3月17日の県議会予算特別委員会で、井手よしひろ県議が「茨城空港」開港後の所感を質したのに対して、橋本昌知事は、ニューヨークタイムスのインターナショナル版(International Herald Tribune:2010/3/11)を紹介しながら、茨城空港の可能性を訴えました。
 ここではその記事の概要を紹介します。原文の翻訳間違いがあれば、管理者までご指摘下さい。 
日本のための斬新なアイディア:格安旅行向けの空港
参考写真 慎重に何年もの間練られてきた3階建ての空港ターミナルの計画が、知事からの常識を一掃する指示で1階建て(※実際は2階建てです)となったとき、幹部たちは心臓発作を起こすところだった。
 いたる所が極限まで削減されたのである。ボーディング・ブリッジは消滅し、乗客は駐機エプロンから直接搭乗するうえに、荷物を自分で持ちこむ。−サービスに過敏な日本におけるこうした大胆な計画を聞いたとき、「頭の中が空っぽになった」と、ある職員は語った。
 東京から85キロ(または53マイル)北に位置し、今週木曜日に開港する茨城空港は、全く新しいタイプの日本の空港を目指している。過剰なサービスを排除したこの施設が、LCCにとって高コストな日本の首都に風穴を開けるかもしれない。
参考写真 日本の大手航空会社から無視され、茨城空港は困難に直面している。茨城空港は、カリフォルニアよりも小さい日本という土地にオープンする国内98番目の空港である。茨城県には、観梅で知られる古い公園と、喚覚を刺激する発酵した大豆である納豆以外に観光客をひきつけるものはない。
 今のところ、茨城空港には一日二便のみの就航である。ひとつは韓国アシアナのソウル便、もうひとつは日本のLCCスカイマークによる西日本の中規模港湾都市、神戸への便である。
 前原誠司国土交通大臣は、地方と国からの約220億円の支出にもかかわらず、開港のための熱気を引き起こすのに四苦八苦している。メディアは、茨城空港がもう一つの不採算空港となり、日本の田舎に点在する無駄な公共事業の例だと伝えている。
 先週、前原大臣は、「茨城空港に飛ぶよう日本や外国の航空会社に懇願するつもりは全くない」、「空港利用のためには、県が出来ることをする必要がある」と言った。
 しかしながら、茨城空港を詳細にみてみると、日本の長く停滞した航空部門に衝撃を与える戦略が明らかになる。ある専門家は、コスト削減とLCCに明確に焦点を当てた茨城空港は、交通需要が落ち込み、不況後で消費者が節約嗜好に走り、航空会社がぎりぎりまでコスト削減を強いられているこのような時代にまさに必要とされる空港だろうと話す。
 さらに、専門家は、LCCが特に所得の伸びによる旅行者の増加が見込まれる中国やインドなどの大国で、飛行機を使った旅行が増えることにより、大きく成長する可能性があると話す。
 LCCは世界各地に進出しているが、日本の航空業界においては、JALやANAなど大手に支配され、また、高価で非効率な空港に悩まされており、大きく遅れを取っている。
 首都圏における航空需要は、現在、成田と羽田でまかなっているが、ロンドン郊外のスタンステッドやルートン空港のように、LCCに対応する空港として、もう一つの空港が利用できれば良い、と専門家は言う。現在、首都圏には、世界最大の4千万人が形成する都市圏が広がっているが、成田(ほとんどの国際線)と羽田の2空港でまかなっているのである。
 しかし、両空港は満杯なことで悪評高く、来年両空港が拡張された後でも、状況は変わらないと予想されている。厳格な規制によって柔軟なフライト割り当てができないのである。そのうえ、成田や羽田で課される高い着陸料やその他のコストはLCCの就航を妨げているのである。
 慶応大学中条潮教授(交通経済学)は、「茨城空港は正しい方向に進路をとっている。」と指摘している。
 「しかし茨城空港の成功は、日本や近隣の国々でのLCCの発展にかかっており、今後5年から10年間はかかり、茨城空港は長期の準備が必要。」と同教授は語る。
 印象的なターミナルビルの青写真が描かれてしばらく経過した2007年に、橋本昌茨城県知事は茨城空港を「日本ではかつてなかった空港」とすることを指示した。
 「単なる標準的な空港だったら仕事は進めなかっただろう。開港してすぐに時代遅れになってしまう。」橋本知事はインタビューに答えて言った。「考え方を正反対にしなくてはならなかった」?
 橋本知事は、空港と航空会社双方のための操業コストの削減を実現するため、斬新なアイデアの転換により根本からターミナルビルの再設計することを命じた。到着、出発、見学デッキが別階にある計画を廃止し、すべてを一つの階に集約したのである。(これはより少ない空港職員で対応することを目的としたものである)
 知事は、航空会社や空港の維持管理にとって高コストとなるボーディング・ブリッジを取り除き、その代わりに乗客を駐機エプロンから搭乗してもらうこととしたのである。(「飛行機の前で記念写真が撮れるから、乗客に喜ばれるでしょう。」と知事は語った)
 知事はまた、アメリカのいくつかの地方空港と同様に、乗客に自分の預け入れ荷物を飛行機まで運んでもらうこととしたいが、この点についてはまだ関係機関と交渉中である。(「ちょっと行き過ぎですかね」メディアに話すことは非公式とは言いつつも、匿名でという条件で、ある職員は語った)
 茨城空港に着陸する飛行機は、離陸前に滑走路に戻るのにプッシュバック・トラクターの助けを必要としないよう、自走したうえで、駐機する。−これは、駐機エプロンから乗客が乗り込むもう一つの理由である。それにより、日本の国際空港では初めて、航空会社のトラクター利用料を不要とし、維持費を削減できるのである。
 細かいことにうるさい日本人客が雨に文句を言ってきたらどうするのか職員が訪ねると、橋本知事と側近は、雨の日における傘の無料サービス案(「日本人は無料のものが好きなんです」と橋本知事は語る)を提示した。知事はさらに、プライベート・ジェットの受入、東京都心とのヘリコプターの接続−パーティーや会議のためのスペースの貸し出しまでも進めているのである。
 業界紙『オリエント・アビエーション』によると、茨城空港の定期便ボーイング737の着陸料は89,000円で、成田の139,600円の3分の2、羽田の189,600円の半分である。
 その他にも、茨城に好都合な要因がいくつかある。航空自衛隊の基地の拡張として建設されたこともあり、茨城空港は日本の多くの他空港に比べ財政的にいい状況にある。また、外国の航空会社にとっては、羽田や成田での発着枠確保に必要とされる2国問協定なしで使える地方空港として、茨城空港への路線の拡大は容易となっている。例えば、この2国間協定のために、アシアナはソウルから成田と羽田への6路線の増便は困難となったのである。
 また、茨城空港は、何時間利用しても無料の駐車場を備えているのに対し、成田や羽田の駐車料金は天井知らずであり、さらに、東京都心から5ドル以下のバスサービスが計画されているのである。−5ドル以下とは、都心から成田に行く費用のほんの一部、羽田に行くのにほぼ同等である。
 茨城県の薮中克一課長によれば、時間については、成田の滑走路を飛行機が移動する時間や乗客がだだっ広い空港を移動する時間を考えれば、東京都心へ移動する総時間はほぼ同じ、90分以内とのことである。
 茨城空港(のターミナルビル)は、初年度に約2,000万円の赤字を見込んでいる。
 しかし、茨城は積極的に売り込みをはかっている。中国、マレーシア、フィリピン、マカオのLCC航空会社と交渉を進めているほか、韓国の港町釜山との路線拡大も協議している。
 「茨城は、コスト効率に真剣に焦点をしぼった型破りの日本初の空港」と、アシアナ航空ヒョン・ドンシル専務取締役日本地域本部長は語る。「東京への本当に必要で新しい低コスト路線がついに実現した。喜ばずにはいられません」
(写真はニューヨークタイムスの記事を開港祝賀会で紹介する橋本昌知事:2010/3/11)