参考写真 3月25日付の読売新聞社説は、「2010年度予算が成立した。極めて問題の多い予算なのに、与党ペースで掘り下げた議論もせず、政府案通り成立に至ったのは遺憾である。10年度予算は、民主党の政権公約(マニフェスト)に基づき、費用のかさむ政策が数多く盛り込まれたことで、一般会計総額が92兆円と大きく膨らんだと、鳩山政権の平成22年度予算を酷評しました。
 もちろん公明党は、この22年度予算に対して明確に反対の意思を示しました。
 平成22年度予算は、今や“火の車”となった財政の健全化に向けた道筋を示さず、“借金漬け”の予算とした、鳩山内閣の無責任さにはあきれるほかありません。
 10年度予算の一般会計総額は、当初予算で過去最大の約92兆円に膨らみ、その財源を賄う新規国債発行額も約44兆円と、当初予算で過去最高額に達しました。当初予算で新規国債発行額が税収を上回る戦後初の異常事態です。
 景気を本格的な回復軌道に乗せるための施策が不十分な点も大きな問題です。
 景気対策といえば、鳩山政権が09年度第1次補正予算の一部を強制的に執行停止したことは、明らかに政権の失策でした。これだけでも景気浮揚の大きな障害となりました。10年度予算でも、地方経済を支える公共事業を大幅削減するなど、深刻な経済・雇用情勢への配慮はまったくありません。
 その上、経済のパイ拡大に向けた成長戦略の具体性が欠如しています。かねてから経済への認識と対策が甘いと指摘されてきた鳩山政権だが、ここでも、その弱点が露呈してしまいました。
 国民生活にとって重要な施策に予算が十分に確保されていないのも納得できません。例えば、子どもの安全を守る学校の耐震化を進める予算は概算要求から大幅に削られた。鳩山首相が言う「いのちを守る予算」がいかに見掛け倒しのものか、この一点を見ても明らかです。
参考写真 そしてなにより、平成22年度予算の随所に「マニフェスト違反」が明らかになっています。例えば、ガソリン税などにかかる暫定税率を実質的に維持したことです。 かつて民主党はマニフェストで暫定税率の廃止を喧伝し、できなければ「納税者に対する違反行為」(藤井裕久前財務相)などと胸を張って見せた。にもかかわらず、税収減の回避を理由に、これをあっさりと撤回したのは理解に苦しむ。これでは、国民との契約を示すマニフェストを“絵に描いた餅”と批判されても文句は言えません。
 また、高速道路無料化や農家の戸別所得補償制度も、社会実験、モデル事業という名の下に、実質的に縮小されました。年金改革や公務員改革、後期高齢者医療制度の廃止などは、具体的に何の進展もありません。
民主は政治責任を果たせ
 予算審議では、「政治とカネ」をめぐる問題に多くの時間が割かれましたが、民主党は説明責任や、秘書などの刑事処分に対する政治責任を十分に尽くさず、自浄能力も示しませんでした。
 結果的に、この問題が経済や雇用など国民の関心が高いテーマの議論を妨げたのは明白です。
 再発防止へ、公明党が主張するように、議員の監督責任の強化や企業・団体献金の全面禁止に関する与野党協議機関を設け、結論を急ぐべきです。
10年度予算成立 マニフェストの抜本見直しを
読売新聞社説(2010/3/25)
 2010年度予算が成立した。
 極めて問題の多い予算なのに、与党ペースで掘り下げた議論もせず、政府案通り成立に至ったのは遺憾である。
 10年度予算は、民主党の政権公約(マニフェスト)に基づき、費用のかさむ政策が数多く盛り込まれたことで、一般会計総額が92兆円と大きく膨らんだ。
 予算の大枠を定める概算要求基準が撤廃されたことも、歳出増の要因となったのは明らかだ。
 一方、税収は37兆円余りに落ち込むため、当初予算としては過去最大となる44兆円もの国債を発行してしのぐ有り様だ。当初予算で国債発行額が税収を上回るのは、戦後初という異常事態である。
 10年度予算が成立したばかりだが、「このままでは11年度予算はまともに組めない」との指摘が、早くも各方面から出ている。
 税収増が期待できない中、政府が11年度も歳出拡大を続ける構えでいるからだ。これでは国債依存度がさらに高まり、日本経済に対する信用が失墜しかねない。
 実際、海外の格付け機関は、日本の国債の格付けを引き下げる可能性を示唆している。
 鳩山内閣は、財政事情の厳しさを再認識し、マニフェストへのこだわりを捨てて、財政健全化に努めなければならない。
 10年度予算で最大の歳出項目は社会保障費である。約27兆円と一般歳出の半分以上を占める。この社会保障費は、11年度でも最大の歳出拡大要因となろう。
 中でも、子ども手当の取り扱いが焦点だ。今年6月から実施される月1万3000円の半額支給ですら、10年度は2・3兆円かかる。11年度からの満額支給なら、5・3兆円の財源が要る。
 これに、基礎年金の国庫負担引き上げ分(2・5兆円)や少子高齢化に伴う自然増分などを合わせると、社会保障費だけで6兆円もの財源を確保せねばならない。
 にもかかわらず、10年度予算に計上された10兆円の税外収入は、埋蔵金の枯渇で、もはや当てに出来なくなった。
 昨年の事業仕分けで削減されたのは7000億円に過ぎないことを考えれば、無駄減らしによる財源捻出(ねんしゅつ)は絵に描いた餅である。
 歳入が足りず、無駄にも切り込めないとなれば、マニフェストによるバラマキ政策を大幅に見直すしかあるまい。
 消費税率引き上げなどによる中期的な財政健全化の道も、早急に示す必要があろう。