12月19日、井手よしひろ県議ら公明党県議団は、石井啓一衆議院議員も交えて、国の農業政策への意見交換会を行いました。
 来年度から始まる農家への戸別所得補償に対し、県内の農家には不安と混乱が広がっています。予算編成をめぐる鳩山政権の迷走ぶりは目に余り、果たして年内に予算を編成できるのか、戸別所得補償の関連予算がどうなるのか、全く解らない状況です。農家の皆さんが来年の営農計画を立てる時期なのに、詳細を示せないのはまったく無責任です。
参考写真 現在、農水省が考えているモデル対策は、二つの柱から成り立っています。
 一つは、コメの生産調整に協力した販売農家に対し、生産費と販売価格の差額を補てんする米戸別所得補償モデル事業(米のモデル事業)です。もう一つが、水田で大豆や麦、米粉・飼料用米を生産する販売農家を対象にした「水田利活用自給力向上事業」(自給率向上事業)です。
 まず、米戸別所得補償モデル事業の問題点を整理してみると、「戸別所得補償」という名称が、あたかも“一戸一戸の農家の所得を補償する”かのような誤解を与えています。実体は「減反協力農家への差額の戸別配り制度」に過ぎません。
 制度の概要は、生産数量目標に従って主食用のコメを作り、水稲共済に加入している販売農家などに対し、生産費と販売価格の差を全国一律の定額で直接支払います。価格が下がった場合は、上乗せ助成をするようですが、肝心の定額部分がいくらになるのか決まっていません。10アール当たり1万5000円前後とか、いろいろな話が飛び交っています。
 また「全国一律」に対しても異論が相次いでいます。2008年産米の10アール当たりの生産費は、一番低い北海道の11万2665円と、一番高い中国・四国の18万3686円では1.63倍の格差があるのです。それなのに全国一律にすると、不利な条件でコメを作る生産者の努力は報われないことになります。
 コメからの転作作物を助成する自給率向上事業「水田利活用自給力向上事業」にも疑問の声が上がっています。
 現行の産地確立交付金は、農地の団地化や担い手に対する経営支援に応じた地域独自の加算を行い、地方が主体的に転作を進めることができるようになっています。これを廃止し、品目ごとに全国一律の金額を助成する事業を実施しようというのです。
 伝え聞いているところでは、米粉・飼料用などの新規需要米は、10アール当たり8万円を助成する一方で、麦や大豆は3万5000円、野菜や雑穀など「その他作物」は1万円と、かなり格差があります。新規需要米以外は、今の制度よりも大幅に助成が減ります。生産調整に真摯に応じ、経営努力を重ねてきた生産者や地方への配慮が欠けています。
 既に全国各地で、“自分の水田でコメを作れば所得補償される”というイメージが先行し、集落営農からの離脱や農地の“貸しはがし”などが起きています。食料自給率の向上に必要な小麦や大豆への転作にブレーキがかかる恐れもあります。この二つの制度を農協(JA)抜きにしてどのような組織で農家に説明し、補償金を支払っていくのかという実施主体への疑問も膨らんでいます。
 今後、茨城県議会公明党として、両制度の抜本的な見直しを求めていく事を確認し、来年年明けには、全県的な「農業問題の総点検運動」を行うことを決定しました。
(写真は、茨城県議会公明党の農業問題調査の一コマ:2008年5月かすみがうら市にて)