鳩山政権は12月24日で、発足から100日を迎えました。景気・経済への対策が遅れ、普天間問題の先送りなど外交・安全保障への不安が増しています。さらに、献金偽装問題で首相の元秘書が起訴される異例の事態も重なり、国民は厳しい目を注ぎ始めています。鳩山政権を襲う経済、基地、献金の「3つのK問題」について整理してみたいと思います。
「鳩山不況」が生活直撃、成長戦略いまだ描けず
 前政権の経済対策によって上向きかけた景気が再び落ち込む「二番底」の懸念が強まっています。円高やデフレなど景気を下押しする要因がくすぶっています。こうした予断を許さない経済情勢の中、鳩山政権の経済財政運営には、疑問符を付けざるを得ません。
 政府はこの約3カ月間、マニフェストの財源確保に明け暮れ、景気への目配りを怠っています。その典型が今年度第1次補正予算の一部執行停止です。経済対策の効果が発揮される矢先の凍結で、景気悪化のリスクを生んだ責任は非常に重いものがあります。また日本経済をどう発展させるかという成長戦略を、いまだに描けていないのも問題です。
 政府は12月8日、緊急経済対策を決定しましたが、財源は1次補正予算の執行停止分と税収減の場合の地方交付税の補てん分がほとんどで、実質規模は約1兆円。政策の実行も来年3月ごろで「小さすぎて遅すぎる対策」との感は否定できません。政府の危機感の薄さに「鳩山不況」の懸念が強まっています。
普天間移設で迷走、基地固定化に懸念
普天間:鳩山首相の国外移設案否定 社民党が猛反発
毎日新聞(2009/12/28)
 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の移設問題で鳩山由紀夫首相は28日、平野博文官房長官のもと、政府と社民、国民新党との実務者協議を開始し、来年5月までに新移設先の結論を得ることを目指す。しかし、首相がグアムなど国外移設案を否定したことに社民党は反発しており、同党の連立離脱の可能性も絡んで、協議の行方は波乱含みだ。
 首相は前日に続き27日も官邸前で記者団に「グアムに8000人の(在沖縄)海兵隊が家族も含めて移ることは(日米合意で)決まっている。それ以上どうかというと、なかなか難しいのではないか。特に抑止力を考えれば難しい」と述べ、国外移設を重ねて否定。「年末に連立政権での協議が始まる。その中の一つの考えとして言った」と述べ、社民党への配慮を見せる一方で、「抑止力という議論も当然しっかりしていただかなきゃならない」とけん制もした。
 これに対し社民党の福島瑞穂党首は27日、東京都内で記者団に「グアムは極めて有力な移設先と考えている。内閣を挙げて県外・国外移設を目指すべきだ」と述べ、政府・与党実務者協議でグアム移設を強く求めていく方針を示した。結論を得る時期については「大事なのは期限ではなく解決策。無期限にやるわけにはいかないが、多くの人、とりわけ沖縄の人々が納得する解決策を内閣を挙げて探すべきだ」と強調した。

参考写真 鳩山政権の外交・安全保障政策のもろさは、かねてから“政権のアキレスけん”などと懸念されてきました。早くも、米軍普天間飛行場移設をめぐる問題で表面化しました。
 軍用機墜落の危険性や騒音被害などが問題視されている普天間飛行場は、日米両政府と沖縄県などが、米軍キャンプ・シュワブの沿岸部に代替地を建設することで合意していました。
 先の衆院選で「最低でも県外」と主張していた鳩山首相ですが、政権がスタートすると関係閣僚との間で意見の相違が露呈。首相自身の発言のブレも重なり、結局、連立相手の社民党に配慮して結論を先送りしました。しかし、新たな移設先探しに展望もないその場しのぎの対応に、「県民の思いをもてあそぶな」「基地の固定化は許さない」との声が噴出しています。
 一方、鳩山政権の迷走は日米関係にも深刻な影響を及ぼしています。日米合意の現行計画を事実上白紙化したことに米政府は猛反発。日米関係のさらなる悪化は避けられそうにありません。
首相の元秘書を起訴、虚偽記載4億円政治責任果たせ
鳩山首相団体偽装献金:首相、納税額公表 「約5億7500万円」
毎日新聞(2009/12/28)
 鳩山由紀夫首相は28日、自身の資金管理団体「友愛政経懇話会」を巡る偽装献金事件に関連し、実母から提供された資金の贈与税納付額について「約5億7500万円」だったと公表した。個人事務所を通じ報道各社に説明文書を送った。
 文書によると、納付額は02年から08年までに贈与された11億7000万円にかかる贈与税とされ、「09年分の贈与9000万円については後刻、申告・納付します」としている。

参考写真 鳩山政権を大きく揺るがすのが首相の献金偽装事件です。現職首相の“金庫番”だった元秘書が収支報告書に総額4億円に上る虚偽記載をしたとして起訴され、極めて異例で深刻な事態に発展しています。
 元秘書起訴を受け、半年ぶりにようやく記者会見した鳩山首相は「実態をまったく知らなかった」と釈明。実母からの約12億6000万円の金を贈与として贈与税を支払うことを表明しましたが、資金の使途の説明は尽くされないままとなっています。国民の信頼を裏切ったことについて、政治家としての責任は極めて重く、首相辞任のみならず、国会議員の辞するべき重大事です。
 首相はかつて、社民党議員の秘書給与流用事件の際、「秘書が犯した罪は政治家が罰を受けるべき」と声高に叫んでいた。ところが会見では「今回の件では私腹を肥やしたわけではない」と自らは該当しないと弁明しました。
 首相は疑惑解明への説明責任を尽くすとともに、公明党が提唱する会計責任者が不正を犯した場合、議員の監督責任を問い、公民権を停止させる法改正の成立に積極的に協力すべきです。
内閣支持率ガタ落ち、首相の指導力に不安の声
参考写真 12月に実施された報道各社の世論調査で、鳩山内閣の支持率が続落しています。発足当初は7割前後だった支持率が3カ月たった直近の調査では最大で4割台半ばまで急落。一方、不支持率は34%(毎日)、34%(朝日)、33%(読売)といずれも発足当初と比べ、倍以上にハネ上がりました。