1月20日、国会は参院本会議を開き、菅直人財務相の財政演説に対する各党代表質問を行われました。公明党からは、松あきら副代表(党女性委員会委員長)が登壇。鳩山内閣の「政治とカネ」や政権公約に対する姿勢について「言ってきたこととやっていることが違う」と厳しく批判。その上で、経済運営に関しては厳しい経済情勢を踏まえ、民主党のマニフェストにこだわらず「臨機応変に対応」すべきと主張しました。
 また、公明党が強く主張している総合的な子育て支援、乳がん・子宮頸がん検診の「無料クーポン」の拡充などにふれ、女性と子どもを守る政治の実現を訴えました。
 「総理、鳩山内閣が発足して4カ月あまり、国民が今、どんな気持ちで内閣を見ているかご存じですか。「言っていたこととやっていることが違う」という声が耳に届きませんか。昨年(2009年)夏の総選挙で、民主党が国民に約束したマニフェストが、早くも色あせてきたことに、多くの国民ががっかりし、落胆しています」
 「例えば21年度第1次補正予算を凍結させた揚げ句、似たような政策を第2次補正予算案として提出するなど、大見えを切ったものの、その結果は政策の実行を遅らせただけではありませんか」
 「公明党は、最も困っている人たちのために働きます。山口代表を中心に、全国の地方議員・国会議員3000有余人が一丸となって「チーム3000」の旗印の下、総力を挙げて、福祉・教育・平和という公明党の原点に立ち返り、この難局に臨んでまいります。鳩山政権が進めようとする政策に対して、はっきりと物を言わせていただきます」など、歯切れの良い質問に、公明党女性議員ここにありと、胸のすく思いの質問でした。
松あきら副代表の代表質問要旨
(2010年1月20日参議院本会議)
fcbd0e92.jpg 総理、鳩山内閣が発足して4カ月あまり、国民が今、どんな気持ちで内閣を見ているかご存じですか。「言っていたこととやっていることが違う」という声が耳に届きませんか。昨年(2009年)夏の総選挙で、民主党が国民に約束したマニフェストが、早くも色あせてきたことに、多くの国民ががっかりし、落胆しています。
 例えば21年度第1次補正予算を凍結させた揚げ句、似たような政策を第2次補正予算案として提出するなど、大見えを切ったものの、その結果は政策の実行を遅らせただけではありませんか。
 また初めて編成した当初予算案も恒久財源は確保されず、「普天間」をめぐって迷走する閣僚の発言、政治資金の疑惑も広がる一方、その中で景気の「二番底」が懸念されているのが現状です。
 公明党は、最も困っている人たちのために働きます。山口代表を中心に、全国の地方議員・国会議員3000有余人が一丸となって「チーム3000」の旗印の下、総力を挙げて、福祉・教育・平和という公明党の原点に立ち返り、この難局に臨んでまいります。鳩山政権が進めようとする政策に対して、はっきりと物を言わせていただきます。
 国民のため、困っている人たちのために、鳩山政権も、我々の提案にも積極的にお答えいただきたい。
鳩山総理の個人献金問題、一般国民であれば「脱税事件」
 さて、総理がお母さまからもらった毎月1500万円、総額12億6000万円もの贈与が課税を逃れて、その一部が偽装献金の出所となっていたという疑惑は、もし発覚しなければ約6億円もの贈与税は納めないままだったのですか。一般国民であれば脱税と言われます。総理、お答えください。
 また、民主党の小沢幹事長をめぐって、西松建設からの違法献金疑惑に加え、不明朗な土地取引についての疑惑は、強制捜査から小沢氏の元秘書だった民主党の石川衆院議員ら3人が逮捕される事態に発展しました。現職国会議員の逮捕は、政治全体への信頼を失墜させる由々しき事態と言わざるを得ません。
 4億円もの土地購入資金の出所について、世論調査では9割の国民が説明に納得していません。そんな中、あろうことか総理は、検察当局と全面対決を主張する小沢幹事長に「どうぞ闘ってください」とおっしゃったそうですね。
 行政の長である総理が、行政機関の一つである検察批判に同調するなど前代未聞、あまりに不見識ではありませんか。総理は国民の反発に苦し紛れの言い訳に終始していますが、言い訳ではない、誰もが納得する答弁を求めます。
 菅副総理にお聞きいたします。菅副総理が政治の世界に飛び込まれた時に真っ先に師事され、終生、清潔な政治の実現に尽力された、かの市川房枝さんは、「政治家の金銭関係を潔癖にするということが何よりも大事」と主張されていました。鳩山総理や小沢幹事長にまつわる不可解な政治とカネの問題について菅副総理のご見解をお聞きいたします。
景気・経済、財政、デフレ阻止へ確かな意思示せ
 デフレが日本経済にとって大きな重石になっています。その最大の理由は、世界的な需要不足であることは論を待ちません。わが国においても需給ギャップがGDPの7%、約35兆円に上るとの内閣府の推計があります。
 スーパーマーケットに足を運べば、200円を切るお弁当など価格破壊にびっくりさせられます。
 一見、物が安くなることは消費者にとってうれしいことのようでも、デフレが長期化し、これがスパイラルに陥ることになれば、日本経済にとって深刻なダメージとなります。
 どうすればデフレが止まるのか、日本銀行の役割分担はどうなっているのか、将来ビジョンの裏づけをもった政府としての明確なメッセージを発するべきではありませんか。総理の見解を求めます。
 そもそも、鳩山政権には経済の司令塔が誰なのかが見えない、迷走を続けていると言わざるを得ません。「新成長戦略」なるものの基本方針が昨年末に決定されました。しかし来年度(2010年度)の予算編成が終わってからという、まさに「戦略」なき対応でした。具体策は今後の6月ごろまでにまとめるとのことですが、それでいて名目3%、実質2%を上回る成長をめざすというのは、いささか無理があるのではないでしょうか。総理、こうした数字となる積算根拠を明らかにしていただきたいと存じます。
 財政健全化について伺います。現時点における民主党マニフェスト工程表によれば、4年後の平成25年度には、政権が掲げる政策の実現に要する財源は16.8兆円に上ります。しかしながら、平成22年度予算では、予算の組み替えによる財源捻出は微々たるもので、平成23年度以降の恒久財源はほとんどメドが立っていません。他方で社会保障の自然増を含めた費用はこれからも増え続ける中で、消費税は4年間上げないと明言されておられます。
 総理、消費税は4年間上げないのですか。であれば、当然、中期の財政の姿も、消費税増税を前提としない姿で示されるということでしょうか。
 これは極めて重要です。この点を曖昧にしたままでは、将来の借金すなわち国債の増発リスクは解消されず、日本の信認そのものが傷を負いかねません。総理、明確にご答弁ください。
 第2次補正予算についてお伺いいたします。
 総理は、第1次補正予算を凍結し、その財源を活用して第2次補正予算案を編成されました。
 総理にとっては、第2次補正予算の編成は想定外だったのかもしれませんが、経済対策という観点からすれば、わざわざ第1次補正予算を執行停止せずに、そのまま執行していれば、一層の効果があったのではないか、結果として、第2次補正予算が成立・執行するまでの間、経済対策に空白期間が生まれ効果を著しく低減させてしまうのではありませんか。
 総理のご見解を賜りたいと思います。
深刻な雇用問題
 今、雇用問題は深刻です。“仕事がない”“ハローワークに何百回通っても決まらない”“いつ解雇されるか分からない”など、庶民は日々苦しんでいます。
 特に若者の失業の増大は、将来の日本の危機です。今こそ政府が全力を挙げて、雇用対策、雇用創出に取り組むべきです。
 「雇用調整助成金」の積極活用、雇用保険や住宅困窮者への対策などセーフティーネットの強化、医療・介護、子育て分野、環境、農林水産、観光などの各分野の戦略的な雇用創出など、あらゆる政策手段を総動員すべきです。総理の決意と具体的な取り組み方針をお伺いします。
子育て支援、子ども手当の財源明確に
 民主党マニフェストの1丁目1番地といわれた「子ども手当」が来年度より1万3000円の半額支給として実施されますが、実態は、公明党が40年かけて拡充してきた「児童手当」の5000円に8000円を上乗せする形での実施となるようであります。
 「子ども手当」の創設というよりは、「児童手当」の拡充ではないですか。
 この「子ども手当」、社会全体で子育てを応援する、特に負担の重い方々に対して経済的な支援を拡充する方向性は、公明党が進めてきた方向性と同じであります。しかし安定財源を確保できなければ、制度は持続できません。
 「子ども手当」の財源をどうするのか、特に配偶者控除を廃止し、恒久財源として活用するのかどうか、総理の明確な方針を示していただきたい。
 一方、子育て支援は「子ども手当」だけですべてが解決されるわけではありません。公明党は、児童手当や出産育児一時金などの「経済的な負担軽減」とともに、保育所の待機児童ゼロ作戦、放課後児童クラブの拡充、病後児保育の推進など「子育ての環境整備」を両輪として取り組んでまいりました。
 現場からは、「子ども手当もいいけれど、保育所などに入れるようにしてほしい」との声を多く聞きます。
 子育ては、「経済的支援」「環境整備」の両面を含めたパッケージで支援をしてこそ、社会全体で応援する体制といえるのではないでしょうか。トータルな子育て支援をどう進めるのか、具体策を総理に伺います。
化学物質から子ども守れ
 次に、子どもを化学物質から守る取り組みについてお尋ねします。
 わが国ではこの10年で先天異常の子どもが倍増するなど深刻な状況です。
 子どもの健康にかかわる異変が指摘されています。これらに加えて発達障がい、精神障がい、アレルギー疾患、肥満、生殖能力などに、化学物質が影響している可能性が指摘されております。
 公明党は子どもの健康と化学物質の関係について解明する疫学調査の実施を主張した結果、新年度より10万人のお母さんを対象とする大規模な疫学調査を実施することになったことは、評価するものであります。
 その上で、この調査とは別に、子どもを取り巻く化学物質について各省・横断的な実態調査を実施することを提案したい。
 さらに、東京都が化学物質の健康影響を未然に防止するため、「子どもガイドライン」を策定していますが、国としてガイドラインを策定する考えがないか、お伺いします。
 また、子どもの健康と環境について、国際的な連携を一層強化するため、日本が主導して(仮称)「子ども環境保健関係大臣世界サミット」を開催することを提案しますが、総理の見解をお伺いいたします。
女性特有のがん対策、子宮頸がん予防接種に公費助成を
 次に、乳がん、子宮頸がん検診の「無料クーポン」の拡充について伺います。
 がんは診断と治療の進歩により、早期発見・治療が可能となりました。しかし、女性特有のがんは、いまだ検診受診率が極めて低い状況にあります。
 このため、公明党が主導した21年度第1次補正予算で一定年齢の方を対象に、乳がん、子宮頸がん検診の「無料クーポン」と「検診手帳」の配布を実現し、多くの自治体から「個別勧奨」が検診率向上に効果を挙げているという報告が寄せられています。
 無料クーポンは5歳刻みで、5年たたないとすべての人に行き渡らないことから、最低でも同じ条件で5年間の事業継続が不可欠です。
 ところが、22年度予算案では、「女性特有のがん検診」の国負担分を半分に減らし、残りの半分を地方負担分とし、地方交付税で措置することとなりました。
 「子宮頸がん征圧をめざす専門家会議」の野田起一郎議長は「無料クーポンは、がん検診にとって起死回生の妙手であり、久しぶりのホームランだ」と高く評価しています。日本はOECD(経済協力開発機構)30カ国中、受診率が最低レベルであります。21年度の検診クーポン事業は216億円。今回は76億円。
 なぜ、必要な制度の予算を半分以上も削ろうとするのか。女性の命がかかっているんです。
 総理の見解を求めます。
 最後に、子宮頸がん予防ワクチンの公費助成について、政府の見解を伺います。
 近年、若い女性の子宮頸がんが急増し、毎年1万人以上の方がこの病気で苦しんでいます。
 子宮頸がんはウイルスによって感染します。つまり粘膜感染です。しかし、実はこれを知らない方がほとんどです。
 しかも、死亡率の高いこの子宮頸がんの増加傾向をこのまま放置することは日本社会にとって大きな損失であり、今こそ、政府の真剣な対応が求められています。
 子宮頸がん対策は、海外では100カ国以上で予防ワクチンが承認され、大きな効果を挙げています。日本では昨年12月にやっと発売が開始され、10歳以上の女性に予防接種が可能となりました。
 ところが、この予防ワクチンの接種費用は1回のワクチンの価格が1万2000円、それを最低3回は接種する必要があり、3万6000円と高額になります。
 子宮頸がんは予防できる唯一のがんであります。
 女性の誰もが平等に予防接種が受けられるよう、公費助成への英断を下していただきたいのであります。公費助成でも約212億円と言われています。「治療費との費用対効果を考えると、投資額に対して約2倍の効果が期待できる」との試算を示す専門家もいます。
 総理、公費助成への明快なご答弁をお願いします。
 以上、公明党は清潔政治の実現、国民生活を守る景気・経済回復、生命を守る政策実現に全力で取り組むことをお誓いし、私の質問を終わります。