参考写真 米軍普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)移設問題で、鳩山由紀夫首相が約束した「少なくとも県外」と「5月末決着」との約束は、いずれも果たされずに終わりました。
 5月28日に発表された日米共同声明には、移設先として同県名護市「辺野古」を明記。8カ月あまりの迷走の末、「県外」どころか現行案とほぼ同じ内容に戻ってしまいました。
 しかも、首相が県外移設への期待をあおったことで、沖縄県民の間には「裏切られた」との失望と怒りが渦巻いています。沖縄など地元の頭越しに、いくら日米間で合意しても決着には程遠く、「罪万死に値する失政」(日経)といえます。
 5月29日付のマスコミ各紙は、普天間の迷走を招いた首相の資質について、言葉の軽さ、指導力欠如、優柔不断な場当たり対応、安全保障に関する認識不足などを挙げ、「首相の信用は地に落ち、その統治能力には巨大な疑問符がついた」(朝日)との批判が相次ぎました。
 首相自らが招いた失政への極めて重い政治責任が問われるのは当然であり、公明党の山口那津男代表は「信頼を失った首相は責任を取り辞めるべき」と述べています。
 加えて、鳩山政権は、社民党党首の福島瑞穂消費者・少子化担当相を罷免する事態に追い込まれ、「そもそも、民主党が、基本政策の異なる政党と連立を組んだこと自体に無理があった」(読売)ことを改めて露呈。社民党は30日に連立からの離脱を機関決定しました。昨年9月にスタートした民主、社民、国民新3党の連立体制はわずか8カ月余りで幕を下ろしました。
不見識は朝日新聞の“辞任に必要なし”との結論
 鳩山首相は、自らが「職を賭して」普天間問題に取り組むと公言したのですから、当然辞任するのが道理だと思います。
 しかし、一部のマスコミの論調には、どうしても納得できないものがあります。それが、朝日新聞の5月29日に掲載した社説と1面に掲載された「見識なき政治主導の危うさ」との署名記事です。朝日新聞は、「成算もなく発せられる首相の言葉の軽さ。バラバラな閣僚と、統御できない首相の指導力の欠如。調整を軽んじ場当たり対応を繰り返す戦略のなさ。官僚を使いこなせない未熟な「政治主導」。首相の信用は地に落ち、その統治能力には巨大な疑問符がついた」(29日社説)、「見識のない政治主導がいかに混乱をもたらし、内外の信頼を損なうか。国民はまざまざと見せつけられた」(見識なき…)と鳩山首相を厳しき批判しながら、その結論は「辞任の必要はなし」というものでした。
 すなわち、結論部分を引用すると、「歴史的事件から1年もたたない。政治的な未熟さの克服が急務とはいえ、旧時代の「政局」的視点から首相の進退を論じるのは惰性的な発想である。普天間への対応も含め、鳩山首相への中間評価は間もなく参院選で示される。首相は「5月末」は乗りきれても、国民の審判からは逃れられない」(29日社説)、「朝日新聞の直近の世論調査では、5月末までに決着できなかった場合に『首相は辞任する必要はない』と答えた人は49%。道筋をつけるまで政権を投げ出さないでほしい。それが国民の願いだろう」(見識なき…)となっています。
 朝日新聞のこの論調は、民主党政権を結果として擁護する以外の何物でもないと考えるのは間違いでしょうか。やはり「朝日新聞は民主党の御用新聞」との声が聞こえてきます。