参考写真 5月12日、ネット選挙解禁に関する与野党協議会が開かれ、現在禁止されている選挙期間中のホームページ(HP)とブログの更新を夏の参院選から解禁することで大筋合意しました。今国会中に全会一致での公職選挙法改正をめざすことになります。
 協議会では、更新を実施するのは候補者本人と政党に限る方向でも一致。電子メールやツイッターについては、他人による成り済ましや中傷が懸念されているため見解が分かれ、5月19日に改めて議論することになりました。
 このほか、国政選挙だけでなく、知事選など地方選挙でもインターネット利用を解禁すべきとの意見も出されました。
 席上、公明党の佐藤茂樹衆院議員は夏の参院選までの周知期間を考慮し、「全面解禁でなく段階的解禁にすべき」と主張。また、中長期的には欧米並みの自由な選挙運動が行えるよう、ネット解禁だけでなく戸別訪問なども認めるべきだと訴えました。
 インターネット選挙の解禁が取りあえず、議員(候補者)本人が管理するHPとブログに限定されて背景には、選挙管理委員会などが本人のサイトを認証し、その認証されたサイトの選挙期間中の更新だけを認める方式を採用するためと思われます。
 ネット解禁の議論の中で、民主党の消極的な姿勢が目立っていることは意外です。民主党の「インターネットを利用した選挙運動の解禁検討チーム」は、5月11日の会合で、現在は選挙期間中の更新が禁止されているホームページとブログについて、夏の参院選から、候補者を擁立している政党と候補者本人に限定して使用を解禁する方針を決めています。メールとツイッターについては、「他人が候補者の名をかたることも可能で、解禁は時期尚早だ」との意見があり見送りました。全面禁止を訴えた自民党と攻守所を変えた、後ろ向きの対応が、民主党支持者からも不満が出ています。
 ホームページ上に掲載される動画、音声などのデータも更新可能となる見込みです。ただ、YouTubeなどにリンクされた動画の扱い(同様にエンベットされた場合の取り扱いを含む)などは非常にデリケートな課題となります。
 また、選管などの認証はドメイン毎に行うことが検討されているようで、このブログの管理者のように一般のHPとブログのドメインを複数所有し、運用しているサイトなどの対応なども注目されいます。
 いずれにせよ、解禁への第一歩は評価されるべきであり、地方選挙も含めて、国会での対応を大いに期待します。
ネット選挙 まずはホームページ更新から
(読売新聞:社説2010/5/12)
 与野党が、インターネットを利用した選挙運動の解禁に動き出した。
 政党や候補者が、自らの政策や活動ぶりを紹介しているホームページを選挙期間中も使えるようにすることでは、各党の足並みはそろいつつある。
 しかし、電子メールの送信を含めた全面解禁となると、慎重論も依然残る。夏の参院選に間に合わせるには時間が足りない。まずはホームページの更新に限定して、解禁するのが適切ではないか。
 ホームページ、ブログ、メールマガジンなどは、いまや、政党や議員の政治活動を支える重要なツールとなっている。
 ところが、選挙中のホームページ更新やメール送信は、はがきやビラ以外の「文書図画」の頒布を禁じる公職選挙法に抵触するというのが、現在の法解釈だ。
 選挙の直前までは使えて、有権者の関心が高まる公示・告示後に使えないのは不合理である。
 このため、3年前の参院選や昨年の総選挙では、民主党や自民党などが、公示後も「投票を呼びかける選挙運動ではなく、政治活動だ」という理屈で、ホームページの更新を続けた。
 なし崩しで解禁するのは、選管や警察も対応に苦慮するし、トラブルの源だ。参院選に間に合うよう、法改正を急ぐべきだ。
 一方、ネット選挙の解禁に慎重な議員たちの間には、メールは他人が候補者の名をかたる「なりすまし」が容易で、虚偽情報を広めることに悪用される、と懸念する声が少なくない。
 利用者が急増している簡易投稿サイト「ツイッター」でも、本人認証の仕組みが未整備のため、鳩山首相のなりすましが“登場”したばかりだ。
 解禁に積極的な議員たちは、事前登録した有権者に限ってメール利用を認めたり、発信者のメールアドレスの表示を義務づけたりすれば、悪用を抑制できると主張するが、いずれも決め手を欠く。
 なりすましなどの対策は、なお議論を深める必要があろう。
 限定的なネット選挙解禁になった場合でも、さまざまな波及効果が期待できる。
 ネット利用が当たり前になっている若者が、政治に目を向ける機会が増える。80万人を超える海外在住の有権者も、ネットを通じて選挙の様子を知ることができる。それは、ひいては投票率の向上にもつながるに違いない。
 まずはできるところから、一歩踏み出す時だろう。