参考写真 4月9日、高速道路の新たな料金制度が国交省から発表されてことは、当ブログ「高速道路、6月から上限2000円の新料金体系に」で紹介しました。一般の高速道路(NEXCO)の場合、平日、休日関係なく、軽自動車1,000円、普通車2,000円、中型車、大型車5,000円、特大車10,000円が上限料金となります。それ以下では、距離に応じた通常の料金を支払うことになります。
 この制度は、茨城県のように大都市圏に隣接する地方にとっては、大きな負担増となることを、管理者は指摘しました。右の表を見ていただけば、ご理解をいただけると思いますが、茨城県内を南北の縦貫する常磐道の場合、普通車上限2000円の恩恵を被る地域はほとんどありません。休日1000円、通勤割引、深夜割引が廃止されれば、ほとんどの利用者が負担増となることが想定されます。
 現実的に負担増となる利用者が多いという視点とは別に、今回の上限制移行が将来的な日本の交通政策に大きなマイナスであることも看過できません。
 12日、PHPのHPに「高速道路上限料金制に異議あり」との記事が掲載されました。PHP総合研究所の特任研究員松野由希氏の執筆による記事です。
 コンパクトに、民主党の政策がいかに間違っているかが指摘されています。
 松野氏は、「どれだけの距離以上であれば高速道路を利用することが有利となるのかを試算してみました。その結果、軽自動車は41km、普通車は71km、中型車は156km、大型車は114km、特大車は139kmが境界です。これ以上であればどれだけの距離でも高速道路を使うことが有利となります。今後、境界以上の利用者が増えれば増えるほど、舗装費等の道路損傷費用が増大し、CO2排出による環境費用などの社会的外部不経済が増えるのですが、原因者負担や、受益者負担の原則が、境界以上では無視されてしまうのです」と分析しています。
 その上で、上限制のデメリットを、1.より環境負荷の小さな交通手段への転換(モーダルシフト)を阻害すること、2.対距離課金によって、受益と負担を一致させ、その財源をもとに、長期的に必要な道路整備と、道路交通負荷を軽減させる鉄道、港湾などの、インターモーダル(交通手段ごとの利点の組み合わせ)な交通整備を行うことが出来なくなること、の2点を上げています。
 結論として、「環境を重視した成長戦略を掲げる民主党政権ならば、高速道路料金の無料化や上限料金制度などの瑣末な議論に終始せずに、環境重視型のインターモーダルな交通体系を構築するには何が求められるのかをきちんと見極め、議論していくべきです」としています。
 高速道路上限制は、百害あって一利なしの政策です。国会での徹底した議論を強く望むものです。