3月16に、鳩山政権発足から半年が過ぎました。国会では、民主党の目玉政策である子ども手当半額支給法案や高校授業料無料化法案が、衆議院を通過しましたが、この半年の鳩山政権を国民目線でみてみると、民主党マニフェストがガラガラと崩壊する姿を見る半年間でありました。民主党のマニフェストの実現度=破綻度を検証してみました。
○子ども手当ての支給
『「子ども手当て」は、子ども1人当たり年間31万2000円(月額2万6000円)を中学卒業まで支給します』
 今回の子ども手当支給法案については、平成22年度限りの単年度措置に過ぎず、23年度以降については恒久的財源5.5兆円は全く見通しがなくデッドロック状態です。私は、この法案を子ども手当半額支給法案と呼んでいます。
 また、当初、全額国費負担を約束していたにもかかわらず、地方負担(4652億円)、事業主負担(1436億円)を残したまま。皮肉なことに、平成22年度限りの子ども手当半額支給法案は現行の児童手当への上乗せ措置になっており、事実上、公明党が長年取り組んできた児童手当の拡充そのものです。
 公明党は、子ども手当半額支給法案には賛成しました。それは、公明党が長年マニフェストで主張してきた児童手当の拡充、「第1子、第2子には月1万円、第3子以降には月2万円を、中学校卒業まで支給する」と、ほぼ同じ枠組みであったこと。さらには、平成22年度は、その財源が予算の中に明確の位置づけられていたからです。
 公明党は、子ども手当の議論の中で、直接給付以外の保育サービスの充実などにも、来年度以降所用の予算を確保することを、民主党の約束させました。つまり、来年年度以降は、子ども手当の本体予算5兆4000億円、保育サービス等の予算約1兆円あまり、合計6兆4000億円を子育て支援に捻出することが必要になったわけです。これは、すでに来年度予算で手当てできる金額を遙かに超えております。つまり、鳩山政権は、半額支給法案を成立させたことによって、2万6000円の子ども手当、そのものの実現に白旗を揚げざるを得なくなったわけです。
 言い換えれば、公明党の児童手当のマニフェストが実現し、民主党の子ども手当のマニフェストは破綻したということになります。
○高齢者医療制度の廃止
『後期高齢者医療制度は廃止』
 後期高齢者医療制度について「廃止する」といいながら、4年間の存続を決定。廃止について、何の具体策もいまだ国民に示さないのは、あまりにも無責任な対応です。
○自動車関係諸税の暫定税率の廃止
『ガソリン税、軽油取引税、自動車重量税、自動車取得税の暫定税率を廃止し、2.5兆円の減税を実施』
 ガソリン税等の暫定税率部分について、名前は廃止するが、新たな財政措置に置き換えるなど、実質的に約2.3兆円の負担を事実上維持。減税は行われず公約違反の典型です。
○高速道路料金の無料化
『高速道路は段階的に無料化』
 高速道路の無料化について、平成22年度予算において、当初概算要求で6000億円だったものが1000億円に縮小されました。結局、初年度の対象区間の合計距離は1626キロ。これは、首都高速や阪神高速を除いた高速道路総延長の約18%に過ぎず、ほとんどの高速道路は有料のままです。
 それどころか、週末1000円割引を値上げし、道路整備費への充当を検討するという体たらく。利用者負担が実質的に増えてしまいます。週末1000円割引で、にぎわった地方の観光地から悲鳴の声がすでにあがっています。
○行政のムダ削減
『国の総予算207兆円を全面組み換え。税金のムダづかいを根絶します』
 昨年11月に政府は「事業仕分け」を実施しました。国の全事業のうち対象事業も447事業と一部に限定され、結局9692億円の削減にとどまりました。当初ムダ削減等で確保するとしたマニフェストに必要な財源(22年度7.1兆円)は、ほとんど確保できませんでした。
 そもそも鳩山総理は昨年6月の党首討論で「210兆円のうち10兆程度ならば十分に、ムダだと考えてなくしたり」できると指摘していたが、そんなものはどこにもなありませんでした。
○天下りの根絶
『天下りを根絶します』
 政府は昨年10月日本郵政の社長に、元大蔵省事務次官の斎藤次郎氏を起用。その後、日本郵政の副社長にも官僚出身者を2人起用しました。天下り根絶は真っ赤なウソでした。
○天下り法人へ12兆円の公金流用の禁止
『天下りの在籍する独立行政法人、特殊法人、公益法人などへの支出(1年に約12兆円)や、国の契約を見直して、国の政策コスト、調達コストを削減する』
 民主党は「天下り法人へ12兆円が流れている」と言い続けてきました。テレビやマスコミのコメンテーターもこの「天下りに12兆円」という言葉を、金科玉条に、当時の自公政権を批判してきました。
 しかし、この事実確認について、鳩山政権は昨年12月の答弁書で「調査に膨大な作業を要することから、お答えすることは困難」と回答しました。「天下り根絶」を叫んでおきながら、天下りの全体像を一切把握していない現状が明らかです。「天下り法人に12兆円」を事実上撤回せざるを得ませんでした。
○公務員人件費の削減
『国家公務員の総人件費を2割削減します』
 国家公務員の人件費削減について、まったく進捗がありません。具体案の検討の着手もまったく見らていません。
 しかも原口総務大臣は今月、国家公務員の早期勧奨退職(いわゆる「肩たたき」)を認める発言をしています。これは、マニフェストには「定年まで働ける環境をつくり」とありマニフェスト違反しています。逆に、定年まで働けば、総人件費が2割削減どころか、増大するだけでなく、新規採用も出来なくなる恐れすらあります。
○米軍普天間飛行場の移設
『日米地位協定の改定を提起。米軍再編や在日米軍基地のあり方を見直し』
 選挙中、鳩山代表は米軍普天間飛行場の移設について、「基本的には一番いいのは海外に移転されることが望ましい。最低でも県外移設が期待される」と述べてきました。
 政権発足後、鳩山総理は「5月末までに決着させる」と明言。ところが、国外はむろんのこと、県外移設のメドは皆無。政府与党内でキャンプシュワブ陸上案などの県内移設案に、沖縄県側、候補地に浮上した自治体が猛反発。政府案の策定に全くメドが立っていません。
 自民党の谷垣総裁が3月15日沖縄で、「(鳩山政権が)具体的成案のないアイデアをぶちまけて、過去の努力をめちゃくちゃにした」、「沖縄の方々に、しなくてもよい内部対立を生み、日米関係を損なった」と強く批判しましたが、この指摘は正しいと思います。
○永住外国人への地方選挙権付与
『民主党は結党時の「基本政策」に「定住外国人の地方参政権などを早期に実現する」と掲げており、この方針は今後とも引き続き維持』
 永住外国人への地方参政権付与について、国民新党の亀井大臣は予算委員会で「国民新党と組むことより法案を出すほうが優先するなら、連立は一気に解消になる」と答弁しました。
 法案提出について政府与党内の調整はついておらず、今国会の法案提出は不透明。閣内不一致ともいえる鳩山政権の迷走が続いています。
○夫婦別姓の導入
『選択的夫婦別姓の早期実現』
 夫婦別姓の導入について、民主党内で賛否が分かれているとともに、国民新党の亀井大臣は“反対”と明確に答弁しています。夫婦別姓の導入を規定する民法及び戸籍法改正案の提出は見送られ、今国会提出の見通しは立っていません。
○増税措置
『マニフェストに記述なし』
 民主党マニフェストでは全く触れられていなかった増税が、平成22年度政府税制改正大綱で決定されました。まさに、国民へのだまし討ちです。
 具体的には、1.15歳以下の扶養控除について、住民税分も廃止(約4200億円の増税)、2.16歳から18歳まで所得税特定扶養控除の縮小(約1000億円の増税)、3.たばこ税の増税等(2100億円の増税)などです。

 以上のとおり、民主党のマニフェストは、もはや破綻したと結論づけても良いと思います。民主党内では、マニフェストの見通しが検討されているとのことですが、マニフェストの見直しを検討する前に、国民に謝罪するのが先ではないでしょうか。
 鳩山総理は、「マニフェストは国民との契約だ。もしも一つでも実現することが出来なかったならば、責任を取らなければならない」と発言されています。
 これだけの契約を実現できないわけですから、総理は当然約束通り責任を取ってもらわなくてはならないと思います。