医療系情報検索サイト運営するQLife(キューライフ)は、鳩山政権の行政刷新会議による事業仕分け作業において、「医療用漢方製剤」(漢方エキス製剤・煎じ薬:以下、漢方薬)への公的医療保険適用に見直しの結論が出されたことを受けて、全国の医師(直近1ヵ月において漢方薬を処方した内科、外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、小児科の医師)207名および患者(医師の処方による漢方薬の服用経験者)520名を対象とした緊急インターネット調査を実施しました。
参考写真 その結果、医師、患者とも約8割が漢方薬の公的医療保険給付除外に「反対」であることがわかりました。
 この調査では、患者の85.2%、医師の78.7%が漢方薬の公的医療保険給付除外に「反対」しました。また、「大半の医師は医療現場における漢方薬の有用性を実感し、保険給付除外による患者のQOL低下を危惧している」、「約7割の患者は医師による漢方薬処方が受けられなくなることに不安を抱いている」、といった医師・患者とも大きな不安を抱いていることがわかりました。
 患者に対して漢方薬の「必要性」を質問したところ、21.3%が「必要不可欠である」と答え、「あったほうがよい」の63.0%と合わせると、84.3%の患者が「漢方薬は必要」と考えていることが明らかになりました。その背景には、漢方薬服用について「著しく効果がある(あった)」(5.0%)、「効果がある(あった)」(51.0%)と約6割の患者が有効性を実感していることがあると考えられます。
 「医師による漢方薬の処方が受けられなくなった場合、不安を感じるか?」という質問に対しては、「非常に不安である」(27.3%)、「やや不安である」(40.0%)と約7割が不安を感じています。さらに、漢方薬が公的医療保険給付除外になることに対して「困る」と答えた患者(298名)に、その理由を聞いたところ、「薬代の自己負担が増える」(80.9%)に次いで「医師による適切な治療が受けられなくなる」(46.3%)が高率となっていることからも、患者は漢方薬の医療保険給付の存続とともに「医師による」漢方薬の処方も重視していることが明確になりました。
 漢方薬が患者の治療にもたらすメリットについては、「非常に大きい」(12.6%)、「かなり大きい」(85.7%)と約8割の医師が肯定的に評価しています。また、漢方薬が保険給付除外となった場合の患者のQOL(生活の質)については、「著しく低下する」(10.6%)、「低下する」(71.0%)と、8割以上の医師が危機感を抱いている様子がうかがえます。
 医師に対して漢方薬の処方理由を質問したところ、「他の治療手段との組み合わせによる相乗効果を期待できるから」(66.7%)が最も多く、「患者からの要望があるから」(52.7%)、「EBM(Evidence Based Medicine:科学的根拠に基づく医療)からみた信頼性が向上してきたから」(30.9%)、「西洋薬処方に伴う副作用を軽減できるから」(27.1%)が続いており、医療現場において幅広く使用されていることがうかがわれます。
 今回のアンケートでは、「医業仕分けに医療現場の実態が考慮されているか」という問いに対して、医師は「全くされていない」(32.9%)と「ほとんどされていない」(37.2%)で、約7割を占め、議論の内容・進め方・判断については厳しく評価していることが明らかになりました。
「漢方薬の公的医療保険給付除外」に関する医師・患者意識調査の概要
調査対象:全国の医師207名(内科、外科、産婦人科、泌尿器科、耳鼻咽喉科、小児科)
     全国の成人男女520名(医師の処方による漢方薬の服用経験者)
調査手法:インターネット調査
実施期間:12月1日から3日
参考:医師、患者とも約8割が漢方薬の公的医療保険給付除外に「反対」(QLifeのホームページにリンク)