インターネットを活用した選挙運動の議論は、1996年頃からスターとしています。96年5月に、井手よしひろ県議は自らのホームページに「公職選挙法とインターネット情報についての私見」との一文を掲載し、「(諸外国に於いては)インターネットを利用した選挙運動は、何の規制も加えない、自由が大原則なのである。私は、日本でもこの原則を定着させるべきだと主張する。従来の選挙運動に利用できる「文書図画」、つまりポスターやハガキ、ビラ、選挙広報は、その情報を必要としない人にも送りつけられる可能性がある。テレビやラジオ、新聞等のマスコミも同じ性質がある。こうしたメディアは、公選法での規制の枠がはめられてもいたしかないと感じる。しかし、インターネットというメディアは、その情報を得る人は積極的、能動的アクションを起こして、初めてその情報が得られわけである。インターネット上の情報は、ほしい人が、ほしい時にアクセスしてくるのである。こうした、インターネットの本質を無視した、規制論には大きな矛盾を感ずるのである」と、早期のインターネット選挙の解禁を提言しました。
 96年11月には、「新党さきがけ」から旧自治省にインターネットと公職選挙法に関する「回答願」が提出され、自治省行政局選挙部選挙課からその回答が公表されました。その中で「公職選挙法の「文書図画」とは、文字若しくはこれに代わるべき符号又は象形を用いて物体の上に多少永続的に記載された意識の表示をいい、スライド、映画、ネオンサイン等もすべて含まれます。したがって、パソコンのディスプレーに表示された文字等は、公職選挙法の「文書図画」に当たります」との見解が示され、インターネット上の選挙運動も公職選挙法上の規制を受けることが明確になりました。
 さらに、「電子メールによる投票依頼も、投票依頼であれば、選挙運動に当たります」との見解が示され、メールやメーリングリストによる選挙運動も制約を受けることになりました。
 こうした議論から早14年。国政選挙が近づくたびに、ネットでの選挙運動の解禁が議論の俎上に上がりました。
 今回は、政権交代が起こったこと、参議院選という選挙の時期が明確な国政選挙であるため、国会での議論が進みやすいこと、などから見直しの議論が進むことが予想されます。
 今回議論されている視点は、「何人も選挙運動のために使う文書図画をネットなどで頒布できる」とし、ネット選挙運動を解禁する。候補者や政党、第三者がHPやブログ、ミニブログ「ツイッター」、メールなどで選挙運動を行うことができるようにすると言われています。これには、全面的に賛成です。選挙戦でのリアルタイムの政策の提示や動画の利用など、有権者にとって大きなメリットになります。
 反面、電子メールの活用には慎重な対応が必要と考えています。成りすましが比較的簡単に行えること、同意を得ていない有権者にメールが送られる危険性があること、有権者のアドレスが不法に売買されるなど負の影響が大きいことなどから、電子メールを使った選挙運動には制限を加えるべきです。
 ネガティブキャンペーンへの対応をどのように行うかを最大の課題に、与野党の積極的な協議を期待します。