参院選を強く意識した理念無き税制大綱に批判の声
参考写真 2010年度税制改正では、子ども手当や高校授業料無償化といったバラマキ色の強い給付制度の導入に伴い、所得税や住民税の控除制度の大幅見直しが決まりました。15歳までの子供のいる家庭を対象にした扶養控除(年少扶養控除)が廃止されることになりました。また、16〜22歳の子供らが対象の「特定扶養控除」のうち高校授業料無料化にかかわる16〜18歳の控除額を圧縮することになります。所得税は2011年1月から住民税は12年6月に改正されます。
 来年7月の参院選を強く意識する小沢一郎幹事長らの意向を汲んでか、マニフェストでうたっていた年少扶養控除以外の障害者や高齢者の扶養控除は現行のまま継続されることになりました。また、配偶者控除の廃止は検討課題として先送りされました。さらに、マニフェストには記載の無かった「住民税控除廃止」は、実施の時期を2年半後にずらすことで、増税感を薄める手だてが打たれました。
 年少扶養控除が廃止されると、納税世帯の所得税負担増は、所得額により子供一人当たり1万9000円から15万2000円の負担増に。住民税は一律3万3000円の負担増となります。政府は、2010年度は子ども手当が年間12万6000円、11年度は31万2000円支給するといっていますので、家計にとってはいずれもプラスとなる見込みです。
 しかし、負担が増える可能性もあります。政府税制調査会に提出された資料では、所得税・住民税の扶養控除が廃止された場合、連鎖的な負担増が保育所の保育料や私立幼稚園就園奨励費補助、国民健康保険料など、少なくとも23項目に及ぶことが明らかになっています。これらの料金や負担は、控除後の所得で計算される仕組みになっているからです。
 特定扶養控除の縮小は、現在、公立高校の授業料の免除措置を受けている世帯にたいし、所得税・住民税増税の痛みだけを押し付けることになります。
 12月22日、公明党の石井啓一税制調査会長(衆院議員、茨城県本部代表)は、この税制改正大綱の決定を受け、次のような談話を発表しました。
  • 2010年度税制改正大綱は、鳩山内閣の経済財政運営の混迷ぶりを反映したものとなった。経済成長戦略もなく、「マニフェストありき」でその財源をどうするかに終始し、全体として経済対策の視点を欠いた戦略なき税制改正となっている。
  • 鳩山内閣は、税制決定の手続きについて「公開」「政府一元化」と称していたが、重要な決定は結局非公開の場で行われ、透明性に欠け、一元化に反するものである。
  • 鳩山内閣が先の衆院選挙の公約・マニフェストに反する決定を数多く行ったことは極めて重大な問題である。総理は、その経過・変更根拠などについて国民に対してきちんとした説明責任を果たすべきである。
  • 公明党は、12月10日に「10年度税制改正に対する考え方」を取りまとめ政府に提言した。その中で、(1)景気刺激に資する税制、将来にわたり日本の成長を促す税制(2)格差の是正と所得再配分機能の強化――などを指摘した。次期通常国会では、今般の税制改正の矛盾・問題点をただしていきたい。