空協議で最終合意し、航空自由化(オープンスカイ)協定を締結することになりました。
日米間の空の規制緩和が実現
茨城空港のターミナル 「オープンスカイ協定」は2010年10月までに発効し、日米間の空の規制緩和が実現します。今までは空港の発着枠なども政府間の交渉で決めてきたのですが、オープンスカイになると航空会社が発着枠を各空港と直接交渉し、需要に応じて柔軟に路線を開設できます。
 日本とアメリカは、これまで1952年に結んだ日米航空協定が改訂されないまま続いており、米側が成田に持つ過大な発着枠が問題になっていました。今回の合意ではアメリカ側が使っていない発着枠を一部返上することになり、成田の米国発着枠は28%から25%程度まで下がる見込みになりました。
 また2010年10月に羽田が再拡張した際には、羽田空港と米国を結ぶ定期便が深夜・早朝に1日最大8便(離着陸合わせて)が運航できるようになります。これまで羽田の国際便は韓国、中国など近距離に限られていました。また、成田空港は騒音対策のため午後11時〜午前6時は運航ができません。深夜・早朝に羽田から飛べるということになれば、首都圏から米国に飛ぶ利用客のメリットは大きくなります。
共同運行で航空会社は合理化
 航空自由化になるとコードシェア便の設定も今より自由になります。コードシェア便とは一つの便を異なる航空会社が共同で運行することで、たとえば成田発ニューヨーク行きのひとつの飛行機に全日空とユナイテッド航空の2つの便名がつくというようなことです。このやり方ですと、ひとつの便を飛ばす経費は単純にいえば半分ですむことになります。また乗客は2つの航空会社の顧客が見込めますから、1社で運行するよりもより多くの乗客を集めることができます。
 このコードシェアというやり方はすでに行われており、ツアーなどで海外に出かけた方の中には、日本の航空会社のはずだったのに乗ってみたらアメリカの会社の飛行機だった、などという経験をなさった方も多いことでしょう。
 コードシェアに関しては、アメリカは協定を結んだ相手国の航空会社から独占禁止法の適用免除申請を受け付けており、認められればアメリカの航空会社と共同で運賃や運航スケジュールが決められることになり、実質的に路線の一体運営が可能になります。現在、日本航空をめぐって米国のデルタ航空とアメリカン航空が争奪戦を繰り広げているのもこのメリットがあるためで、アジア第2位の輸送実績を誇る日本航空は両社にとって魅力ある提携先のようです。
格安航空会社の参入で運賃が下がる可能性
 航空自由化はすでに世界中で進んでおり、アメリカは1992年以降、90以上の国とオープンスカイ協定を結んできました。米国と欧州連合(EU)の間でも2008年3月末に協定が発効しています。日本に乗り入れているアメリカの航空会社はデルタ、ユナイテッド、アメリカン、コンチネンタル、USエアウエイズの5社(共同運行を含む)ですが、自由化になれば、今後は日米間でもLCC(ローコスト・キャリア=格安航空会社)が参入してくることが予想されます。
 事実、アメリカとヨーロッパ間では航空自由化が始まってから、10%から15%、季節や時間帯によっては20%くらい運賃が下がっているとも言われています。燃油サーチャージ(付加運賃)が上がり気味の最近の情勢で、この見通しは利用客にとってはうれしい傾向かもしれません。
LCC設立をめざす全日空の動き
 過去の記事を検索すると、全日空はアジア圏の国際線を主に運航する格安航空会社(LCC)を設立する計画があるという報道が複数ヒットします。それによれば、羽田空港が 2010年秋に拡張されるタイミングに合わせて新しい会社の飛行機を就航させたい意向だということでした。記事では2009年中に「アジアのLCCに対抗できる会社をつくる」ということでしたが、その後のニュースは入ってきていません。いずれにしても、LCC参入も含めて今後の日本の空は大きく変化しそうで、成り行きが注目されます。
地方空港やアジア諸国との航空自由化協定が重要
 国土交通省は地方空港にオープンスカイを導入するなどの独自案を提案しています。
 こうしたオープンスカイの動きは、本来、地方空港も巻き込んだ議論に発展させなくてはなりません。アジア諸国との包括的なオープンスカイ協定の締結が地方空港、特に首都圏第三空港としての「茨城空港」の生き残りの特効薬かもしれません。